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ロリコンだと濡れ衣(?)を着せられ、勇者パーティーを追放された魔法使いは名誉挽回するために旅をする

作者: 華洛


「くそっ!」


 とある酒場で1人の男は荒れていた。

 彼の名前は、アルファ・アストラトス。

 数日前まで魔王を斃すために旅ををする勇者パーティーに所属していたメンバーである。


「兄ちゃん。荒れてるな」


 酒場のマスターは、アルファに話しかけてきた。

 濃度の高いアルコールを一気飲み、グラスを机に叩きつけるように置く。


「――パーティーから追放された」


「あー、それってこの街に泊まっている勇者サマのパーティーかい?」


「そうだ。……だが、追放された事を恨んでいる訳じゃない。パーティーは命を賭けられる仲間の集まりだ。生存率を上げるために、気に食わなければ追放される事もあるだろうさ!」


「確かに無理に居座って、ギクシャクして肝心なところで連携が上手くいかずに死んだんじゃあ報われねぇよな」


「ああ。……だから、勇者パーティーから追放された事は良い。だけどな! 追放された理由が気に食わねぇんだっ!!」


「理由?」


「そうだ。アイツら、俺が「ロリコンと一緒だと、パーティーの名誉が傷つくから出て行け」と、事実無根な事を言って追放したんだ!」


 アルファは、空中に水を出現させ、それを凍らせるとグラスに入れ、ボトルに入っている酒を注ぎ、再び一気飲みをした。


「誰がロリコンだ! 俺はただ……ただ、幼女や童女と一緒に戯れていただけなのにっ」


「――兄さん。それが原因なんじゃないのか」


「違うっ。俺は、幼女や童女を性的に見た事なんて一度たりとも無いっ。ただ、ただ、あの愛おしい笑顔を、俺は、護りたかっただけなんだ!」


 アルファはだからこそ勇者パーティーに志願したのだ。

 魔王軍に怯える童女や幼女や少女の笑顔を平穏を護るために、彼は勇者パーティーへ入り、ここまで長旅をしてきた。

 それを可能とするだけの力がアルファにはあった。

 数多くの魔法・超能力・武術を操るアルファは、勇者するも越える戦闘能力を有していたからだ。


 その力を魔王軍にぶつけてたのだが、魔族の中でもまだ幼い子たちに関しては、勇者達に見付からないように、傷を癒し、食料を渡して逃がした。

 その為、魔族の中でも、アルファは「ヤツはロリコンだから、敵対してもロリは助かる」と言う噂が流れ、アルファが対峙するのは、外見がロリの、所謂、ロリババァが多くなった。

 が、アルファが愛おしく感じるのは、あくまで童女であり、幼女であり、少女である。

 ロリババァは範囲外であり、多少は手加減しながらも問答無用で撃退していった。


「――まぁ、なんだ。特殊性癖でも受け入れてくれるパーティーは存在するさ。気を落とすな」


「特殊性癖じゃねぇぇぇ。普通の、一般的な、ことだ!」


 アルファが護る有効年齢範囲は15歳までである。

 16歳以上は、庇護の対象外。

 勇者パーティーの賢者と武術家は、残念(?)なことに20歳と16歳であり、追放される間際に「ババア共が少しは綺麗なココロを取り戻しやがれ」と怒鳴り散らし、大喧嘩の末に追放に至ったのである。

 この男の自業自得でもあった。


「ああっ、くそったれ。俺は、俺はロリコンじゃねぇぇ。マスター、棚にある酒を全部くれ!! 死ぬほど飲んでやるっ」


「まぁ、コッチも商売なんでね。言われたら提供しますが、大丈夫ですかい?」


「金なら勇者パーティーを抜けるときに、退職金代わりにせしめてきた! 金なら問題ないっ」




※※※※※※




「ぅ。あっ、っぅぅ。頭が痛い。流石に、飲み過ぎた、か。……で、ここは何処だ?」


 アルファは周りを見回した。

 壁は岩であり、駐屯所のように石で出来た所とは違う。

 鉄格子と反対側にはロウソクが1本あり、牢屋の中にはそれだけしかない。

 広さは大人が5人入れば満杯になるぐらいの広さである。


(……まもとな場所じゃなさそうだ。っ、あたまいたい、吐きそうだ)


