#1 学園と妹の編入。
死んで転生前に通っていた学園の前で立ち止まっていた。
そして、「よしっ!」 という掛け声と同時に歩き出した。
学園の敷地に入ると、奏多が前世で通っていた15年前とは違い校舎の位置、
そして理事長も変わっていた。
だが、そんなことは気にも留めず校舎の方へと向かっていった。
校舎の中に入ると、まずは理事長室に向かったが、前世であったはずの場所に
は教員室があった。
丁度いいと思いノックを3回。
「失礼します。」
そう大きな声で言いドアを開けると、教師が一斉にこちらを向き"だれだ?" と思った
のだろう。 それはそうだ。 教師は生徒全員の名前、顔、個人情報をすべて覚
えているからだ。
だが奏多は少し可笑しいと思った。
"編入手続きはちゃんとして理事長からの許可があるのに、教師たちが知らない
なんて・・・・・・"
そんな考えを思いついたが、あり得るはずがなく職員室を出ようとした時、一人の
教師が口を開いた。
「あなたが如月 奏多ね? 理事長から聞いているわ。 理事長室を探しているのよね?」
「はい。 ぜん・・・・・・」
「ぜん? ぜんとはなんのことだ? まぁいい、ついてこい」
その女の先生は職員室から出て理事長室に案内してもらうことになった。
心の中では
(危なかった。 間違えて前世ではとか言いそうになった・・・・・・)
と、ぜんという言葉をスルーしてくれたので、ホッとしていた。
そんな考えていると、女教師が変なことを言い出した。
その言葉を聞いて、なんていえば良いのか分からず言葉を詰まらせた。
それは、奏多の前世の話だった。 教師の話によると実行犯ねえちゃん が捕まって
いないという情報だった。 そして、前世の姉ちゃんは、未だに学院や道場を
襲っているとの話だった。
姉ちゃんを精霊騎士は全力で追いかけていると言う話もしていた。
でも信じられなかった。 いや、信じたくなかったのだろ。
前世であんなに優しかった姉ちゃんがこんなことをするなどとは・・・・・・
そんな事を考えていると教師が「ついたぞ。 ここが理事長室だ。」
というとノックなしに「かなちゃん。 如月奏多を連れてきたよ。」
と馴れ馴れしい口調で言った。
咄嗟とっさ に
「な、なに言っているんですか先生。 いくら何でも理事長を名前で呼ぶのは・・・・・・」
理事長を見ると、それは、年端もいかない中学生位の少女だった。
小さな声で先生に
「先生。 理事長って中学生ですか・・・・・・?」
と聞くと、いきなり先生が噴出し、
「聞いたか?! かなちゃん 中学生だってよ!!」
と笑いながら理事長に言った。
だが理事長の口からは「ちょっと黙っててくれないかしら?」
そう良い、先生を追い出した。
そしてこちらに向き直り
「奏多君。 私は若くは見えるけど、見た目とは違ってあなたよりずっと
年上なんだよ?」
そう何とも言い難いことを言われた。
咄嗟に「そうですよねー(棒)」
と会話を流した。
流された事でちょっと不機嫌になり、誰がどう見ても不機嫌と分かるくらい態度が
変わった。
「では、本題に入りますけれども、奏多君はどうして前の学園まで辞めてこちら
に移ってきたのかしら? 理由を10文字以内で簡潔に話してくれると助かるわ。」
と無理難題のことを言ってきた。
「いやいや、10文字以内とか無理だからな?!」
とタメ口で言ってしまった。 だが理事長は顔の表情を変えることなく、
真顔で言ってきた。 その言葉にはまたもや言葉を詰まらせた。
その時理事長に一瞬だが、敵意らしきものを出してしまったらしく、
理事長に完全にばれてしまった。 だが
「なるほど。 理解しましたわ。 要するに前世で姉に殺されその復讐のためで
ですね。 そうとは言いますが、あなたの姉 松島 奈々子さんはもの凄い強いわよ?
