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第4章:別れと出会い4

「気分悪いの? 吐きそう?」


優は舞の両肩に両手を置いて心配そうにしている。


しばらく座り込んでいたが、吐き気が収まったので


「大丈夫」


そう言って立ち上がり歩こうとしたら、また気分が悪くなって再び座り込んでしまった。


そんな舞の様子を見ていた優は急に舞を抱き上げ、エレベーターへ歩き出した。


驚いて慌てて降りようとしたが


「暴れないで。あまり暴れると落っことしそうになる」


そのままエレベーターに乗込みボタンを押す。


エレベーターの扉が開いた場所は1階ではなく、客室がある階だった。


優はエレベーターを降りて廊下を歩き、部屋の扉の前に来ると舞を抱いたまま器用に鍵を開けた。


部屋の中に入ると、優はバスルームに行き舞を下ろし背中をさすってくれた。


「吐けそうなら吐いた方が楽になるよ」


突然の事で頭の中が混乱していたが、それよりも気分の悪い方が勝ちその場に座り込んで吐いてしまった。






目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。


ひどい頭痛がする。


頭を片手で押さえながら、だるい体を起こした。


ここ何処だろう…。


ふと人の気配がして、横を向くと隣に優が寝ていた。


えっ!

 

舞は焦って自分の服を確認する。


一応、ちゃんと着ている……よね……。


頭痛がする頭で、舞は昨日の事を思い出していた。


優と店を出た後、気分が悪くなってホテルの客室のバスルームで吐いたんだっけ……。


で、その後は……記憶がない……。


私、一体なにやってるんだろう……。


大きなため息を吐きながら、時計を見るとAM5:32を表示している。


優を起こさないようベッドから出て、ホテルに備え付けてある紙とペンをとった。


『 先に帰ります。 舞 』


手紙をベッドの脇のサイドテーブルに置き、部屋を出た。


二日酔いで駅まで歩くのはつらかったがタクシーを呼ぶには時間が早すぎた。


電車に乗り自分のアパートまでたどり着き鍵を開け部屋に入る。


頭痛はしていたが、とにかくさっぱりしたくてシャワーを浴びた。


シャワーを浴び終わると、タオルで髪を巻いたままベッドの上にダイブする。


それにしても、いろんな事があった日だったな。


今日一日の事を思い出していると、再び眠りについていた。


外の騒がしい音で目が覚め、時計を見ると16時を回っている。


よく寝たせいか、体のだるさも頭痛も和らいでいた。


窓のカーテンを開けると、アパートの前では引っ越し業者の車が去っていく所だった。


アパートに誰か新しい人でも入ったのかな。


そういえば、1階がたしか空き部屋だったような気がする。


そんな事を考えながら喉が乾いていた舞は台所に行き、冷蔵庫を開けペットボトルの水を一気飲みする。


二日酔いだったわりには、この時間まで何も食べてないとお腹が空いてきていた。


しかし、さすがに重いものは食べる気がせず、仕方なく胃にやさしいおじやを作って食べる。


食べながら舞は黙ってホテルを出てきた事が気になっていた。


手紙だけ置いて帰ってきてしまったけど、良かったよね……。


お酒飲んで記憶がなくなるなんて今まで無かっただけに、記憶がないことがこんなにも不安になるとは思ってもみなかった。


それにしてもあのホテルの部屋……。


ホテルに着いた時にフロントに行くことはしなかったし、お店を出た時もフロントに行かずそのまま部屋に向かったよね。


という事は、最初から部屋を取ってあったってこと?


それが目的で誘ったってことだろうか……。


いくら考えても答えは出ない。


もともとナンパで知り合ったのだから、部屋に誘うのが目的だったと言われてもいまさら驚かないけど。


ゆきずりの恋っていうわけじゃないけど、どうせ二度と会う事なんてないだろうし。


それに、なにかあったわけじゃないし……、多分……。



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