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新世界での学校経営  作者: MuiMui
第四章 学園編 第一部
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078_バルチの1日

 次話以降、学園の生徒1人にスポットを当てた話がメインとなっていきます。

 ちょっと時間的余裕が出来ましたので、長めの内容になっています。

「バルチ、朝だぞ~。そろそろ起きようか」

「んにゃ~」


 お布団をポンポン叩くじーじの声が聞こえてくる。暖かいお布団から顔を出すと、じーじが無精ひげが生えたあごを撫でながら、大きなあくびをしてた。


「じーじ、おはよ~」

「おう。バルチもおはよう」


 シュパッとお布団から抜け出して、寝ていたお布団を畳み、パパッと押入れにしまった。昨日は林間学校から帰ってきて久々のお家のお布団だったから、ちょっと寝坊しちゃった。


「寝巻きを着替えたら朝飯にすっぞ」

「は~い」


 昨日のうちに用意していた服に着替えて、腰には2本のハンマーをくっつける。後は今脱いだばかりの寝巻きを畳めば、これで着替えは終了~。


 そうそう、このハンマーの扱いにも結構慣れてきたから、今度ハンマーをブラフマさんに見てもらう時には、バルチがやっつけちゃうんだからっ。


 ……今は、まだマルちゃんにも勝てないけど、もうちょっとしたら必ず勝っちゃうもんね。


「おーい、バルチ~。もうご飯をよそっちゃうぞ~」

「あ、直ぐ行く~っ」


 ニシシッと笑っていたら、じーじに呼ばれちゃったっ!


 慌てて台所に飛び込むバルチであった。




「バルチ、午前中はどうするの?」

「バルチね~、キノコの仕事と、何か捕まえる仕事を受けようと思ってるよ~」


 今日は学校はお休みだけど、じーじは何か用事があるって言ってたから、午前中はバルチとバラバラで行動なんだよ。バルチもおっきくなったから、ちっちゃい時みたいにいつもじーじと一緒じゃなくても大丈夫なんだよ。


「そっかー、たまには休んでのんびりしてもいいんだぞ? それと午後からの奴、ちゃんと覚えてるかい?」

「大丈夫だよ。お昼になったら冒険者ギルドに戻るよ。忘れてないよ。ちゃんと、じーじと一緒にご飯食べるんだから」


 今日の朝ご飯もバルチの大好きな卵焼きと、野菜炒めと、お豆腐のお味噌汁だ。でも、お豆腐は美味しいのにちょっと不思議なの。バルチがお箸で掴もうとすると簡単に潰れちゃうのに、じーじは上手に掴んでる。


「ん? どしたバルチ、じーじの料理、ちょっと失敗してる?」

「ん~ん~。じーじは凄いなって見てただけー」


「なんだよ~、じーじの何が凄いんだ?」

「ん~、秘密っ!」


 じーじの料理はいつも美味しいんだよ。お魚を焼いたのも、お肉を挟んだサンドイッチも、グラタンっていう熱々のお料理も、全部美味しいんだよ。


 前にじーじが『料理が上手な親の子は、毎日美味しい料理が食べられるから幸せだ』って言ったけど、バルチもそう思うよ。


 だってバルチ、毎日美味しいご飯が食べられて、とっても幸せなんだもん。




「おはよ~」

「はい、バルチちゃん。おはよう」


「お姉ちゃん、おはよ~」

「おはよ、バルチちゃんっ」


 ギルド会館に行く途中、街の人たちに挨拶をするの。そうすると、みんなバルチに挨拶してくれるから、嬉しい気持ちになるんだよ。


 でも、バルチはみんなの名前を知らないのに、みんなはバルチの名前を知っているのがちょっと不思議……。


 お家がたくさんある所を通って、大きい道路を歩いて行くと、大きな公園の向かいにギルド会館があるんだよ。おっきな建物で、三角の屋根がついているから、街の中ならどこにいても見えるんだよ。


