勉強教室
あれからまあ色々あったが、今はとりあえず一年後の学園の試験に向けて、領地内の貴族からメイドの子供までを受け入れている、城内の子供用勉強教室に通うことになった。バンカさんが拾ってきた子達も、ここである程度勉強して、十六歳位になるとバンカさん伝いの職場を紹介してもらって出ていくんだとか。ちなみに学園に入学する子も一人いたらしい。
学園というのは、ここから少し離れた東西南北の四大学園の内の、東ノ学園で、四大学園の中でも王都の隣ということで、基本の三大属性の火、水、地、風と、最近新しく取り入れられた音属性がある。私は火属性もあるから、もしそっちが良いんだったら、火属性の学校に行ってもいいと言われたけど、音魔法を使いたいので音にすることになった。音の方が平和そうじゃない?なんか火とか怖いし。
「ユイ、早くいかなきゃ遅れるよ。」
子供用勉強教室では、普通の学園のような制度がある。半分ぐらいの子は、学園に入るからだそうだ。なので、遅刻は出来ない。基本的に座学と、実技の両面で見てもらえるらしい。領主一家が音属性なため、基本の属性でもないのに、音属性の実技も教えてくれるらしい。
教室は、私達が住んでいる本殿と繋がっている、執事さんやメイドさんが暮らしている本殿の半分程の大きさの建物との間にあって、歩いていける距離だった。でも廊下が多すぎていつになったら覚えられるか、って感じだけどね。
歩き続けること十五分。
「着いたよ。」
なんの変哲もないドアを開けて入ってみると、私位の子から十歳位の子まで、綺麗なドレスを着た子から汚れた服を着た子までが、集まっていた。私は、動きづらいので普段はひらひらのワンピースを着ているけど、教室があるときや外出するときはドレスを着てくれとメイドさん(バンカさんが一人じゃ心配だから、とつけてくれた)に懇願されているから、(毎日着て欲しがってたけど、重いし苦しくて拒否し続けたら諦めた。)今日は、ピンクのレースやリボンが沢山着いた派手すぎるドレスを着ている。まあ、教室は休日以外毎日あるんだけどね。いやあ、前の私みたいな顔じゃなくて良かった。ユイは結構かわいいからなあ。あ、自分でした。いや、でも、自分じゃなくて、あれじゃん、本当の私の体じゃないじゃん?
「よろしくね。」
自惚れしてると、最年長らしきお嬢様が手を差し伸べてきた。
綺麗なカーブがかかった金髪に、エメラルドグリーンの、背中についた大きなリボンの他にも何個付ければ気が済むんだ、って位リボンが着いた派手なドレスを着ている。でも、その豪華で美しい顔立ちには以外に合っている。
「よろしくお願いします。」
圧倒的な女王様オーラに圧倒されていると、
「じゃあ授業を始めるから、皆席について。」
と、バンカさんが一番前の机の前に立った。
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
え?
「ほら、ユイも早くしな。」
「バンカさん、、、先生なんですか!?」
「算術の担当さ。他にも音属性の担当をやってる。」
え?算術?算数かな?と、考えながら席に着くと、足し算、引き算のやり方やってた。居眠りを我慢しながら聞いていると、
「次は、、、ユイ、」
おっと、バンカさんのおかげで、居眠りをせずに済んだ。危ないところだった。
答えろってことだよね。10-7?
「えっと、3ですか?」
そういうと、バンカさんが驚いたような顔をした。え?起こしてくれただけで答えなくてよかったとかじゃないよね?あれ、そうだったかな?
