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新世界での学校経営  作者: MuiMui
第四章 学園編 第一部
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081_魔法使いになりたい ③

 チカヤお嬢様シリーズ、これにて終了です。

 学園長たちと別れたわたくしたちは、元の教室に戻ってきました。その頃にはダルフォ君の顔色も大分良くなり、普通に歩けるまでに回復していたのです。


 先ほどまで一緒だった学園長とバルチ様は先ほど別れ、教室の中にいるのはスカー先生とダルフォ君にわたくしの3名だけです。


「それでは、君たちの測定結果を発表する。まずは教本で大事とされている三大能力値だが、魔力量=100・放出量=10・速度=100が一般的な魔導師の平均値だと思ってくれれば良い。まずは、ダルフォ」

「はい」


「お前は、魔力量=160・放出量=20・速度=100、といった所だな。なかなかの魔力保持量と放出量だ。両親に感謝するんだな。

 魔法の展開速度については今の年なら十分だ。これからの修練次第で、上げていくことが出来るからな。

 お前も両親のように公国の魔法兵になるのが夢らしいが、その可能性は十分にあると思ぞ。

 魔法兵に必要なのは、長距離・高威力魔法をどれだけ撃てるかと言う事だから、素質は十分といえるだろう」

「ありがとうございますっ」


 スカー先生に褒められて、ダルフォ君は嬉しそうです。


「次は、チカヤだ」

「はい」


 とうとう、わたくしの番が来てしまいました。


「チカヤは、魔力量=75・放出量=7・速度=80、だな。魔力保持量はまだしも、放出量が少ないから使用できる魔法に限りがあるだろう。こればっかりは生まれながらの素質だからどうにもならないが。魔法の展開速度もお前の年を考えれば悪くはない。変な癖もないから、これから俺の指導を受ければもっと伸びるだろう。

 お前の夢は魔法使いになりたいとのことだが、俺の眼から見てもお前はすでに魔法使いと名乗っても良いと思うぞ。この後、どの系統の魔法を鍛えるかで方向性が変わるから、相談したいことがあれば遠慮なく言ってこい」

「……ありがとうございます」


 この結果について多少は予想していましたが、ここまで素質がないとは思いませんでした。確かにわたくしの親類に魔法使いはおりませんので、しょうがない結果かもしれませんが……。


 ですが、まだスカー先生のお話は続きがあるようです。


「さてと、ここまでは世間で言われている一般論だが、魔法使いにとって大事なことは他にも幾つかある。これは俺が冒険者として実感してきたことだ。だからチカヤ、そう落ち込むな」


 スカー先生はわたくしに笑いかけながら先ほどの水球を召還しました。そしてそれを宙に浮かべたまま、次々と同じ水球を追加していったのです。


 水球の数が30を超えた頃には、黒板の前は水球だらけになっていました。それをスカー先生は指先1つで3列横隊に並べたり、円形にしたりと自在に操っていきます。その間、壁や机といった障害物や水球同士が接触することもなく完璧に制御したのです。


「俺が召還したのは触っても害のない水球だが、これがさきほどお前たちが使っていた火球だと想像すればどうだ? これだけ数があれば、初歩の魔法と言えども侮れないのが分かるはずだ」


 規則正しく整列していた水球群は旋回しながら上昇し、天井近くまで昇ると弾けて消えてしまいました。


「ここまで言えば分かると思うが、魔導師として大成するのに大切な必要な能力は、魔法の制御力に加え魔力の回復力も重要となる。

 制御力が高ければ同時に複数の魔法が同時に使えるし、回復力が高ければ直ぐに魔力が回復するし魔法の維持も容易になる。

 基本的に魔法の維持に必要な魔力は、魔法の発動に必要な魔力の10分の1程度と言われている。極論を言えば、維持に必要な魔力を魔力の回復力が上回れば、常に魔法を維持し続けることができるようになる。

 例えば、俺が林間学校の時に俺を含む冒険者3人にかけ続けていた姿隠インビジブルの魔法の様にな。もちろん、姿が見えないだけで気配や音は隠せないから、何人かには気がつかれていたようだが」


