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第7章:幹事

次の日の朝、会社に着くとすでに優は来ていた。


舞はいつものようにパソコンが立ち上がっている間に、給湯室に行きインスタントコーヒーを入れ席に戻る。


「七海さん」


後ろから声を掛けられ振り向くと、同じ部署の坂崎が立っていた。


「杉原の歓迎会今週の金曜日に予定しているんだけど、俺来週までに仕上げないといけない企画があって、参加できそうにないんだ。 悪いけどさ、今回だけ幹事変わってもらえないかな。 さすがに飲み会の席で幹事不在じゃカッコつかないだろ」


幹事は1年単位の持ち回りで、今年は2年先輩の坂崎が担当だった。


仕事が忙しいときはみんなお昼休みを削って仕事をすることもあり、仕事の期限が迫っているのでは確かに歓迎会の準備等は大変だろう。


「でも、なんで私なんですか?」


舞自身にもいくつか急ぎで仕上げないといけない仕事があった事を思い出しながら聞いた。


「おまえ杉原の教育担当だし、仕事も杉原に手伝ってもらえるから、少しだったら時間とれるんじゃないか?」


確かにそれはそうだけど……。


「なっ、頼む! 助けると思って!」


坂崎は顔の前で拝むように手を合わせ、頭を下げた。


さすがに、先輩にここまで言われると断るに断れなくなってしまい、心の中でため息を吐いた。


「わかりました」


「悪いな。今度埋め合わせするから」


そう言って、坂崎は自分の席に戻っていった。


面倒くさいなぁ。


優に仕事を手伝ってもらえるとはいえ、参加の確認やお店の手配などやらなければいけない雑用が増えてしまった。


「杉原君。今週の金曜日って何か予定ある? 歓迎会をしようと思っているんだけど」


「そうなんですか? わざわざありごとうございます。その日でしたら大丈夫です」


舞が優に話しかけると、優はとても丁寧な返答をした。


「そう。じゃ、また詳細がわかったら言うね」


「よろしくお願いします」


昨日の帰り道とは全然違う態度に舞は少し驚いたが、一応社会人として会社とプライベートの区別はつけているようだった。


お昼休み、昼食を食べ終わり歓迎会のお知らせメールを作成していると涼子が席に戻ってきた。


「薗田さん、金曜日に杉原君の歓迎会をするんだけど、何処かお勧めのお店ないかな」


涼子は社内の情報だけでなく、最近の流行やおいしいお店などにも詳しい。


自分でお店を探すより確実だった。


涼子は少し考えていたようだったが、思い出したように


「2、3ヶ月前に、会社から15分ほど歩いた所に創作料理店が出できたみたいですよ。 まだ私は行った事無いけど、個室とかもあるっていう話だから丁度いいと思いますよ」


「どの辺り?」


「消防署の近くだったかな」


へぇー、そんな所に新しいお店が出来たんだ。


「じゃ、そこにしようかな」


「本当ですか? おいしいっていう話だから1度行ってみようと思っていたんです。」


涼子が楽しそうに話す。


「お店の名前わかる?」


「うーん。なんだったかな……。教えてくれた人に聞いてみますからちょっと待ってください」


涼子は携帯でメールを作成してどこかに送信しているようだった。


舞は再びパソコンに向かって歓迎会のお知らせメールを作成していると、涼子の携帯にメールの着信音が鳴った。


「夢幻坂って名前だそうです。お店の電話番号は……」


涼子が電話番号を読み上げ始めたので、慌ててメモをとる。


「ありがとう」


舞は涼子にお礼を言うと、お店の電話番号をメモした用紙と携帯を持って廊下に出た。


お店に電話をして金曜日の予約を取り、電話を切ると不意に軽く肩を叩かれた。


「よっ! 久しぶり。元気してた? 舞ちゃん」


振り向くとさわやかな笑顔をした新見良太が立っていた。


「新見主任……」


「何してんの?」


「新しく企画部に配属になった杉原君の歓迎会の予約を、お店に電話していたんです」


「なんだ。俺はまた彼氏にラブコールでもしているのかと思った」


「彼氏だなんて、いませんよそんな人」


慌てて否定すると良太は艶やかな笑顔を作り私の顔に自分の顔を近づけてきた。


「じゃ、俺にもまだチャンスは残ってるってことだな。どう? そろそろ俺とデートしてくれる気になった?」


「私なんかとデートしなくても、新見主任にはたくさんいらっしゃるじゃないですか」


舞は良太が近づいてきた分だけ後ずさりをしながら答えた。


甘いマスクに長身のすらりとした体型。


ジムに通っているのだろう、ワイシャツの上からでも鍛えているのがよくわかる。


いつも笑顔を絶やさず誰とでも気軽に話をし、話題も豊富な良太はいかにも営業といった感じだ。


35歳にして今だ独身の良太が、女子社員に人気がある理由の一つでもある。


「そんなのは全部遊びさ。真剣に誘うのは舞ちゃんだけよ。俺はいつでもOKだから」


「七海さん、何やってるんですか?」


声のする方を見ると、良太の少し後ろに優が立っていた。



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