あなたじゃ比にならないくらいにね・・・・・・」
奏多は疑問を抱いた。
(なんでこんな突拍子もないことを信じるんだ? いや、今はそんなことは
どうでもいい。)
「そんなの分かってる! 姉ちゃんが強いことは。
だが、なぜそんな事をしたのか真実を知りたい。 そして、最後に俺に言った
言葉を・・・・・・」
「いいですわね~ いいですわね~。 面白そうじゃない。 私は君に賭けることに
すると致しますわ。」
「一体、何に期待しているんだかわからないが・・・・・・そんなに復讐は面白い
ものじゃないぞ・・・・・・?」
だが最後の問いに返答が来ることはなかった。
この学園のルールが細かく書いてあるしおりと、地図。
そして20万円をもらった。
20万円は編入祝いと、復讐の後押し。 と理事長が言っていた。
すると、理事長は俺を追い出すかのように部屋から出した。
追い出した後、理事長は椅子に腰を掛け
(あの子はこの世界を大きく変えてくれるかもしれないわね・・・・・・)
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奏多はこの学園のルールを確認しようと思いしおりを開くと、一枚の紙が
地面に落ちた。
それを拾おうとして手を伸ばしたら、他の人の手が先に落ちた紙を拾った。
拾った女子生徒が俺の顔をみて、
「あれ、この学園の生徒ですか・・・・・・?」
と女子生徒がいうと、奏多の前世の妹と重ねてしまった。
なぜなら、しゃべり方、声が完全に同じだったからだ。
恐る恐る見てみると、それは、
前世の妹そのまんまの姿だった。 奏多は咄嗟に
さっき先生が言ってくれた、前世の俺の名前姉ちゃんの名前。そして
"妹の名前"
「ひかり!」
と大声で言うと、その妹に似ている女子生徒が驚いてしてしまった。
驚かしてしまったので、上手く誤魔化そうとして
「すまん。 見間違えだった。」
「そ、そうですよね・・・・・・ あ、これ落としましたよ・・・・・・」
「あぁ、すまん。 助かる。」
その場から急いで立ち去って、紙の中身を確認した。
その紙の内容は
"如月奏多 1-Aクラスに向かうように。"
と、書かれていた。 そしてその紙の指示通りに1-Aクラスに向かうことにした。
奏多は、教室の扉の前で立ち止まっていた。
(どう入ったらいいのだろうか・・・・・・)
と、考えていた。 編入初日に完全に遅刻をしてしまい。
事実だからと言って、「先生。 理事長との話が長くなってしまい、遅れました。」
(と言い訳をするのはよくないだろう・・・・・・例え事実だったとしても・・・・・・)
とか色々考えていると教室の中から
「あぁ、もう面倒くせーな。」
そう言い、教師が教室のドアを開けた。
「そんな所でうじうじしてたら、時間が勿体ねーだろ。 早く入ってきて自己紹介
してさっさと席に座れ。」
教師はイライラしながら言っている。
目の前にいる教師は、先ほど理事長の事を"かなちゃん"と呼んでいた先生だった。
多分だが、先ほどから奏多がドアの前にいたことに気づいていたのだろう。
そして、奏多は先生に誘導される形で皆の前に立った。
「えーと、今日から編入してきた、如月奏多です。 今日から1年間よろしくお願
いします。」
「それだけか? 如月奏多。」
「あ、えーと・・・・・・はい・・・・・・」
「よし、なら、席に座れ。 ちょっと遅くなったがホームルームを始めるぞ!」
『はーい』
「あーそれと、如月奏多。 お前の席は、あそこな。」
指をさされた所の隣の席には先ほど会った妹の面影を持つ少女だった。
(はは・・・・・・なんでこう俺はついてないんだ・・・・・・)
先生に指示された席に座った。
席に座ると、隣(妹に似た人)が
「えーと、同じクラスだったんだね・・・・・・ これからよろしくね・・・・・・?」
「あ、あぁ、よろしくな。」
と、ちょっと気まずいと思ってしまったが彼女は何とも思っていない様子だった。
だったら、いいと思った奏多は、先生の話を聞いている。
話が終わると同時に、チャイムが学園中を鳴り響かせた。
チャイムが鳴り響くと
「じゃあ、ホームルームを終わりにする。 あぁ、言い忘れていたが明日は
基礎能力を測るテストをするから、体操服を忘れんようにしろよ!」
