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第2章:別れと出会い2

「俺、優。お姉さんの事は舞って呼んでもいい?」


「なんで名前知っているの?」


「だって、あの男の人、そう呼んでいたでしょ」


聞こえてきたと言っていたわりには、しっかり名前まで覚えているとは。


「何処に行くの?」


「心がスッキリする所」


心がスッキリする所って……。


しばらく一緒に歩いていると一件のビルの前に着いた。


「ココって……」


「ゲームセンター」


笑ってそう答えると、優は舞の手を引き中に入った。


そこは、ビル全体が複合施設になっているようで、1階にはゲームセンター、2階にはボーリング場、3階にはビリアードや卓球、4階にはリラクゼーション施設があった。


ゲームセンターなんて何年ぶりだろう。


戸惑っている舞を気にする様子もなく、1台のゲーム機の前に立った。


それは、なんの変哲もない銃を画面に向かって撃つ対戦ゲームだった。


優は何か操作をすると、舞に銃を手渡し


「ほら、始まるよ」


えっ!


急に振られどうすればいいのかわからずに立っていると


「画面に敵が出てくるからとにかく撃ちまくって。早く!でないとやられちゃう!」


優の言葉にせかされ、あわてて画面に向かって銃を撃つ。


しばらくすると画面に『game over』という文字が出てきて、ゲームの終了を告げた。


「あー、負けちゃったぁ」


優は悔しそうにしながら舞を見た。


「これって、お互いが協力しながら敵の基地に乗込んで味方を救出するゲームなんだ。まだ1回もクリアした事がなくて。悔しいからもう一回やろ!」


優はまたゲームに向かって操作を始めると、画面には『start』の文字が映し出される。


一体、これのどこが『心がスッキリする所』なんだろう。


疑問に思っていると、優は画面に向かって銃を撃ち続けながら


「舞、援護して!」


その言葉に、とにかく画面に出てくる敵を撃った。


撃って、撃って、撃ちまくると画面には『last stage』と映し出された。


「よし、あともう少し」


優の言葉になぜが緊張しながら、画面に銃を向ける。


画面の中では激しい銃撃戦が行われ、あと一歩の所で仲間を救出出来そうなところで、無情にも『game over』が表示されてしまった。


「くっそ! やっぱり、簡単にはクリアできないなぁ」


こんなゲームになにをそんなに悔しがっているのだろう。


子供のように悔しがっている優の姿を見て思わず笑ってしまった。


「やっと、笑った」


優はやさしそうな笑顔で舞を見る。


そんなやさしそうな笑顔を向けられ、ドキッとしてしまい目を逸らしてしまう。


自分よりも年下の子の笑顔を見て、動揺してしまっている自分に戸惑った。


そんな私を気にする様子もなく、優は舞の手をとって別のゲーム機の前に連れて行った。


今度のゲームは体全部を使って遊ぶ体感ゲームで、そこでも優はクリアできないと本当に悔しがり何度も一緒に再チャレンジをした。


そしてクリア出来ると、また別のゲームに移りひたすら遊んだ。


いつのまにか舞も夢中になっていて、クリア出来ないと優と一緒になって悔しがり、クリア出来ると二人で喜んでいた。






一通り遊び終え、長椅子に座って休んでいると優が自動販売機でコーヒーを買いながら何処かに電話をしていた。


「疲れた?」


電話が終わると優はコーヒーを舞に手渡しながら隣に座る。


「本当は、スポーツでもやって体を動かす方が気分もスッキリするんだろうけど、それじゃ好き嫌いもあるし。ここだったら手軽にストレス発散ができるから」


ストレスの発散場所がゲームセンターだなんて若いなぁと思いながらも、こうゆう発散方法もあるんだ。


こんなふうに何も考えずに楽しんだのは一体いつぶりだろう。


気がついた時には、佐伯さんの事は考えなくなっていた。


「よく来るの?」


「たまにね。スポーツだとどうしても相手が必要になっちゃうし」


優はコーヒーを飲み干すと立ち上がり、舞を振り返りながら


「体動かしたからお腹空いたな。夕飯食べに行こ」


外に出ると日はすっかり沈んでいた。


優は舞の手を取り街中を歩き出した。


今までつきあった人は年上ばかりで並んで歩いても手を繋ぐ事などほとんどなく、さりげなく手を繋ぐ優に戸惑いながらも、なぜか安心感と心地よさを感じていた。


今日初めて会ったばかりなのに、しかも年下の男の子と手をつないでいるだけでこんな気持ちになるなんて。


ほんとにどうかしている。


考え事をしながら歩いていた舞に気づいたのか、優は心配そうな顔をしながら舞の顔を覗き込んだ。


「どうしたの?」


「ううん、なんでもない」


舞は慌てて顔を横に振った。


「そう、それならいいけど……」


そう言うと、優は手を挙げタクシーを止めた。


タクシーの扉が開くと、優は舞を先に乗せ自分も乗込み行き先を運転手に告げた。


「パークアットホテルまで」



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