「あの、大丈夫ですか?」


 壁の向こう側から幼い女の子の声がしてきた。


「あ、ああ大丈夫だ。ちょっと酒を飲み過ぎただけだからな。……ここが何処か分かるか?」


「分からないです。街の外れで薬草を摘んでいたら、突然、誰かに襲われて――。気がつくとここにいました」


(人攫いか。俺の近くで少女を拐かすとは良い度胸だ。物理的に地獄へ堕としてやろうか。とりあえず――)


 アルファは壁に手を当てる。

 すると壁は揺れて人1人が余裕で通れる程度の穴が空く。


「よし。おい、大丈夫か」


「は、はい!」


 空けた穴を通り、隣の牢屋へ行き、少女に話しかけた。

 年齢は12歳ほど。肩につくぐらい伸びた茶色の髪。顔は可愛らしい。

 「アナライズ」で状態の確認を行い、念のために肉眼でも少女の状態を確認する。

 アルファは完全回復魔法を用意していたが、どうやら使用する必要性はなさそうだ。


「俺の名前は、アルファ・アストラトス。魔法使いだ。キミの名前は」


「ミーア。ミーア・ステランです」


「ミーアか。良い名前だ。とりあえず、この場所から出るぞ」


「……無理です。この首輪がある限り、私は、私達はどこにもいけません」


 よく見るとミーアの首には、奴隷用の首輪が施されていた。

 否、ミーアだけじゃない。アルファは自分の首にも同じように首輪が施されている事に気がつく。

 アルファは簡単な魔法を空中に描く。同時に首輪が首を絞めてくる。

 しかし気にすること無く魔法陣を描き発動させ、互いの首輪はカチッと音がすると同時に外れた。


「大丈夫、なんですか?」


「こほっ。ああ。キミから無粋な物を外すための労力だ。なんのことは無い」


 少し首が苦しかったが、アルファはミーアに心配掛けないように笑顔で答える。

 首輪にかけられている魔法は粗悪も良いところのものであり、アルファからすれば寝起きでも解除できる簡単なものであった。

 アルファは風魔術の初歩である「エアカッター」で、牢の鉄格子を斬る。


「よし。逃げるぞ」


「あ、あの……。アルファ様、お願いがあります」


「なんだ?」


「私よりも先に囚われていて、連れて行かれた幼なじみの子がいるんですっ。どうか。どうか助けて下さい。お礼なら、私にできる事ならなんでもしますっ」


 ミーアは頭を下げて、アルファに懇願した。

 この世界では魔法使いの数は決して多くない。

 下位である魔術師は多くいるが、魔法使いとなると国には10名もいない。

 因みに僧侶の上級職が賢者であり、賢者は多少は魔法も使えるが、だいたいは魔術であり、魔法使いほど専門的な事はできなかった。

 故に魔法使いに何かを頼むときは、高額な報酬を用意しなければならない事が多い。


「頭を上げてくれ」


「……はい」


「涙はキミには似合わない。幼なじみは俺が責任を持って助けよう」


「本当ですか!」


「ああ。約束しよう。必ず助けると!」




※※※※※※




 ミーアの幼なじみであるナサ・ハーゲンは、盗賊たちに囲まれていた。

 目の前に居る盗賊頭に、幼なじみの少女には手を出さないとという約束の下に、ナサは抵抗せずに、言われるまま行動をしている。

 相手は盗賊である。約束をしても守られないかも知れないが、ナサは信じるしか無かった。


「ほら、どうした嬢ちゃん。全裸になって、俺達に奉仕してくれるんだろ。幼なじみを護るためによ!」


「……っ」


 下着はこの世界では高級品で、平民では中々手が出せる値段では無かった。

 その為、ナサはスカートと上着を脱げば、あっという間に全裸となってしまう。

 ここで愚図ればミーアにも手が伸びるかも知れないと考え、ナサはまず上着を脱ぐ。

 少しでも見られないように、手腕で胸を隠す。

 それが今のナサに出来る盗賊たちに対する唯一の抵抗だった。喩えその行動が、盗賊達を悦ばせる結果になっていたとしてもである。


「六道が1つ――地獄道開放ぉ。少女に手を出した己が罪を後悔して死んでいけぇぇぇ」