そう言うと先生は教室を後にする。
先生が教室を後にした直後・・・・・・奏多の周りには男女数名が集まってきて、
質問攻めされた。
奏多は何から答えていいのかわからなく、困っていたが
このクラスのリーダー? 的存在の人が、
「みんな! 一気に質問をしてはどれから返せば分からなくなるんじゃないかな?。
まずは一人一人質問をしたほうがいいよ?」
そういう風に皆に言うと奏多の周りに群がってる生徒たちが
『『『それもそうだね』』』
そこからリーダー(?) が言ったように一人一人から質問された。
それに奏多は丁寧に答えていき、質問が終わったのは30分後くらいだった。
不幸中の幸い、今日の授業は午前(ほとんど受けてない)で終わりだったので
これ以上面倒くさいことにはならない。
と思い、紙に書いてある寮に向かおうとした。
そして、教室を出たところを後ろから
「如月君。」
と、このクラスのリーダー的存在の人が呼んできた。
それに対して奏多は
「どうした? えーと・・・・・・」
「木戸聖夜きどせいや だよ、如月君。」
「あぁ。 それと俺の名前奏多でいいぜ。」
「じゃあ、僕も聖夜でいいよ。 それと奏多。 単刀直入に言うけど、
僕と友達になってくれないか?」
と、友達になろうと言われて、いきなりの出来事に驚いたが、奏多は
「あぁ、いいけど、どうしてなんだ?」
「なんとなくなんだけど、君と僕はなんか似ている気がしてね・・・・・・」
(似ている・・・・・・? 俺は復讐のために生きているのだぞ? それで俺と似ている
ってな・・・・・・まさかな・・・・・・)
「そ、そうか。 分かった。 じゃあな。」
奏多はそのように別れを告げると、聖夜が
「あ、それと、よかったら僕がここの案内をしようか?」
「あぁ! いいのか?」
「うん。 いいに決まっているじゃないか。 友達なんだから。」
と、いう風な流れになって、案内をしてくれるのは次の初めの休みとなった。
(まずは、やっぱりこの学校になれないと・・・・・・な。)
そして、聖夜と別れた。
聖夜と別れてから、紙に書いてある通りの部屋へと向かうことにした。
だが・・・・・・
「この建物広すぎてどこかわかんねーー!!!!」
と、声を大にして言った。
そう。 奏多は方向音痴で今まさに学園で絶賛迷子中なのだ。
どっちに行ったら良いのかもわからなく、ましてや職員室の場所もわからない。
奏多の転生する前(15年前)はここまで大きくなかった学園だが、ここ
15年でここまで大きくなっているとは、本人も思っていなかっただろう。
そんなことを考えながら1時間程彷徨っていると、紙に書いてある通りの
所に出た。 奏多はラッキーと思い、その地図通りに自分の部屋へと向かう。
自分の部屋の前につくと、横の部屋のドアが開いた。
そこから出てきたのは、
「あ、奏多。 隣の部屋なんだね! いろんな意味でよろしく。」
と、隣の部屋から出てきたのは、聖夜だった。
奏多はとても損した気分になった。
(あそこで聖夜について行っていれば、自分の部屋に1時間も早く戻れたものの・・・・・・)
そう考えていた奏多にとどめを刺しに行くかのように聖夜が
「あれ? 一時間もの間何してたの? もしかして、先生に呼ばれてたとか?」
「あ、え、あぁ、そうだぜ。 ちっとばかし理事長に呼ばれててな あはははは・・・・・・」
と、明らかに嘘をついてます! というような言い方をして、自分の部屋に入ろうとした。
ドアノブに手をかけ、開けようとするも、ドアが開かなかった。
(あれ?なんで開かないんだ?)
と思いつつ
ガチャガチャガチャガチャ・・・・・・
聖夜は不思議そうに思い
「どうしたの奏多? そこにあるモニターに生徒手帳を翳 さないとあかないよ?」
「だよな・・・・・・ ちょっとうっかりしててな・・・・・・」
そう言い、胸ポケットから生徒手帳を取り出し、部屋の中に入って行く。
*
部屋の中に入ると唖然として棒立ちしている。
その理由は・・・一人で暮すにはあまりにも広く、とても一学生に
は使い切れないほどの大きく広い部屋だからだ。
それだけでは無かった。 部屋の中を歩いていると、なぜかベット
が二つあったことに気づいた。
(なぜ、ベットが二つもあるんだ? 俺以外にも誰かこの部屋に来るのか?)