「ユイ、ちょっと、こっちにおいで。」
バンカさんに呼ばれたので廊下に付いていく。
「もともと加算ができないなら入れようと思っていたところがあるんだけど、、、、、、、」
バンカさんによると、特別勉強ができない子、逆に特別勉強ができる子は、個人で教えてもらえるシステムがあるらしい、私は、マイナスとか言ってるので、算数は絶対必要だし、国語が破壊的なので、(私は字の読み書きもできないし、異世界の食べ物や物の名前も全然知らない)地理と、歴史の成績がどうであれ、入れてくれるのは確定だそうだ。だから、明日からはこの部屋に入るようにと言われ、向かいのドアを指さされた。
バンカさんと別れたあと、他の講義は地形だの、文字だの、歴史だの、神様だの、と、意味が分からないまま、半ば寝ながら受けていたら、実技の時間になった。
最初の実技は、精霊を見えるようにするやつだ。本当は昼休みの時間なんだけど、仕方がないから、食べながらうける予定、だったんだけど、先生がお休みだったため、今日はなかった。
「ユイ、次はお楽しみのピアノだよ。」
後ろから声がかかってきた。バンカさんだ。ピアノか、今日は確か、なんか一曲弾かなきゃいけなかったんだよね。
属性の実技は、個人で見てくれるらしい。
音属性でピアノ専攻の人は少ない。ピアノが高いからだ。だからレッスンでは、城内のピアノを使うらしい。ちなみに、私以外のピアノ専攻は二人いる。どちらも上級貴族の令嬢だ。十歳と、十二歳で、十二歳の方は、今年ギリギリの学園入学対象年齢なので、かなりピリピリしているらしい。バンカさんが遠回しに言ってた。
その子はさっきのエメラルドグリーンのドレスを着ていた人だ。ちなみに、学園は、八歳~十二歳まで受けられる。でも、良い成績と、領主の後押しがあれば、六歳で入れる。カミラさんが、後押ししてくれる予定だ。上級精霊が憑いているので、学園には、絶対に入らなければいけないらしい。、、、、、、嫌だな、勉強。せっかくの異世界なのに、、、、。
バンカさんの後ろをついて行って、くねくねの廊下を渡ると、部屋に着いた。
部屋に入って中を見渡すと、バンカさんと私以外、まだ皆来てなかった。
ちなみに、ピアノの担当の先生は三人いて、そのうちの一人は、バンカさんだ。いい先生が上手な生徒に付く。
正直言って、テクニック練習が追いついてないから、意外とヤバい。課題曲なんて出されたら全滅だ。自分で選べるなら、なんとかなるかも知れないけど。だから、いい先生がいないといけない。
ちょうどいいので、指慣らしでもしておこう。今日は、一曲弾かなきゃいけないんだし。黒鍵のエーチュードをめっちゃ速く弾いて、私の指が弱いことを、誰に気づかれないようにしよう、と思いながら、
ピアノに近づくと、バンカさんに止められた。なんでも、今日みたいな一か月の一番最初の日には、誰がピアノが上手いか決めて、先生の配置を変えるんだとか。
つまり、先に練習してたらズルいって事ね。納得して教室の一番前にあるソファーに座った。よくわかんないけど、なぜか一時間とか、一分とは言わないで「一弦」っていう。一弦は、四十五分ぐらいだ。でも、一日とか、一か月はほとんどそのままだ。ただ、こっちの世界では、四百日で一年で、一か月も、平等にそれぞれ四十日ある。つまり、一年、十か月だ。
そんなことを考えていると、扉が開き、一人の、お姫様のような豪華なドレスに身を包んだ人が入ってきた。あのエメラルドグリーンのお嬢様。何とか家の、ほにゃららさんださん、、、、。忘れたんだよね。この人は、十二歳の人で、初対面の時の印象は良かったけど、顔がまさしく「ザ、悪役令嬢」って感じなので、一応要注意リストに入れとく。
「ガタン」
そんな事を考えていると、もう一人の令嬢も来た。こっちは悪役令嬢の取り巻き、または、ツンデレだけど本当は優しい感じか、どっちか分からないので、まあまあ気を付けようと思う。歳は十歳だとバンカさんが言っていたはずだ。その子は黄色いドレスを着ていて、リボンは特に付いてないが、フリルだらけだ。その子(バンカさんが言ってたけど名前忘れた)は、私を見ると、ニコッと笑って、
「ごきげんよう。」
と言った。その子の、後ろの方にまとめた栗色の髪がふわりと揺れた。おお、可愛い。微笑み方がまた、奥ゆかしい感じを醸し出していて、実に好印象だ。
「ほら、ユイも、挨拶しなさい。」
え?挨拶って、、、ご、ご、ご、ごきげんよう?や、やらないぞ!そんなこと、ぜ、絶対で、出来ない!!!!
「えっと、こんにちは。」
バンカさんの呆れたような顔はまだ覚えている。
長くなりそうなので、中途半端なところで切ってしまいました。