転生
「不採用通知はもう、うんざりだ~!!」
山奥の崖っぷちで、映画みたいに叫んだ。
大学まで順調だったのに、職探しで終わった(人生的に)。バイトのお金も消えて行き、気づけば、実家までの交通費しか残ってなかった。でも、連絡もなかなか取れない山奥に住んでる両親から仕送りなんてあるわけないし…。
終わった。うう、頑張って勉強しまくって良い大学卒業したのにぃ!なんでえぇぇ!!!
あ~、もう行かないと電車乗れない。もう、実家に向かわなければいけない。アパートも追い出された挙句、大学でもぼっちだった私には、お金を貯めるまで少しだけでも寝泊りさせてもらえるような友達もいなくて、寝泊りする場所が無い。だから、実家に帰らなければいけないのだ。もっと早く帰ってお金を貸してもらうなりなんなりすれば良かったんだけど、実は私は実家が大っ嫌いだ。お金借りたいなんて言ったら、罵倒されて結局殆ど貰えないのが目に見えているからだ。
「うわっ!」
痛っ。膝が擦りむいているのか、ヒリヒリとした痛みが走る。ちょっとヤバいかな?つまずいたわけでもないのに転ぶって。今日何も食べてないし。こんな山奥来るんじゃなかった。
「って、あれ?何これ!?」
起き上がろうとした時にひざ元に転がっていた石…。
一見、ただの石に見えるその青っぽい石は、ただの石ではなかった。
石の表面に、魔法陣が書いてあるのだった。
すごい。複雑に石に魔法陣が削られている。売る事だってできそうなほど丁寧だ。
石を手に取った。
その瞬間、
あっという間の事で良くわからなかったけど、私は、青い光に包まれた。
水の中にいるような浮遊感がして一瞬意識が飛んだ。
「どこ?ここ」
あの光は何だったの?体を起こすと、目に飛び込んできたのは、小さな手だった。その手は、私の手みたいに動かせた。「みたい」というより、その手は、私の手だった。私の時と同じように魔法陣が描かれている青い石を持っていた。そのことを全て理解した瞬間、どうしようもない吐き気が襲ってきた。
「何なの?」
気持ち悪くなって辺りを見回すと、ここは、深い、森の中だった。
この体が何のか、誰の体なのか、全く分からなかったけど、この体は小さかった。多分、子供だと思う。あと、私はなにかの紙を持っていた。変な言葉が書かれていたから、多分ここは外国なんだと思う。それから、私が今、分かることは、自分がやせていること、そして
「お腹すいた」
私は、とてつもなくお腹が空いていた。
こんなに体がやせているんだから、このごろ、あんまり食べていないんだと思う。そして、こんな体にも関わらず、森にほっぽり出されている。
驚くとかの前に、何かを食べなければ死にそうだった。
とりあえず、食べ物を探そう、そう思って木にもたれかかりながら重い体を起こした。