15 自殺少女は歓迎される
歓迎会
「恵ちゃんいらっしゃーい!」
夕飯が始まる前にクラッカーまで用意して母さんと和泉がパーティー風に彼女を歓迎していた。後でクラッカーのゴミを片付けるのは僕の仕事だが、それを言うほど無粋ではない。
「いやーしっかし、恵ちゃんが家で暮らしてくれるなんて嬉しいわー」
「そ、そうですか?」
「ええ、念願の息子のお嫁さんですもの」
「ふぇ!?お、お嫁さんって・・・」
「母さん、あんまりからかわない。僕は嬉しいけど恵は困るでしょ」
そう言うと母さんは微笑んで言った。
「のぞみ。わかってるのに惚けるのはお母さん感心しないわね」
「何のことやら」
「まあ、そのうちわかるでしょう。ちなみにのぞみの部屋はわりと防音効いてるからそれなりの音量までなら大丈夫よ」
「母さん。完全にセクハラだからそれ」
いらない知識を貰ってしまった。しかもわざわざ僕の部屋でというあたりがなんともいやらしい。彼女はなんとなく察したのは顔を赤くしているし。普通わからないものじゃないのかな?いや、今の若いこは情報を得やすい環境にいるから仕方ないのかもしれない。
「ねえねぇ、恵お姉ちゃん」
「なあに?」
「恵お姉ちゃんはお兄ちゃんの彼女なの?」
「今は違うよ」
「ぶー、恵お姉ちゃんに聞いたのになんでお兄ちゃんが答えるの?」
「それはね。その質問に顔を赤くする恵お姉ちゃんのためだよ」
どうやっても話題が恋話にいく。まあ、仕方ないのかもしれないけど、どうしてもこの二人は別の意味で家族として迎えたいようだ。僕としてはそれでもいいけど、彼女を無視して事を運ぶのは良くないだろう。
「ま、とりあえず食べようか。恵も好きなだけ食べてよ。デザートもあるしね」
「デザートですか?」
「好きだって言ってたでしょ。甘いもの」
「はい。太りやすいので甘いものは控えてるのですが・・・たまに食べちゃって」
「恵はスタイルいいと思うけど、ならそうだね。カロリー計算して出来るだけカロリー控えめで作ってみるよ」
そう言うと嬉しそうに頬を緩める彼女。
「ありがとうございます。のぞみくん」
「このくらいなんでもないよ。それよりも食べたいもののリクエストとかあったらいつでも言ってよ」
「いいのですか?」
「うん。もちろん」
そんな風にして初日の食事は始まった。時折母さんと和泉からの攻撃に顔を赤くすること何回か。それでも平穏に過ぎたことはよかった。こうして彼女が楽しそうにしている姿を見ると僕も元気になれる。いつもの演技ではなくそれなりに自分の素の部分を出せて楽だ。