「おはよ~」

「はい、おはようございます、バルチちゃん。昨日帰ってきたんですって? みんな寂しがっていましたよ」


 ギルド会館の中に入ると、直ぐ近くにいた受付のお姉さんが笑ってた。


「バルチとじーじはねー、昨日帰ってきたよ。でもバルチ、今日の朝、ちょっと寝坊しちゃったよー」

「あらあら。それでも十分早い時間ですよ。今日もお仕事するんですか?」


「そうだよ。バルチ、キノコのお仕事と、もう1つ何かやろうかなぁ。それじゃ、行ってくるね~」


 お姉さんの声を背中に受けながら、冒険者ギルドでいつものキノコの仕事を請けた後、他の仕事がないか掲示板の前でプラプラするバルチ。身長が低いので、ピョンピョン跳ねながら掲示板を見ているのがかわいらしい。


「よう、バル公。もし余裕があったら捕まえてきて欲しいのがいるんだけど」

「ん~? バルチ、午後からは予定があるから、捕まえられるか分からないよ?」


 話しかけてきたのは冒険者ギルドで働いている頭がピカピカのおじちゃんだ。


 でも、その事はおじちゃんに言っちゃ駄目なんだよ。おじちゃんが頭のことを気にしていたら悲しむから。人が嫌がる事はしちゃ駄目って、じーじが教えてくれたから、バルチはしないんだよ。


「ああ。捕まえられたらでいいんだけどよ。橙キツネを欲しがっているのがいてな。生きている状態で捕まえたいんだよ。そんなことができるのはうちのギルドじゃバル公だけだから、お願いしたいんだ。もちろん、報酬は弾むからさ」

「んー、キノコのお仕事で森に行くから、その時に見つけたら捕まえてくるね」


「ああ。よろしく頼むぞ」


 橙キツネは普通のキツネよりちっちゃいけど、とってもすばしっこいんだよ。地面に穴を掘ってそこに住んでて、直ぐに穴の中に入っちゃうからなかなか捕まえられないの。


 仕事も請けたし、ギルド会館から出たら大通りを通って、近くの森までまっしぐら。


 そうだ、今はね、街の出入り口でギルドカードを見せれば、前みたいにお金を払わなくてよくなったんだよ。じーじがやったんだって。凄いねぇー。




 森に入ったらキノコを探すんだけど、倒れている木とか、おっきい木の根元によく生えているんだよ。バルチが冒険者になりたての頃、じーじに教えてもらったんだよ。


 それとね、キノコは全部取っちゃ駄目なんだよ。3本とか4本とかキノコが生えてたら、1本は残しておかないと駄目なんだって。あとね、ちっちゃいキノコも取っちゃ駄目なんだよ。ちっちゃいのはキノコの子供だから、取ったらかわいそうだよね。


 バルチはね、キノコ集めのお仕事が好きだよ。だって、じーじがキノコ集めのお仕事してなかったら、バルチと出会ってなかったんだもん。


 だからバルチも、キノコ集めのお仕事をよくやるんだよ。もしかしたら、バルチみたいな子がいるかもしれないから。そしたら今度はバルチが助けるんだ。じーじがバルチを助けてくれたように。


 じーじには他にも教えてもらったんだよ。探しているキノコには、良く似た別のキノコがあるんだって。よく見ると、偽物には白い点々がついてるんだけど、それ以外は全部一緒なの。お仕事のキノコと似てるから間違えないようにって教えてもらったよ。


 ……実はね、バルチ、間違ってるキノコと合ってるキノコ、匂いでどっちか分かるんだよ。じーじに言ったら『匂いなんてするか?』って言ってたけど、バルチにははっきり分かるよ。でもね、マルちゃんもノサモ先生も匂いじゃ違いが分からないみたい。不思議だね~。


