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第20章:成長させてくれる恋

「で、しちゃったんだ。キス」


舞はコックと頷いた。


舞は仕事の帰りに結衣と居酒屋に飲みにきていたが、開口一番に優とのその後を聞かれていた。


“スナック 秋桜”の定休日は日曜日だが、結衣は水曜日を自分だけの定休日と決めていて、お店には出ない。


結果的に、結衣と飲みに出かけるのは水曜か日曜である。


舞は優とキスをした後、しばらくして部屋に戻った。


その時も優は同じアパートにもかかわらず、部屋まで送ってくれた。


「なんか、大切にされてるって感じだね」


「そう……かな……」


舞は少しうつむき加減になりながらビールに口をつける。


「だって、普通2人っきりで部屋に居てキスまでしたら最後までやっちゃうでしょ。 それに、同じアパートで部屋まで送らないよ」


結衣はビールを一口飲むと


「付き合うの? てっか、付き合ってるよね。その状況は」


舞はグッと言葉に詰まった。


確かに今の状況はそう言われても否定できないような気がする。


しかし、舞はまだ素直にそう思えないでいた。


優とキスした事で会社で顔を合わせづらいと思っていたが、月曜日に会社で会っても優はいたって普通で、 一緒に帰る時もたわいもない話をするだけだった。


そんな優をみていると、キスした事がまるで夢だったかのような気分になる。


「今回は逃げられないよ」


黙ったまま目線を下に向けていた舞は結衣の言葉にドキッとして顔を上げた。


「いままであんたは誰かと付合っても結局自分から避けるような態度だったでしょ。 自分の都合が悪くなるとすぐに相手の事避けて連絡をとらなくなる」


結衣はダバコに火をつけ一口吸った


「でも、今回は避けたくても同じ職場で住んでる場所も同じ。ここまで状況がそろってると、 正面向いてちゃんと相手と向き合う事しないとね」


結衣とは長い付き合いだけに、舞の欠点をよくわかっていて的確に指摘してくる。


その指摘が針を刺したように舞の心がチクチク痛む。


今まで自分の心に踏み込まれそうになると、舞は無意識のうちに相手を避けるように連絡をとらなくなっていた。


しかし、優の場合は……。


職場も住む場所も同じでは、いままでのように逃げる訳にはいかないだろう。


いや、そもそも優は初めて会った時から舞の心に入り込んでいて、すてに逃げられないのかもしれない。


「それしても、意外だったな。舞の心を癒してくるのは良太さんだと思っていたのに」


意外な名前を聞いて、舞はキョトンとした様子で結衣を見た。


「なんで、新見主任の名前が出てくるの?」


舞の態度に結衣は呆れたように


「あんた、ホントに気づいてないの? 良太さん、絶対舞に本気だよ」


「やだ、そんなわけないじゃん」


舞は笑って否定した。


結衣はジッと舞を見た後に肩を窄め


「信じる信じないは舞の勝手だけど。いつも舞を見ている時の良太さん、すごくやさしい目してるよ。 なんか、見守ってるって感じがして。密かに良太さんを応援してたんだけどね」


舞はまだ結衣の言葉を信じられないような顔をしてる。


「結衣、本気で言ってるの?」


「もちろん。こんな事冗談では言わないよ。良太さんは確かに遊び人だけど、舞を見る目は他の人とは絶対違う」


本当にそうなんだろうか……。


断言して言う結衣に、頭の中で良太を思い出してみたが、いまいち実感がわかない。


「まぁ、あたしとしては舞の事をちゃんと正面きって向き合ってくれる人なら、良太さんだろうが年下君だろうがどちらでもいいけど」


「結衣……」


結衣はいつも舞の事を本気で心配してくれる。


唯一心の許せる親友に舞は本当にありがたいと思っていた。


タバコの火を消し、結衣は舞に笑顔を向けた。


「舞、自分を成長させてくれる恋愛をしなよ」



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