 地面に巨大な魔法陣が出現し、辺りを揺らしながら禍々しい門が顕れた。

 禁式魔法・六道。

 人を強制的に殺して輪廻転生させる魔法である。

 その消費魔力と、術式理論から禁術とされ、使用できる魔法使いは、世界で4人も居ないと言われている。

 六道の中でも地獄道は、生前に罪悪を犯した者が墜とされる世界である。

 地獄道は更に八熱地獄と八寒地獄に別れて、罪人は対応する場所で責め苦を受ける羽目になる。


――ひぃぃぃ――なんだなんだよ――門に吸い込まれるぅ――いやだぁあそこにはあそこには行きたくねぇ――頼む助けてくれぇ――地獄はイヤだぁぁ――


 喚く盗賊達。

 50名は居た盗賊達は、次々と門から出る真っ黒な手によって掴まれ、門へと引きずられて消えていく。

 小太りの無精髭を生やした盗賊頭は、サーベルを抜き地獄道の門から伸びてくる手を切り落として、引き摺られないように必死で頑張っていた。


(ちっ、大人しく亡者の手に引き摺られて地獄道に堕ちればいいのによっ。これ以上、門を出現させておくと地獄の瘴気で少女達に悪影響が出るか)


 アルファは舌打ちをして地獄の門を閉じ召還を行った。

 盗賊達は5名と盗賊頭が残り、ナサは恐怖から地面に尻餅をついている。


「な、なんなんだ。お前はぁぁぁ」


「……アルファ・アストラトス。普通の魔法使いだ」


「禁式魔法を使えるヤツが普通の魔法使いな訳ないだろうがっ。あのクソ野郎。なにが腕の良い魔術師だ! とんでもねぇバケモノじゃねぇかよ!」


「……」


「しかもアルファ・アストラトスだと! よりにもよってあのロリコン魔法使いかよっ!!」


「ちょっとまてこら。ロリコン魔法使い? どういうことだ」


「ゆ、有名なんだよ。幼女や童女や少女を攫った相手を鏖にして、商品の女を奪って、助けた代償として玩ぶって、界隈じゃ知らねぇヤツはいねえよ!!」


 アルファは幼女や童女や少女を攫った相手を鏖にする事は頻繁に行っている。

 だが、その助けた娘に手を出したことは1回もない。


(勇者パーティーの件といい、俺に対して汚名(ロリコン)を着せようとしているヤツがいる?)


 この時、アルファの中で汚名を広げるヤツを殺すことが確定事項となった。

 とりあえずその事は置いておき、アルファとミーアとナサを街へ帰すこと為に、転移の魔法陣を自分と足下と、ミーアとナサ、それぞれの足下に出現させ、一瞬でこの場から消え去る。

 残ったのは5人ほどの盗賊と盗賊頭。

 一先ず助かったと安堵していた瞬間。

 洞窟内が激しく揺れ、落石音が大きく鳴り響いている。

 ここから逃げ出すにも、この空間から出て行く道は真っ先に落石で潰れて侵攻不可能となっていた。

 激しく揺れ、落石で潰される自分たちの運命を感じ取った盗賊頭は叫ぶ。


「くそったれのロリコン野郎ぉぉぉぉぉ」




※※※※※※




 ドリストファ街の中心部にある噴水が設置されている所に、アルファ達は転移していた。

 時間は昼過ぎらしく、人通りはそれなりにある。

 転移魔法を使用したことで、周りの目はアルファ達に集中している。


「アルファ様。ナサと私を助けてくれて、ありがとうございました!」


「あ、ありがとう、ございます」


 ナサは多少怯えていた。

 地獄の門に割りと高くにいた事で、それを使用したアルファに若干恐怖を覚えるのは仕方が無いことだ。


「お、お礼ですけど、わ、私を好きにして下さい!!」


「ミーアちゃん、だけには……。わ、わたしも、覚悟してます。初めてはも痛いって聞いたことが、あります。だから、先に私をどうぞっ」


 涙声で言うナサ。

 因みにここは真っ昼間の街中である。

 それなりの声で言うミーアとナサの周りに響くには十二分だ。


――真っ昼間から少女と幼女に――憲兵を呼べ――あれって確か勇者パーティーのロリコン魔法使いじゃね――確か勇者様の威を借りてロリに手を出していたっていう――ついには勇者パーティーを首になったらしいぜ――


