ピアノのレッスン
内容薄いです。すいません。
「さて、こちらの子が新しく入ってきた子かしら?」
十歳の、ス、から始まる名前だったような気がする令嬢が口を開いた。
今はピアノレッスンの教室でバンカさんを待っている。
この人は、エメラルド色で、ピンクのリボンと、白いレースがいっぱい付いた、ドレスを着ていて、音属性特有の、金髪と、茶色い目を持っている。音属性ではなくても、基本属性以外は、金髪の属性も、茶色い目の属性もあるけど、金髪で茶色い目なのは、音属性だけらしい。ちなみにだけど、バンカさんが茶髪なのは、音属性の金髪は年と共に濃くなっていくだけで、ちゃんと昔は金髪だったらしい。
、、、、、あれ?私が答えなきゃいけないの?
「えっと、はい。」
「へえ、そうなの。学園目指してる割には、初級精霊も憑いてないのね。髪の毛も、可愛らしいピンクだなんて、所詮は捨て子ね。」
可愛らしいピンクって、前も言われたような、、、、、。にしても、良く情報出回ってるな。ちなみに、こっちを言ったのは、十歳の、ティ、から始まる名前だったような気がする人。
「マティー、口を慎みなさい。この子は、精霊の悪戯に遭って、上級精霊が憑いているんだよ。」
あ、マティーね。
いつの間にかドアの前にいたバンカさんが冷淡に言い払った。
「え!嘘、、、、。」
「だったら弾いてみれば?上級精霊が憑くぐらいの曲、弾けるんでしょ?」
十二歳のエメラルドさんが目を吊り上げる。
「うう。」
無理なんだよ。指が、弱いんですよ。
「ストゥリも大人げないこと言わないで、始めるよ。」
どうも険悪な空気で、レッスンが始まった。
「じゃあ、みんな恒例だけど、一人ずつ、一曲弾いておくれ。」
バンカさんが言った。さっきから、バンカさんが仕切ってるから、もしかしたら、バンカさんが、一番いい先生なのかも知れない。
「まず、ストゥリ、初めて。」
ストゥリさんが、立ち上がって、ピアノに向かった。弾き始めたのは、軽快な曲だった。あれ?貴族っていうのは、生まれたころから、音属性だと分かっていたから、こどもは、小さい頃から、良い教育が受けられる。なのに、私が十三歳の頃と同じぐらいのレベルだ。小さい頃からやって、この位ってことは、、、、『良い先生』っていうのは、そこまで良くないかも知れないと言うことだ。ピアノは、ほとんど、先生で決まる。ストゥリさんのレベルは、現代では、がんばれば、四年ぐらいで出来るようになるレベルだけど、八、九年ぐらいかかった、ということは、音属性が少ないらしいし、あんまり、ピアノの技術が進んでいないのかもしれない。そんなことを考えていると、次の子、マティーだったけ?マティーさんの番になった。
「んん?」
あれ?この子は上手い。ストゥリさんと、互角ぐらいだ。何でだろう?あとでバンカさんに聞いてみよう。
「次はあなたの番よ。期待を裏切らないで頂戴ね。」
ストゥリさんが言ってきた。
「ストゥリ」
バンカさんが宥めるように言う。多分、もう手遅れだし、効果ないですよ。
にしても、何弾こうかな?ピアノの前まで歩み寄って、椅子に座り、考える。
「気分だし、アラベスク、、、、テクニックがだめだな。ブルグミュラーにしよう。」
一人で小さく呟く。
「ふう。」
あー、疲れた。聞くより、弾く方が、十倍難易度高いから、めっちゃ難しかったけど、ちょっと、地味に見えたかも知れない。ちょっと途中失敗したは。手が小さいから、ベースを残しつつ、音を変えなきゃいけないんだけど、考えてた弾き方が、ちょっと、変な音だった。それだけで、他は、予想以上に上手くいったけど。
「はい、ユイ、お疲れ様。」
バンカさんが、そう言って、手招きした。
「あ、あり得ないわ。いくら、精霊のご加護があっても、努力が無ければ、こんなに上手くなれないもの!」
ストゥリさんが叫んだ。
「努力すれば、八歳でも弾けるようになりますわ!精霊のご加護があれば、弾けるはずですわ!愚かなことを言うんじゃありません!」
先生の内の一人がつられて叫んだ。まあそうだけど。
「じゃあ、私が、ユイ、ナロレール伯爵夫人が、ストゥリ、あと、代理の、ナロレール伯爵令嬢が、マティーこれで決定です。」
バンカさんが言った。
「なぜですの!ユイ様は、確かに歳のわりにはお上手でしたけど、ストゥリさんや、マティーさんには、敵いませんわよ!」
「その通りでございます!」
おそらく親子な二人が、ギャンギャン騒ぎ始めた。
「これは、私の決定です!逆らうことは許しません!」
バンカさんが、貫禄のある声で言い放った。二人が黙る。
「それじゃあ、レッスンを始めましょう。私達は、領主権限で、これからは、領主部屋にあるピアノを使うから、もう来月まで、ここには来ない。良いですか?」
うわー、バンカさんも、一応貴族なのか。
「ユイ、行くよ。」
「あ、はい!」
部屋から出たら、バンカさんの顔が、優しくなって、
「驚いたかい?」
と言った。まあね、驚きましたけど、昔は、領主夫人だったりしたわけでしょ?
「驚きましたけど、バンカさんま、貴族なんだから、当然ですよね。」
「ねえ、ユイ、敬語とか、食事の仕方とか、そして、貴族の振る舞い方を知ってるだなんて、やっぱり、中級貴族の生まれじゃないかい?」
『やっぱり、』というのは、前に、ご飯食べてた時に、他の子よりはマナーがいいらしく、『中級貴族並みですね。』と、カミラさんと、バンカさんが話していた時の事だ。
「分かりません。でも、知識だけは残ってるんですよ。」
いつも通り、答える。
「そうかい、、、、、、着いたよ。」
そこは、カミラさんの部屋の隣だった。
「わあ。」
中には、装飾が施されたピアノがあった。
「なんですか?これ。」
「実はね、カミラと私は、元々、中級貴族でも、準伯爵ぐらいの爵位だったんだよ。ただ、音属性のカミラのために、頑張って、安いピアノを買って、練習させたんだ。そしたら、王都の外れにある学園に入学できてね。昔は王都に学園がなかったから、学園まで、遠かったけど、頑張って通わせたんだ。カミラは優秀で、凄くいい成績を収めた。その優秀さのおかげで、この地域で一番の中級貴族の養子になれたんだよ。その時の記念品が、これさ。」
優秀だと、もっと、位の高い家に養子になって、その家のために働き、頑張れば、後継ぎになれる、そんな制度がある。凄い人だと、学園でずっと学年主席だった平民が、下級貴族になり、養子の制度で、上級貴族までなった、という話がある。バンカさんの一家はこの辺の地域一の中級貴族だけあって、下手な上級貴族の倍ほどの蓄えがあるらしい。この屋敷も、上級貴族の中でも中くらいの人たちが持っているのと同じぐらい高価なんだとか。メイドさんが話しているのを聞いてしまった。みんな、カミラさんの恋人の席を狙ってるんだとか。人気者だね、、、、カミラさん。
「じゃあ、レッスンを始めようか。」
バンカさんが言った。楽しみだ。どんなレッスンが始まるんだろう。
上級貴族が、公爵、侯爵で、中級貴族が、伯爵、準伯爵で、下級貴族が、子爵、男爵です。