 そうでしたか。盗賊たちが襲って来た時にスカー先生たちが急に現れたと思いましたが、あれはどこからかやって来たのではなく、最初から側にいて守ってくださっていたのですね。


「これらの能力については、制御力=100、回復力=10、が基本のラインとすれば、ダルフォは、制御力=70、回復力=6、って所だな。

 おそらくだが、ダルフォはより強力な魔法を仕えるようにと、そればかり練習してきたんじゃないのか。それだと魔法を発動させのに精一杯になって複数の魔法を同時に展開させたりは出来ないからな。まあ、魔法兵であれば大きな魔法を発動する機会はあっても、小さい魔法を同時に展開する事はないから気にする事はそれほどないかもしれないが。

 魔力の回復力についても、魔力量が多い者ほど少ない傾向にある。元々魔力が枯渇することなんてほとんどないんだから、回復量が少なくても問題がないんだからな。後は自分の特性を理解した上で魔力量の管理をしていけば良い」

「分かりました。ありがとうございます」


「チカヤの場合は、制御力=140、回復力=15、はある。

 ダルフォとは逆に、魔力量が少ないお前は何とかしてより高度な魔法を使おうと色々試したんじゃないのか。その経験が魔法制御力を高める訓練になっていたと思うぞ。先ほどの実技試験でもなかなかの制御力だったな。特に最後の一撃は良かった。

 魔力量が少ない者は、得てして魔力の回復力は高くなる傾向がある。チカヤは大きな魔法を使うことには向かないが、軽い魔法を同時に使ったり、展開したまま維持するのには向いているな」

「はい、わかりました」


 今までわたくしがしていた事は無駄ではなかったんですね。努力が認められたようで、嬉しく思います。


 大きな魔法は使えないかもしれませんが、わたくしにしか出来ないこともありそうです。


「大きな魔法になればなるほど即座に発動することは出来なくなる。今は良くても、10秒後には使えない場合なんでざらにあるからな。大切なのはイメージだ。いつどのタイミングでどの魔法を使うのか、そのことは常に頭の中に入れておくように」


 わたくしは、今まで魔法を使う際にどのようなシチュエーションであるか考えた事はありませんでした。重要視していたのはどの魔法が使えるかで、どのように使うかは頭の中にありませんでした。


 スカー先生が仰った事は、実際に魔法を生業なりわいとしている方としての重みがありました。


「先生、質問があります」

「ああ、何だ」


 わたくしが先ほどの先生の言葉を反芻はんすうしている前で、ダルフォ君が手を上げました。


「先ほどの模擬試験で、バルチさんの体の回りに湯気のようなものが立ち上っていました。あれは一体なんでしょうか」


 あれはわたくしも気になっていました。動きが激しくなればなるほど、力強く揺らめいていたように思います。


「……そうだな。あれを説明する前に魔法使いのタイプを先に説明しておくか。世間的に魔法使いと言えばお前たちが使った放射系の魔法を使う者のことだと思われているようだが、実は違う。それ以外にも多くの魔法使いがいる」


 そう言うと、スカー先生は教室の隅から椅子を持ってきて腰を下ろしました。長く立ったままお話をしていて、少しお疲れになったのでしょうか。


「補助魔法や防御魔法で仲間の補佐を専門的に行う魔法使いがいる。軍部にも専門の部隊が存在するし、冒険者にもいる。俺もどちらかと言うとそっちに側の魔法使いだな。彼らは俗に、バッファーなどと呼ばれることが多い。

 他にも魔導具を作るのを専門とし、各種の強化魔法を使う者たちは自らを錬金術師と呼ぶが、これも魔法使いの一種だな。

 神殿や治療院には、魔法で傷や病を癒す魔法使いがいる」

「しかし先生、彼らは自らのことを神官と呼んでいますが、彼らも魔法使いなのですか」


「そうだ。厳密には、『光属性の治癒魔法を使う魔法使い』だ。そして、お嬢みたいな特殊なタイプの魔法使いも存在する。

 この世に生きている者は、八十雄さんや『鉄の腕』のようなイレギュラーな存在を除けば、体内を魔力が循環し体を動かす働きを補助している。この魔力を止めたり断たれると体から力が抜けたようになり、最後は呼吸が止まって死んでしまうのは知っているな? 俺たちが限界まで魔法を使うと眩暈めまいや頭痛がして動けなくなるのはそれが理由だ」