 キノコ集めが終わったら、バルチのお母さんのお墓に行くんだよ。途中で近くの川から水を汲んで、それでお墓を綺麗にするの。その後、お墓にお花を並べるんだよ。じーじとは、毎月お墓参りの日に一緒に来るんだけど、バルチは森に来た時は毎回来ているの。


 バルチ、ちっちゃかったからお母さんの事を覚えてないけど、綺麗で凄い人なんだって。じーじがそう言ってたよ。


 あとね、お墓の周りにはいつも同じ4人の人がいるの。男の人が3人と女の人が1人だけど、バルチがいつ来てもいるんだよ。いつお家に帰っているんだろうね。


 でも、この人たちは悪い人じゃないみたい。バルチ、悪い人か善い人かは、匂いでなんとなく分かるんだよ。凄いでしょ。


 それでお墓のお掃除が終わったら、街に帰るの。その時に、いつもお墓にいる4人に手を振るの。みんな恥ずかしがり屋さんで隠れてるから、バルチは怖くないよって教えてあげてるんだよ。いつかお話したいな~。




 街に帰る途中、森の中で橙キツネを見つけたのっ! 森の中を気にしているみたいで、バルチに気がついてないみたい。チャンスかも……。


 そ~っと近づいて、シュパッと飛びつき、橙キツネの首元を捕まえちゃったっ! しばらくバタバタ暴れていたけど、ギュッと両手で掴んだら大人しくなったよ。


 バルチ、ギルドのおじさんに橙キツネを捕まえるの頼まれていたから、良かったよ。


 ……でも、袋とか持ってないから、このまま街まで持っていかないと駄目なのかな。バルチ、ちょっと失敗しちゃったかも。


「……キュッ」


 あれ、何かちっちゃな泣き声みたいのが聞こえてきたら、急に橙キツネが暴れだした。ギュッと掴んで声がした方を見たら、ちっちゃい3匹のキツネが木の影からバルチを、ううん、バルチの捕まえている橙キツネを見つめてる。


「キュ~ン、キュ~ン」

「……はい。バルチが捕まえてごめんね。もう捕まっちゃ駄目だよ」


 バルチが捕まえていた橙キツネをそっと放すと、一目散に子ギツネに走りより、バルチの方を1度振り返って見た後に森の中に消えていっちゃった。さっきバルチが捕まえたのはお母さんキツネだったのかなぁ。


 ……いつまで見ててもしょうがないし、ギルド会館に帰ろうっと。


 森の中を鼻歌交じりで風のように走って行くバルチであった。




「えっとね、バルチ、キノコを取って来たよ」

「あら、今日は早いのね。バルちゃん」


 ギルド会館内にある冒険者ギルドの受付カウンターにバルチが戻ると、いつものお姉さんがニコニコ笑っていた。


「今日はね~、この後にじーじと約束があるんだよ~。一緒にご飯を食べに行くの。いいでしょ~」

「へぇ~そうなんだ。バルちゃん、八十雄さんに愛されているわねぇ」


 お姉さんはバルチが渡したキノコを確認しながら、いつも色んなお話をしてくれるの。


「はい、確かに。さすがバルちゃんね。いつも100点満点」

「ありがと~」


 仕事の代金をお姉さんにギルドカードに貯金してもらった時、ピカピカのおじちゃんを発見したっ! さっきのキツネのことを言わなくっちゃ。


「おじちゃん、おじちゃんっ」

「お、どうしたバル公? 今日はもう帰りか?」


「うん。じーじと約束があるから今日はちょっと早めだよ。

 あ、バルチが言いたいのは、橙キツネのことなんだよ。バルチ、橙キツネを捕まえたんだけど逃がしちゃって、ごめんなさい」


 ペコリとバルチが頭を下げると、おじさんや受付のお姉さんも目を丸くしてた。


「いや、できたらって話だったから捕まえられなくてもいいんだけど、1度捕まえたのに逃がすなんて珍しいじゃないか」

「逃げられたんじゃないよ。バルチが逃がしたんだよ。だって、バルチが橙キツネを捕まえたら、ちっちゃい子ギツネが3匹も泣いてたんだよ。バルチが捕まえたの、お母さんキツネだったんだよ。バルチがお母さんキツネを捕まえたら、ちっちゃい子ギツネは死んじゃうよ。

