第25章:疑惑2
月曜の夜、舞は優と一緒にアパートまでの道のりを歩いていた。
一緒には帰りたくはないと思っていた舞だが同じ仕事をし、同じアパートでは他に用事でもない限りそうはいかないようだ。
いつもなら、よくしゃべりかけてくる優だが今日は押し黙ったまま舞の隣を歩いている。
昨日のお礼を言いたかったが、ずっと押し黙っている優に舞はお礼を言うタイミングをなくしどうしたものかと考えていた。
そして沈黙を破ったのはやはり優だった。
「昨日さ……、何処に行ってたの?」
その口調は少し咎めるようだった。
「えっ……、あっ、うん、ちょっとね」
舞は曖昧に誤魔化す。
再び、沈黙が続き
「アイツとはどうゆう関係なの?」
アイツ?
質問の意味が分からず黙って優を見上げると
「営業部の主任」
「新見主任のこと?」
優は舞の方を見る事なく真っ直ぐ前を向いたままだ。
「昨日一緒にいた相手ってアイツだろ」
「えっ! なんで知って……」
舞は驚いたが、言葉の最後まで言う前に優の言葉が遮った。
「昨日、車から降りて来るのを見た」
優の責めるような言い方に舞は多少ムッとした。
自分は薗田さんと付合っているのに、なんで新見主任と一緒にいただけで、優に責められなければいけないのだろう。
「だから、何? 私と新見主任が一緒にいたからって、責められることはしてない」
優は立ち止まり舞を振り返った。
「アイツの事、好きなの?」
その表情は怒っているようなそして辛そうにも見えたが、急に思いがけない質問をされ舞は少し強い口調で言い返した。
「なっ、なんでそんな事聞くの。私と新見主任が一緒に居たって優には関係ないでしょ!」
「関係ないことないだろ!」
優の口調も強くなる。
「それに……、優だって人のこといえないじゃない」
「どうゆうことだよ」
「薗田さんのこと……」
「薗田さん?」
憂はなぜ涼子のことが出て来るのかわからないといったようすだ。
「だってそうでしょう。私、見たんだから。薗田さんと踊り場で抱き合っていたのを」
憂は目を丸くして驚いていた。
「いやっ……、あれはそんなんじゃ……」
「薗田さんと付き合ってるんでしょ」
優は舞の両腕を掴み
「舞、ちゃんと聞いて。薗田さんとの事はそんな関係じゃ……」
「もう、私にはかまわないで!」
優が最後まで言い終わらないうちに、舞は優の腕を振りほどいてその場を走り出していた。