『鉄の腕』と呼ばれているのは、ホール山に住んでいる『王』の1人、ドワーフのブラフマ様のことです。あらゆる魔法や刀剣を素手で弾き返し、圧倒的腕力で敵を駆逐するとお聞きしています。


「お嬢は俗に、『殴り魔法使い』と呼ばれる一種だな。己の身体能力や防御力を魔法で高めるだけ高め、後は武器でひたすら殴るっていう魔法使いだ。冒険者にも少数だが存在するが、こいつらは武器の扱いにも慣れているし、身体能力にも優れている奴らが多い。お嬢の場合は無意識に魔法を使っているようだが、天才タイプが多いのも特徴だ。

 あのオーラのように立ち昇っていたのは、体内をめぐる高濃度の魔力から立ち昇ったものだが、なかなか見る機会はないぞ」

「しかし先生、獣人族は魔力が少ない種族と聞いていますが……」


 それはわたくしも聞いたことがあります。獣人族は魔力が少ない種族で、エルフを代表とする妖精族は魔力が多い種族と聞いています。


 バルチ様は獣人族の中の猫人族のはずです。そのようなことがあるのでしょうか……


「俺もこんな事は初めてでなんとも言えないが、事実なのだからしょうがない。人間族の中でも魔力が多い奴もいれば少ない奴もいる。獣人族だってそうした個人差はあっても不思議じゃないしな。

 お嬢の場合は体の中から魔力が湧き水のように吹き上がっていたから、あれならどれだけ魔法を使っても魔力欠乏症にはならないだろう。お嬢が本気で魔導の道を志せば、歴史に名前が残る魔導師になれるだろう」

「そこまで分かっているなら、どうしてバルチさんにそのことを言ってあげないのですか? 魔導師になるのが彼女にとって最も良い道だと思うのですが」


 ダルフォ君はそう言いましたが、わたくしは違った意見でした。たとえ素質があったとしても、本人が望まぬ将来を強制されるのは苦痛でしかありません。わたくしもそうだったかもしれないので、よく分かるのです。


「誘った事はあったんだが、魔導師よりもやりたいことがあるだと断られたよ。まあ、お嬢は女神様に愛されているんだから、何をやっても歴史に名を残すような存在になるさ」


 スカー先生はそう仰いましたが、わたくしはその認識は誤りだと思っていました。何故なら、バルチ様はすでに歴史上に名を残すような存在になっているからです。


 女神様の使途である八十雄様の愛娘であり、女神アルヴェ様に幼い頃より可愛がられ今も愛され続けているバルチ様は、わたくしの国元では『白き聖女様』の愛称で呼ばれ、崇められているのですから。




 その後、わたくしとダルフォ君はそれぞれにあった鍛錬法をスカー先生に教わり、自ら自分の課題を設定し一人前の魔導師となるべく修行を開始したのです。


 今までは発動させたい魔法がどうしても使うことができず迷走していたわたくしですが、もう迷うことはやめました。


 能力的に出来ないことにこだわるのは時間の無駄でしかありません。それでしたら、わたくしの長所である魔法の維持力をさら伸ばし、スカー先生のように複数の魔法を同時展開し、自在に操れるようになりたいのです。


 4つ目の水球を召還し必死に維持するわたくしの前では、ダルフォ君が大きな火球を召還し石垣の前に置いた的めがけて投げつけていました。ダルフォ君は高威力の魔法を緻密にコントロールし、正確に目標に当てることを課題としたようです。


