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第3章:別れと出会い3

行き先を聞いて舞は驚いて優の顔を見た。


パークアットホテルって、このあたりじゃ有名な高級ホテルじゃない。


ご飯を食べに行くのにどうしてそんなホテルに?


そんな舞を見て優はいたずらっぽい笑顔で


「べつに、襲うとかそんなんじゃないから安心して」


タクシーがホテルに着くと、優は料金を支払い私達はタクシーを降りた。


すると、優はまた舞の手を取りホテルの中に入っていく。


ホテルに入るとフロントの前を通りすぎ、エレベーターに乗り優は最上階のボタンを押した。


こんなにさりげなく手を繋ぐ事が出来る優に、舞はやはり戸惑ってしまう。


結構女性に慣れているのかな。


会ってからずっと笑顔でいる優はきっと母性本能をくすぐるだろうし、よく見れば童顔だけど目鼻立ちがはっきりしていて、女性にはもてそうな気がする。


そんな事を考えている内に最上階に到着し、エレベーターを降りた。


着いた所は雑誌にもよく掲載されている有名フレンチレストランだった。


ココってすっごく高いんじゃ……。


舞は目を何度が瞬きをし、優を見る。


すると、優は少し笑ってそのまま舞の手を引きお店に入った。


「いらっしゃいいませ」


「予約した杉原です」


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


予約って……、一体いつしたんだろ。


不思議に思いながら案内された席に着くと、窓の外に釘付けになり思わず声をあげていた。


「わぁ、綺麗……」


窓の外は街全体の美しい夜景が一望できた。


自分の住んでいる街とはいえ、夜景を見るのは初めてで少しの間見入っていると


「舞、そろそろ座ったら。でないとお店の人が困ってるよ」


夜景に見とれていた舞に、可笑しそうに笑いながら優が声をかける。


ふと横を見ると、お店の人が舞の椅子を引いたまま待っていた。


舞は慌てて椅子に座り、優を見るとウエイターの人に話しかけている。


「今日はシェフのお任せで」


「かしこまりました。お飲物はどういたしましょう」


「料理に合うおすすめのワインをボトルでお願いします」


優が注文を終えるとウエイターは丁寧にお辞儀をし、去っていった。


「ねぇ、大丈夫?」


「何が?」


「ココって高いんじゃないの。それに料理もワインもお勧めだなんて、一体いくらになるのかわかんないよ」


心配をしている舞に笑いながら右手の手首から先を上下に振る。


「心配いらないよ。こうゆうお店は従業員全員がプロだから、俺らの見た目から判断してそんな高い料理やワインは持ってこないって」


まだ心配そうにしている舞に、優は窓の外を見ながら


「それより、ここの夜景綺麗だろ」


その言葉に、舞も窓の外を見る。


しばらく二人で夜景を眺めていると、ウエイターがワインと前菜を運んできた。


ウエイターはワインをグラスに注ぐと、また丁寧にお辞儀をして去っていった。


「舞の失恋記念日に乾杯」


優は持ったグラスを私のグラスに当て、甲高い音が響いた。


「それって、なぐさめになっていないんだけど」


舞は苦笑しながら答える。


「だって、あの男の人にふられた事に傷ついていた訳じゃないでしょ? どちらかというと、あの男の人に言われた言葉に傷ついていた気がするからさ」


優の言葉に舞は返す言葉もなく優から目を逸らした。


まただ。


最初に会った時もそう。


なぜ優は私の心の奥にしまってしまいたい気持ちをこうも簡単に言葉にするのだろ。


あまり触れて欲しくない心の場所……。


「ここってよく来るの?」


舞は話を逸らした。


「いや、以前に一度知り合いに連れてきてもらった事があって。すごく夜景が綺麗だったからもう一度来てみたいなって思っていたんだ」


「そう、私はまた女性を口説くのにいつもこのお店に来ているのかと思った」


冗談まじりで言うと


「まさか!女性を口説くたびにこの店に来ていたら破産しちゃうよ」


「ふぅん。そのわりには注文の仕方がずいぶん慣れているように思えたけど」


「そんなことないよ。慣れてないからメニュー見てもわからないと思ってお任せにしたんだ」


信用していないような目で優を見ると


「もしかして俺のこと、すっげー遊び人みたいに思ってる?」


「もしかしなくてもそう思ってる」


優は否定も肯定もせずただ笑っていた。


「それより、大丈夫?」


「なにが?」


「けっこう飲んでいる見たいだけど」


そう言われ、ワインのボトルに目をやるとすでに3分の2が無くなっていた。


心の触れられたくない部分をみられないように、ついお酒のペースが早くなっていたようだった。


「結構お酒強いんだな。顔にも出てないし」


お酒は弱い方ではないが、強いかと聞かれるとザルと言われる程飲める訳でもない。


「人並みだよ。ただ顔に出ないだけ。もっとも、お酒飲んでほんのり顔が赤くなる方が男の人にとってはかわいくみえるんだろうけどね」


少し嫌みっぽく言うと


「それって人によって違うんじゃない? 俺はお酒好きだから一緒に飲んで楽しめる方が好きだけどな」


優は笑って答える。


まっ、そんな事言っていても目の前にお酒で顔が赤くなった子がいれば、そっちに気がいっちゃうんだろうけど。


そんな事を思いながら、空になった自分のグラスにワインを注ぎ、飲んだ。


でも、確かに今日は飲み過ぎたかな。


普段ワインなんか飲まないから、ワインの適量も考えずに飲んでしまったような気がする。


そんな事を考えていると、最後のデザートが運ばれてきた。


デザートを食べ終え、少しゆっくりしてからお店を出ようと椅子から立ち上がると、少し足下がふらつきそうになり机に手をついた。


やっぱり、飲み過ぎたかな……。


お店を出るまでは気が張っていたのでちゃんと歩けたが、お店を出て廊下を歩いていると急に気分が悪くなり、手で口元を押さえながらその場に座り込んでしまった。



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