第1話 地味な男の子のお話(1)
村人。
それが俺に与えられた役職だった。
なんの能力もない、ただの村人陣営勝利のために生かされている人間。
日が経つにつれて友人も死に、孤独を感じることが多くなり、一人で考える時間も増えた。
30人ちょっといたクラスメイトも今では半分以下になり、こんなゲームが始まる前の学校生活で親しくしていたものはいなくなってしまった。
もともとおとなしい性格の俺は、クラスのカースト制度から見ても底辺、つまり地味だった。
イケイケアゲアゲなパリピメイトに比べ地味な俺はよくパシリにされたりしたものだ。
一時は環境を恨んだりした。
もっと親が厳しくなければ、もっと金があれば。
でもそう考えるのももう辞めてしまった。諦めたのだ、つまりは。
ゲームが始まって配られた役職を見ても、俺は結局なんの突発した能力もない平々凡々な人間。
だが、そのお陰で目立たずに済んだのか、今こうして生き延びている。
誰が狼か分からない俺は、誰かと親密になることも喧嘩をすることも無かった。
それがこのゲームにとって一番の恐ろしいことだと分かっていたからだ。
「処刑者は安田ミレイです。12時に執行されますので、それまでどうか有意義な時間をお過ごしください。」
無機質な機械音は、俺たちに死と言う現実を突き付けてくる。
処刑者が逃げたところで何もならないことを俺らは知っている。
だからこそ抗おうとしないし、むしろ死ぬことを喜ぶヤツだっている。
まぁ、こんな世界にいたらそう思うのも無理はないと思うけど。
「今回の処刑者、やっすーだってさ!」
「えー、やっすー死んじゃうのーん?」
キャハハッと甲高い笑い声で我に返る。
彼女たちは以前、やっすー___安田 ミレイと仲良くしていた子たちだった。
この様子を見る限り、彼女の死を特別悲しんでいるようには見えない。
所詮、上部の仲ってやつか。
そんなことを考えていたら、彼女たちの中の一人、橘 アリサに名前を呼ばれた。
「なに?さっきからジロジロうちらのこと見て。キモイんだけど。」
「すまん…そんなつもりは無かった、気を悪くしたなら申し訳ない。」
「ほんっとあんた、その喋り方何とかならないわけ?どこの時代の人間?」
アリサとは小学校の頃から一緒だ。友達と言えるかは分からないが、それなりに話すしそれなりに喧嘩もする。
腐れ縁なのか高校まで一緒になり、今に至る___という感じなのだが。
こいつは昔から俺のことをことある度にバカにしてきた。今だってそうだ。
友人の死を悲しみもしない、そんな心のかれた人間と腐れ縁なんて思いたくもないけど…なんて考えていると。
突然スピーカーからピピッと変な音が漏れた。
「【求愛者】櫻井 シュン
恋人が処刑者に決定したため、処刑対象者になります。」
その無機質な声は、後ろで顔を青ざめていた櫻井 シュンの顔をさらに青白くさせた。
しかしもうどうにもならない。
決まってしまった処刑は執行される以外に道はないのだ。
「そんな___!!!なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!」
もうどうにもならないような叫び声を上げながら頭を壁に打ち付ける。
___そう言えばこのゲームが始まる前も2人は付き合っていたような。
この叫び声の真意は恋人が処刑されることに対してなのか、それとも死にたくないからなのか。
(どちらにせよ俺には関係ない、か。)
安全圏にいた俺には本当になんの縁もない話で、まぁ冷たいことを言えば、彼らとは友達という程の関係でもなかった。
だからどうでもいいと言うか、半分無関心。
死にたくないなら動かなければいい。
目立つな、それだけだ。
そんなことも分からないようじゃこの先生きていられたかもわからないけど。
「ねぇレイジ。あんたは本当に村人なんだよね?」
「あぁ。こんな地味な俺が村人以外の役割貰えるわけがないだろう。」
狭山 レイジ______俺は、本心を口にした。
今までスポットライトを当てられることのなかった人間が今になっていきなりスポットライトを浴びるわけがない。




