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捨て子からの異世界転生  作者: ほっかいろ
2/12

バンカさん

 「ああ、もうヤダ…。」


 そういって木陰に座り込む。


 あれから、何時間歩いたことか。私は、隣に置いてあった紙を持って、取り合えず歩いていた。紙には何かが書いてあったけど、何が何なのか全く分かんなかった。この分じゃ言葉も喋れないかもしれない。


 「はあ。」


 一息ついて立ち上がると、また歩き出す。立ち眩みが酷い。眩暈もする。もしかしたら脱水症状に陥っているかも知れない。本当にちょっと気を抜いたら倒れそうなくらいだ。


 とにかく人に会わないわけには何も始まらないので、水分か食料を探すのと同時に、家も探す。


 ジョロジョロ


 しばらく歩くと、なんかの音がした。

 !

 音のする方に行くと、川が流れてるのが見えた。


 「水!」


 急いで川に近寄って、ふと足を止めた。


 「い、家!」


 川の向こうに、家があったのだ!

 急いで川を渡ろうと辺りを見回すと、粗末な橋があった。

 この家の人が作ったのかもしれない。

 急いで橋を渡り、家まで全力で走った。


 ドンドン!ドンドンドンドンドン!


 思いっきり扉を叩くと、フライパンを持った女の人が現れて……


 「わーーーーーーー!」


 とっさに逃げた。フライパンとかヤバい感じしかしない。ラプンテェルがフライパンで人をぼっこぼこにしていたことを思い出した。

 しかし、体が小さいので当たり前のごとく追いつかれ、後ろからグイっと襟を引っ張られる。


 終わりだ!


 と思ったら、そのまま持ち上げられ、家の中の椅子に座らされた。

 女の人は、肉付きがいい、どこだかの映画のパン屋のおばさんにそっくりだった。


 「あの…。」


 言葉は通じないかもしれないけど、一応話しかけてみる。


 「何だい?」


 通じた!


 「あの、あなたは、誰ですか?」


 いい人であることを願おう。


 「それはこっちの台詞だよ。」

 「えっと、森にいました。」

 「は?」


 まあ、そうなるのも仕方ないと思うよ。でも、それ以上の事は、私にも分からないんだよね。


 「あ!紙があります。」


 隣に置いてあった紙を思い出して、差し出した。

 おばさんはひとしきり目を通し、


 「捨て子か…。」


 と、呟いた。


 「ユイっていうんだね。よろしく。」


 おお、ユイっていうのか、私。っていうか、よろしくって…。大丈夫かな?フライパンで頭カチ割られないかな?


 「よろしくお願いします、えっと…。」


 「あ、私はバンカ。」


 バンカさんはそう言って、台所から、水と、柔らかそうな丸パンを持ってきた。


 「ほら。食べな。」


 その一言で、今喉が渇いてお腹が空いてることを思い出した。


 「いただきます!」


 そういうと一目散に水を飲み干し、パンを平らげた。

 約30秒しか経ってなかっただろう。

 バンカさんは、可哀そうのものでもを見ているような目でで私をみると、


 「晩御飯、用意するからね。」


 と言って席を立った。

                      


 月明かりが照らすベットの上で、今日の事を思い返していた。


 さっきは死にそうで、現状をよく考えることが出来なかったけど、今は、余裕が出来たせいか、頭の中が爆発しそうだ。これは夢なのだろうか。とか、もう死んじゃったのだろうか、とか、魔法陣の事とか…。


 とりあえず、あの後、紙には私の個人情報が書かれていることが分かった。

 年はもうすぐ六歳の五歳で、性別は女。名前はユイ。と、このぐらいしか書いてなかった。

 私は言葉は通じるものの、読み書きが出来なかった。



 あと、気になるのはこの世界の事だ。

 晩御飯が滅茶苦茶早く出て来たので、冷蔵庫も無いし、試しに、魔法とか使えるの?と聞いたところ、呆れた顔をされたから、やっぱりないのか、と思ったら、あるに決まってるじゃないか、といわれた。めっちゃ興奮したわ。因みに夕ご飯は時間経過がしない魔法袋から出したものらしい。私みたいな捨て子はよくいるので、念のために常備してるらしい。「死にそうな顔してたからね。」と言われた。


 バンカさんは、一体何者なんだろう?なんで初対面の子供を助けてくれるんだろう?そんな事を考えているうちに、何故私は異世界にいるのか、なんて考え事も終わってないのに、気づけば、深い眠りについていた。







                      


 目が覚めると、一瞬、自分がどこにいるのか分からなかったけど、すぐに思い出した。私はのっそり起きて、ベットを整えて、寝ぐせがついてないか、髪を触ってみた。驚くことに髪は、サラッサラだった。そして、髪の色は、なんとピンク!といっても、淡いピンクで、例えるなら、紅水晶みたいな色だった。異世界って感じ。下に降りると、バンカさんが、朝ご飯を作っていた。


 「おはようございます。」


 声をかけると、振り返って、


 「よく寝てたね~、もうお昼だよ」


 って言われた。あれ?っていうことはお昼ごはんかな…?こんなに寝たの久しぶりだな。この体、子供だし、昨日は疲れてたからな。まあ、とりあえず、椅子に座っていたら、ある事に気づいた。


 恥ずかしいことに、私の服は、とんでもなくぼろぼろで、薄くて、なんと、透けていた…。自分でもわかるほど顔が真っ赤になった。


 「あの、バンカさん、服とか、ありますか?」


 バンカさんは、チラッと服を見て、


 「ああ、ごめんね。言い忘れてたけど、そこに用意しといたよ。」


 といってにっこり笑ってくれた。

 返事をする間もなく、部屋のなかに飛び込んで、


 「バンっ!」


 盛大に椅子に足をぶつけた。涙がジワリと出てくる。痛いけど、着替えがまだ先なくらいの痛みだった。


 上をみると、民族衣装みたいな服が用意されてあった。

 それは、凄いカラフルで、正直引いたけど、まあ、着てみよう!着てみると、それは意外とサラサラしていて動きやすかった。


 着替えて下に降りると、朝、いや昼ごはんが用意してあった。

 今日のメニューは、スープとトースト。

 なんか失礼かもしれないけど、凄い質素だった。


 「意外と似合うね。さあ、座って。ささっと食べるよ。」


 バンカさんはさっさと食べ始めていた。私もパンをちぎって口に運ぶ。


 「あの、この国には、お米はないんですか?」


 日本人として、お米は絶対だ。

 なのに、昨日も今日もパンだったから、少し不安になった。


 「あるよ。もうちょっと東の方に行ったらね。」


 東かあ。ここはどこなんだろ。


 「あの…」


 そのあと、地理の事について色々質問した。ここは、比較的南の方らしい。どうりで暑いわけだ。


 「じゃあ、お米は食べられないんですね。」


 ため息交じりにぼそりと呟く。


 「そんなこともないよ。」


 「え!?」


 「丁度よかった。ここは比較的南の方だって言っただろ?だから、この小屋は冬越しの別荘なんだよ。もうすぐ夏だし、そろそろ帰ろうかと思ってたところだ。この暑さじゃやってられないからね。来週辺りにでも、東北の家にいこうか。」


 「来週!?」

 

 

 


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