という疑問が湧いてきている。 だが、この学園は相部屋はなかったはず・・・・・・
でも、そういうのは興味がなかったので、どうでもいい。 と呟き
ベットに横になった。
「あぁ・・・・・・ 今日はなんか疲れたな・・・・・・」
と、言い奏多は強烈な眠気に襲われた。
その眠気に逆らうことなく、そのまま眠ってしまった。
そして、奏多が起きたのは、辺りが真っ暗になった頃だった。
部屋の電気を付けていなかったせいで、周りが暗闇で電気をつける
スイッチの場所の検討がつかない。
奏多は、壁を伝うようにしてスイッチを探そうと思い、壁に手を付く。
壁伝いに歩いていると、スイッチらしきものがあることに気が付く。
そのスイッチらしきものを押すと、部屋が明るくなる。
今まで暗闇の中で寝ていた奏多には、突然の明かりに目が少しやられて、視界が
ぼやける。
何秒かすると、その、ぼやけもなくなり部屋を見渡す。
改めて部屋を見ると、やはり一人で過ごすには少し・・・否。 とても大きかった。
その無駄に大きい部屋の意味は、鳴り響く玄関のチャイムと同時にわかること
になる。
奏多は玄関に行き、ドアを開けると、そこには・・・・・・
「お兄ちゃん! 私もきたよっ!!」
目の前に立っていたのは、奏多の妹、如月こよみだった。
それに対して奏多は驚きの表情をしている。
「ど、どうしてこよみがこの学園に来てるんだ?!」
「その事なら、私から話しますわ。」
と、こよみの後ろから現れたのは理事長だった。
理事長曰く、こよみをこの学園に入れたのは、この学園にいたほうが安全で
奏多が復讐しやすい。 と思ったからだそうだ。 妹は「復讐? なんのこと?」
と、いう風に小首を傾げ奏多の方を向いてきたが、
「ゲームの話だよ。 あはははは・・・・・・」
お得意の下手くそな嘘をついた。
妹はとても純粋だったので、すぐ信じてくれる。
奏多は
「妹には話さないようにお願いします。」
と、小声で言うと、理事長は頷いて帰って行ってしまった。
奏多は、礼儀は正しいほうなので、お辞儀をし自分の部屋に入った。
玄関をくぐるとこよみが
「わぁー! お兄ちゃんこの部屋大きいね♪」
と、なぜか嬉しそうな口調で言った。
奏多は妹のテンションには付いていけずに、
「風呂行ってくる。」
誤魔化すように風呂に入った。
風呂から上がると、妹が俺の後に風呂に入りに行った。
夜ご飯を食べていなくてお腹が空いていたので、ご飯を食べに
行こうと思い学食のあるところに行こうとした。 だが、
(このまま、一人で行くとまた迷うんじゃね? これ・・・・・・)
隣の聖夜を誘って行こうとした。
聖夜を誘おうと、チャイムを鳴らしたが、誰も出無かった。
(うわっ・・・・・・マジか・・・仕方ない。今日はご飯無しでするか・・・・・・)
そう思い、自分の部屋に入っていった。
そうして、部屋に入り少しでも空腹を紛らわそうと寝ようとしていた。
だが、昼からこんな時間まで寝ていたせいで、眠れる気がしなかった。
(なんで、昼間に寝てしまったのだろう・・・・・・)
奏多は寝たことを心底悔やんだ。
少し時間がたつと、妹がお風呂から上がってきた。
お風呂から上がってくると、妹が
「お兄ちゃん、お腹空いてない?」
「え、なんかあるのか?!」
「う、うん... なんでもいい?」
「あぁ!」
(今気づいたんだがこの寮には台所までついているんだな・・・・・・)
と妹は台所に立って何かを作ってくれているみたいだ。
(あぁ・・・・・・助かった・・・・・・ これで・・・・・・ん? なんか忘れている気が・・・)
と思い。 決定的なミスを犯していることを忘れていた。
そう・・・・・・妹は・・・・・・料理ができないのを・・・・・・
「お兄ちゃん~できたよ!」
「おぉ!」
妹が持ってきたのはオムライスだった。
スプーンを手に取り「いただきます」と言い、そのスプーンにオムライス
を乗せ、口に運んだ。
口に運んだ後、奏多は後悔しながら目の前が真っ暗になっていった。
"妹の家事は 絶 望 的 だったのだと・・・・・・
「お、お兄ちゃん! しっかりして!」
そういうこよみだったが奏多は薄れていく意識の中でこの声は認識できてはいなかった。
**************************************
気を失ってから9時間後に目を覚ました。
目を覚ますと、ベットの上にいた。
立ち上がり、部屋を見渡したが、こよみの姿はなかった。
(あれ? こよみはどこに行った?)
そう思いながら今の時間を確認しようとし、時計を確認すると・・・・・・
8:20分のところを指していた。
やばいと思い、急いで支度をし自分の部屋を後にした。
(なんで、こよみは起こしてくれなかったんだー!!!!!!)
そして全力ダッシュで自分の教室に向かった。
だが、何分経っても自分の教室につかなかった。
そう、奏多は教室と真逆の方向に走っていたからだった・・・・・・
そうだと気づかされたのは、担任と鉢合わせをしてからだ。
鉢合わせると、
「お前、なぜ自分の教室と真逆の方向に走っている?」
と、言われた。 奏多は一瞬にして言い訳を思いつかず正直に話すと担任に大笑いされた。
そして担任は
「ならついてこい。」
奏多は担任の後ろからついていき、自分のクラスへと向かっていった。