 バルチだって、じーじが急にいなくなったら困るもん。だから逃がしたんだよ。だから、ごめんなさい、なんだよ」


「……ほんと、バルちゃんは優しい子ね」

「ああ。うちのバカ倅にも聞かせてやりたいな」


「だけどギルドマスター、バルチゃんが言うとおり、繁殖期の狩猟依頼は控えた方がいいかもしれませんね」

「……確かにな。資源保護の観点からも一考の価値がある」


 受付のお姉さんとおじさんが何か話しているけど、難しい話でバルチには分からなかったよ。


 おじさんは大きく頷くと、バルチに目線を合わせて膝をついた。


「バル公、橙キツネの事は気にしなくていいぞ。ギルドも依頼を取り消しておくし、キツネが狩られることがないようにしとくから。

 そうだな、今度、繁殖期の野生動物保護を評議会の議題にしとくから、後はおじちゃんに任せとけ。こう見えても、おじちゃんもそれなりに力はあるんだからな。まあ、バル公のところの八十雄さんには負けるけどよっ」

「さあ、バルちゃんも疲れたでしょ。これでも飲んで一息入れて」


「ありがと~」


 お姉さんがコップにジュースを入れて持ってきてくれた。ギルド会館内にはご飯が食べれるようなところがあって、今日はじーじとそこで待ち合わせしているの。


 お姉さんもそこでジュースを貰ってきてくれたみたい。コップからはリンゴの甘い匂いがした。


「お姉さん、頂きます」

「どうぞ、どうぞ。ホント、バルちゃんは礼儀正しいわね」


 休憩用の椅子に座ってジュースをゴクリ。森の中でちょっと走ったので、実はのどが渇いていたの。


「ごちそうさまでした~」


 おっきいコップ一杯のジュースを一気に飲み干し、コップを流しで洗ってからお姉さんに返すと、お姉さんはちょっと驚いてたみたい。


「バルちゃんはいつも礼儀正しくていい子だけど、コップまで洗わなくてもいいのよ?」

「でも、じーじと約束したから。バルチ、大丈夫だよ」


 そろそろじーじと約束の時間だけど、まだ来ないみたい。ちょっとお腹が減ったかも、


「バルちゃん、八十雄さんとどんな約束しているの?」

「ん~、じーじとはねぇ、バルチがちっちゃい時に約束したんだよ。

 じーじはね、バルチにね、『【特別】なことが出来なくってもいいけど、【普通】のことは出来るように頑張ろうな』って言ったんだよ。だからバルチ、あいさつでしょ~、お掃除でしょ~、それに後片付けもちゃんとやるんだよ。