 周りの無責任な言葉に苛つきながらもアルファは、2人の頭を優しく撫でた。


「あー、気にするな。お礼というなら、お互いを大切にして倖せになってくれ。それだけで良い」


 アルファは思う。

 この2人には罪はない。

 魔法使いに頼むのは高額だ。お金を持って無く、「なんでもする」というのは子供らしい言い分であり、今までも子供から金銭の報酬を貰ったことは一度として無かった。

 ただ、その結果が子供達は身体を対価に払っているという噂の一因ともなっている。

 このままだと面倒臭い連中――元パーティーメンバーである勇者達が来る気配を感じたアルファは、再び転移魔法陣を自分の足下に出現させ、転移を行った。


 アルファが見る景色は、街の中央にある噴水から、酔いつぶれるまで飲んだ酒場へと変わる。

 夜に向けて仕込みをしていたであろうマスターは、アルファの顔を見た瞬間、手に持っていた包丁を床へと落とした。


「よう、マスター。アンタのお陰で子供を2人助けることが出来た。だから、お礼を言いに来た」


「……ッ。俺を、殺すのか」


「お礼だって言っただろ。殺しはしないさ。あんたが俺を盗賊に売り払わなかったら、今頃、子供2人はヤツ等に好き勝手されてただろうからな」


「――」


「だが。次は無い。もし同じような真似を他のヤツにしてみろ。盗賊と同じように生きたまま地獄へ墜とす」


「分かっ、た。二度としない」


「言質はとったからな」


 それだけ言うとアルファは店の外へと出た。

 余談だが。

 これから半年後のこと。

 とある酒場のマスターと盗賊団が、消え去るという事件が発生した。調査を行ったが原因は不明。色々な憶測が飛び交ったが、結局は迷宮入りの事件となった。

 その事件が起きた街から遠いところにある宿屋で、噂話として聞いたアルファは呟いた。


「だから言質を取ったって言ったのによ。ま、一度知った蜜の味は忘れられなかったか……」




※※※※※※




 最果ての場所。

 そこには魔王が住まう魔王城がある。

 瘴気が漂う魔王城の最深部にある魔王の間。

 間にある玉座には魔族特有の黒髪に、金色の眼を持つ少女が座ってた。


「で、首尾はどうじゃ」


「は。アイリーン様。ご命令通り、アルファ・アストラトスにロリコンと言う汚名を着せる事に成功しました」


「そうかそうか! ざまぁ見ろなのじゃ。妾に対してロリババアとか、老人ホームに行けとか、肉体だけ成長しないのも可哀想だなとか、痴呆症かとか、いいよって!! 思い出しだけで腹が立つぞ!」


 魔力が怒気を含み嵐のように荒れる。

 現魔王アイリーン・ゾディアック。

 外見こそ幼いが、齢2万を越える魔族の中でも年寄りの方へと入る。

 人界最強と名高い魔法使いであるアルファに、魔王と言うことを隠し挑むも、為す術も無く敗北。

 その時にさっき述べられた事を言われ、復讐しようと試みた結果が、アルファにロリコンという汚名を着せることであった。


「にゅふふふ。これでヤツは勇者パーティーから追放! 妾が負ける要素が無くなったのじゃ」


 魔王城に笑い声が響く。

 この時、アイリーンは知らない。

 アルファが後に、名誉挽回する為に、追放した勇者パーティーに仕返しする為に、魔王の首を取る事を決めたことを。



良ければ、連載中の『私のところのメイドが、レベル9999ステータスALL9,999,999,999,999だった件(https://ncode.syosetu.com/n2618ex/)』も宜しくお願いします。

隔日で更新中です。

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