 大きな魔法を使える事は確かに魅力的ですが、他人は他人、わたくしはわたくしです。


 スカー先生が見守る中、わたくしはわたくしの目指す魔導師としての姿を目指し、精進することを誓うのでした。




「今日は1日雨だったが、バルチはどうしていたんだい?」

「バルチはねー、じーじの学校に遊びに行ってたよー。そしてね、魔法の勉強をして、食堂でご飯を食べたりしたっ」


 八十雄の自宅ではすでに夕食が終わり、テーブルの上に置かれたミカンを食べながらマルゴはたたみの上で転がっているバルチに話しかけた。


 八十雄家のコタツは片付けられ、いつの間にかテーブルへと主役の座を明け渡していた。


「魔法はねー、凄いんだよっ。火の玉が出たり、水の玉が出たりするの。フワフワ浮いているんだから」

「あらあら、バルちゃんったら、楽しかったようですね」


 口に手を当て笑うのはアルヴェだ。


 八十雄の家に度々足を運んでいたマルゴがアルヴェと顔を合わすのは必然だったが、2人が出会った当初は八十雄とバルチが引くくらい、マルゴは緊張していたものだ。


 八十雄の家にいる間のアルヴェは、いつもの『のほほんモード』あったが、マルゴが見たことがあるのは外向けの『キリッとモード』しかなかったため、最初はそのギャップに目を白黒させていたらしい。


 今では底抜けにフレンドリーな女神様と、いつもとまったく様子が変わらない八十雄とバルチの影響もあり、『仲の良い友達』くらいの関係に落ち着いている。


 今日も4人で一緒にご飯を食べ、こうして食後のまったりタイムを過ごしているのだった。


「しかし、魔法ってのはいつ見ても凄いな。俺も初めて見た時は腰が抜けるくらい驚いたぞ」


 食後のお茶を配っているのは八十雄である。


 4人はそれぞれ専用の湯飲みやコップを持っており、バルチのコップには猫、マルゴのコップには犬、そしてアルヴェのコップにはウサギの図柄が描かれていた。ちなみに八十雄の湯飲みは、魚編の漢字が沢山書き込まれたお寿司屋さんでよく見るあれである。


「そうだ、八十雄。私もお前の家で食事をよばれるようになってから、体内の魔力が増えたようだ。そのせいか、最近は体の切れも良くなっているように思える。何か特別な材料とか使っているのか?」

「あー、そう言われてもなぁ。飯の材料は近所の農家から買った物や自由市で仕入れた物ばっかりだから、特別な材料なんて使ってねぇぞ」


 ずずっとすするお茶も、街中で普通に買える物で値段もそこそこの一般的な商品だ。


「あら、それでしたら私に心当たりがあります。ちょうど皆さんが口にしているミカンが原因だと思いますよ。神界の果物ですから不思議な力を持っていたとしても、何らおかしくありません」


 ちょうど一房を口にし、あら美味しいと顔をほころばせるアルヴェの横で、お茶をふーふーしながら飲んでいたバルチも、豪快にミカンを口にしている。


 このミカンには病や怪我を癒す効果があるので、重篤じゅうとくな病人や怪我人に与えられたりしているが、残りは孤児院や付近の長屋に御裾分けされたりして、一般には売り出されることはない。


 それは八十雄がどれだけ金を詰まれても頭を縦に振らないためでもある。


 また、引っ切り無しに盗もうとやって来る者たちもギルド会館が雇った凄腕の冒険者や傭兵たちに加え、バルチやマルゴに長屋の住人が目を光らせているため、目的を達成することはできなかった。


 マルゴは手の内にあるミカンをまじまじと見ながら、


「……八十雄、この事は秘密にしておいた方が良いな」

「そうだなぁ。ただでさえ『食べただけで長生きできる奇跡の果実』とか呼ばれて大変なのに、魔力まで増えちまうんじゃどうなるかわからんもんなぁ」


 こそこそと小声で話をする2人の視線の先には、アルヴェと仲良くミカンを食べているバルチがいる。


「はい、お口は綺麗になりましたよ」

「ありがとう、あるちゃんっ」


 アルヴェにミカンの果汁で汚れた口元を拭いてもらいお礼を言っていたバルチは、本日4個目のミカンに手を伸ばすとハグハグと美味しそうに食べ始めるのであった。




 読んで頂き、ありがとうございました。

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