領主のお城
あれから一週間。
引っ越しの慌ただしい準備に追われるのか、、、。と、思ったら、バンカさんはすごい質素な人なのか、引っ越しの準備は昨日、二、三時間で終わった。
私の持ち物は、意外にも多かった。服に歯ブラシ、コップやお皿など、なんでこんなに揃ってるのか、と突っ込みたくなるぐらい品揃えが良かった。バンカさんは、しょっちゅう捨て子を拾ってるのかもしれない。
話は逸れたが、今は家の外に持っていくものを揃えたところだ。といっても、ここは別荘のようなところだし、家具などは一切持っていかないらしい。
「こんなところに馬車なんか来るんですか?」
この世界には車はなく、まだ馬車の時代なんだとか。
「風魔法が使えれば、私も自分で飛んでいけるんだけどねえ。まあ、生まれ持った属性を恨むことなんかできないからね。仕方ないから、息子に馬車を送ってもらってるんだよ。」
風魔法とか、いいなあ。やっぱり異世界なんだな、、、。っていうか、息子が馬車送るって、金持ちなのかな?でも、それならこんな山奥に住んでないよね。
まあ、もし、ネット小説とかゲームの設定が本当なら、転生するときに何も教えてくれなかった神様にはちょっとムカつくけど、まあ、もしかしたら夢なのかも知れないという考えもある。
「あの、私の属性魔法って、なんですか?」
確か、あの紙には属性魔法は書いていなかったはずだ。
「え?あんたそんなことも知らないのかい。」
バンカさんはあきれたように言うと、
「あんたねえ、自分の髪の色が何色か見えるかい?」
と、私の薄ピンクの髪を持ち上げた。
「え?えっと、ピンク?」
「そうだよ、ってことは九十九パーセント火だね。」
火?火魔法が使えるの?興奮するんだけど、ちょっと物騒じゃない?火魔法って。
「あ!」
馬車が見えてきた。
「ほら、荷物持って。」
小包を抱えてバンカさんのあとに続く。
「バンカさん!」
「ん?」
「魔法のこと、もっと教えてくれますか?」
「ここで乗り換えです。」
御者さんの声で、バンカさんが話を止めた。
「わあ!」
馬車を降りると、立派な客船が、少し遠くの海にあった。
「海まで少しかかりますが、馬車では通れないので、歩いて行きましょう。」
との事だった。
十分程歩くと、人がわんさかいる港についた。
ちなみに、馬車は御者さんが別ルートで港に運んでるんだって。だったら別ルートで来ればよかったじゃん、って思うかもしれないけど、がたがたで細い道だし、登坂が沢山あるので、私達の配慮と、重さの関係で歩いてくることになったんだとか。
「さあ、行きますよ。」
と、バンカさんをエスコート(?)してるのは、執事だそうだ。どんだけすごいんだよ。しかも、バンカさん、なんか執事の人と御者さんと仲いいんだよね。
というわけで、今は客船に入って、、、って、最上階じゃん!
で、今は夕焼け空を見ながら絶賛リラックス中でーす。
バンカさんは執事さんと話してるし、その間に私はさっきの話を思い出してた。
この世界の魔法のことだ。
この世界の魔法には、いろんな種類がある。それはもう沢山あって、100位あるんだとか。
で、その中心になっているのは、火、水、地、風?たしかこの四つだった。これは四大魔法と言われ、この世界に住む50パーセントはこの四つのなにかの種族だそうだ。
で、ここからが面白いんだけど、なんか今、新しい王様の種族で騒ぎになってるらしい。なんでも、音魔法を得意とする、音属性の種族だったとか。で、バンカさんも音属性らしい。
あと、この世界には精霊はもいるのだとか。精霊は種族ごとに決まっていて、でも魔法を使うときに手伝ってくれる役割もあるんだけど、位を定める役目もあるらしい。どういう事かというと、精霊は、下級精霊から、最上級精霊までのランクがあって、(下級精霊、中級精霊、上級精霊、最上級精霊)そのランク分けが精霊の仕事なわけね。
だから、精霊が中級、とみなしたら、中級になる。ちなみに、「僕、上級です。」とか言っても普通信じないじゃん?だから、級を名乗る時は、例えば上級といっているなら、上級の精霊を呼べばいいんだとか。いつも魔法を手伝ってくるけど、ずっとそばに付きっきりではないんだとか、、、、。可愛くないな。なんか、関係が良くなると、テレパシー使えるらしい。で、精霊の数もピラミッドみたいに、上に行けば行くほど少なくなるんだって。
そんなことを考えてると日が暮れてきた。
すると、場所を移動して、、、食堂のようなところに来た。客船に食堂!意外と文化進んでんじゃん!って思ったわ。
メニューは二択しかなかったけど、お米があるのに驚いた。で、結局お米と魚の定食みたいなやつをたのんだ。魚は秋刀魚みたいで美味しかった。味付けはあんまよく分かんない感じだったけど。で、ごはんは、玄米みたいなやつだったけど、まあまあ美味しかった。でも、固め好きの私でもちょっと固いかな、って思う感じだった。
で、そのあとロマンチックな海の夜景をみて、早めに寝た。なんかめっちゃ充実してるよね、設備。こんなの前世も含めて体験したこと無いわ、、、、、。前世、、。なんだろうな。夢だったらもう覚めてるはずだし。又は、私はもう死んでいるけど、私の思考がずっと夢を見続けている、とか?
まあ、帰るために、この体に入ってた場所で、同じ態勢で、あの石を持ってみたけど、効果なかったし、他にも試行錯誤したけど結局駄目だったし、、、、、。もとには戻れないのかな、、、、。
次の日の朝、私は、バンカさんの
「着いたよ。」
という声で起こされた。
外に出ると、そこには都町が広がっていた。印象的な大きな時計台とか、レンガ作りのおしゃれな住宅街とか。でも、一番驚いたのは、中央にある、普通の家の百倍くらいあるお城。
「行きますか。」
いつの間にか用意されていた馬車に、執事さんが案内する。執事だなんて、バンカさんは結構お金持ちなのかもしれない。
「どこ行くんですか?」
馬車に乗り込み、誰となく話しかける。
「決まってるじゃないですか。」
執事さんが自慢げに言うけど、私には分かんないんですけど。
「どこですか?」
すると執事さんが今度は驚いたような顔をした。
「この子はちょっと世間知らずでね。」
バンカさんが苦笑いする。
いいもーんねーだ!ここ来てまだ一週間しかたってないんだもんねー。
私が膨れると、
「全く、しょうがない子だね。そこだよ、ほら、そこ!馬車に乗ってる時点で気づいてると思ったんだけどね、、、、、。」
バンカさんが呆れたように言う。でも、私はそれ以前に、目の前の建物に驚きを隠せなかった。
「そこ?そこって、、、。」
「ええええええーーーーーー!お、お、お城!?」