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10 自殺少女はお昼を満喫する

お昼タイム


「いやー、しかし大変だったねーん」


そう笑う片倉に彼女は少しだけふてくされたように言った。


「奈緒が煽ったせいじゃないですか。まったく・・・」

「ええー?でも恵も嬉しかったでしょ?はっしーと公式カップルになれて」

「そ、それはそうですが・・・」

「はっしーも満足っしょ?」


弁当を開けながら僕は答える。


「そうかもね。まあ少しだけやり過ぎのような気もするけど」

「またまた、はっしーったら照れちゃってー」

「ははは、ところで片倉よ。その待機の構えはなんだ?」

「何ってはっしーの弁当からの強奪待機だけど?」


当たり前のようにそう答える片倉に僕はやれやれとこれみよがしに首を降って言った。


「古来より人間は何かを欲すれば自然とそれには相応の代価を頂くとこはご存知かな?」

「優しいはっしーならタダくれるよね?あ、恵の弁当も頂戴ね」

「いいですけど・・・」

「お、恵ったら優しいねー。どれどれ・・・」


そうして彼女の弁当を見てから片倉は僕の弁当を見て首を傾げた。


「あれれ?もしかして、これって両方ともはっしーの弁当?」

「端的に言えば、恵に作ってあげたくなってね」

「恵、料理できないの?意外だねー」

「で、できなくはないはずです!作ったことはあまりありませんが・・・」

「小中の家庭科どうしてたの?」


その言葉に彼女が少しだけギクリとしたのを見て僕は変わりに答えた。


「恵はもともとあまり身体強くないんだ。昔は学校も体調が原因で休みがちだったそうだよ」

「へー、恵も大変なんだねー」

「そういう片倉は料理できるのか?」

「無理ゲーです!」


そうして話題を回避したことに彼女からアイコンタクトでありがとうという言葉が伝わってきたので、頷いて答えたのだった。


「そういえば、放課後は予定ある?良かったら遊びに行かない?」

「あ、えっと・・・私は構いませんが」


そこで僕を見てくる彼女。僕はそれに頷いて答えた。


「いいんじゃない。嫌になったら直ぐに帰ってくればいいしね」

「ん?あれ?はっしー来ないの?」

「行きたいけど、夕飯の買い物あるからね」

「じゃあ、買い出しの時間の少しだけ付き合ってよ。恵もはっしーと一緒にいたいみたいだしねー」


彼女を気遣ったような言葉に僕はしばらく考えてから彼女の捨てられた子犬のような目を見て頷くことにした。


「わかった。少しだけなら」

「やったー!よかったね、恵」

「は、はい!ありがとうございます!」


そんなことで感謝する彼女の純粋さに思わず微笑んでしまうが、しかしこれは過保護すぎるかもしれないと少しだけ後悔することになるのだった。まあ、彼女の笑顔を見れば間違いではないように感じるけど。きっと。そうなのだろう。







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