 だって、これはみんな普通のことなんだもん。誰にだって出来ることをやってるだけで、バルチ、凄くないでしょ?」


 お姉さんもピカピカのおじちゃんも、感心した顔をしている。でもね、バルチは普通のことをしているだけなのに、おかしいの。


「俺、自分のガキには『強くなれ』や『偉くなれ』しか言ってなかったな。それに比べて八十雄さんはスゲェよ。俺には真似できねえな」

「八十雄さんだけが凄いんじゃないわ。バルちゃんが八十雄さんの言葉をしっかり守っているのが凄いのよ」


 あ、じーじがギルド会館に入ってきた。おじさんとお姉ちゃんはまだお話していたから、「じゃあね」って一言かけてから、じーじに向かって走っていった。


「よう、バルチ。ちょっと待たせちゃったかな?」

「バルチ、来たばかりだから大丈夫だよ~。でも、ちょっとお腹空いたかも」


 じーじの顔を見たら安心したみたい。急にお腹が『く~、く~』鳴っちゃった。


「それじゃ、じーじとご飯を食べに行こうな~。バルチ、何か食べたいものあるかい?」

「バルチね~、じーじと一緒なら何でもいいよ~」


 だって、バルチはじーじと一緒なら何でも美味しいんだもん。じーじがいてくれたら、他には何もいらないよ。




「出崎バルチ殿」

「はいっ」


 じーじとご飯を食べた後、ギルド会館にある一番偉い人の部屋に行ったんだよ。そこにはじーじと、ピカピカのおじちゃんと、眉毛の長いおじいちゃんがいるたんだよ。眉毛のおじいちゃんはギルド館長なんだって。凄いね~。


 ここにはじーじもいるし、ピカピカのおじちゃんも知ってるし、眉毛のおじいちゃんも優しそうだから、ちょっとホッとしたの。知らない人ばかりだと、バルチ、緊張しちゃうんだもん。


 ……でも、眉毛のおじいちゃん、ちょっと猫人族の長老様に似ているかも。なんか、おかしくなっちゃった。


「バルチ、前、前」

「あっ、は~い」


 ニコニコ笑っているおじいちゃんの前まで進むと、ピッと気をつけっ、をした。


「バルチちゃん、街のみんなが困っていた盗賊を捕まえてくれてありがとう」

「おじいちゃん、ありがとう~。バルチ、嬉しい」


 おじいちゃんがバルチに大きな賞状をくれたの。バルチ、初めてだから嬉しかったよ。でも、盗賊さんを沢山倒したのは3人の冒険者さんだったけど、大丈夫かな?


「でもバルチ、盗賊さんは1人しか倒してないよ? 3人の冒険者さんが沢山倒したんだよ?」

「いいんだよ、バルチ。あの3人は面倒くさいから賞状とかいらないんだってさ。それに盗賊で一番偉いのを倒したのはバルチなんだから、もっと自慢してもいいんだぞ?」


 ピカピカのおじちゃんと何か話をしていたじーじが、バルチの頭を撫でながら教えてくれた。


 バルチ、よく分からないけど、じーじがいいって言うなら、いいのかな?


「バルチちゃん、これからも貴方らしく頑張って下さいね」

「は~い」


 最後におじいちゃんにお返事して、じーじと手を繋いで一緒にお部屋を出たの。




 今日の予定は全部終わったので、賞状を入れる額縁を買いに行った後に、自由市でお買い物をしてからお家に帰ったよ。


 自由市は広場や大通りにみんなが自由にお店を出して良い日のことだよ。大通りは服とか日用品のお店があって、中央公園は食べ物屋さんや露天が集まっているんだよ。


 バルチが朝ギルド会館に行く時はまだお店はなかったけど、森で仕事をしているうちにみんな準備をしてたんだね。色々な物が売ってて、今では遠くから自由市を見に来るお客さんもいるんだって。


 じーじはね、学校で勉強している子供たちが計算とか、文字とかが読めるようになれば、今まで計算が出来なくてお店が出来なかった農家の人も市場にお店を出せるようになるんだって言ってた。そうすれば、今よりみんな幸せになるかもしれないって。お仕事も色々出来るようになるって。


 バルチも人間族の文字が読めるようになって嬉しかったもん。看板とか絵本とか、これまで読めなかったのが読めるようになるんだから凄いよね。


 ……でもね、じーじと内緒の話をする時は獣人族の言葉を使うんだよ。そうすると誰にも秘密でお話できちゃうんだから。


「今日はえらくご機嫌だな、バルチ」

「バルチ、今日もご機嫌だよ。だって、じーじと一緒なんだもん~」


 本当は手をブンブン振りながら歩きたいけど、自由市の日は大勢人がいるから迷惑になっちゃうからね、じーじにピトッとくっついて歩くんだよ。


 ……それも良いかも。


 その後は八十雄が食材を買い集め自宅に戻るまで、バルチは八十雄にくっついたまま離れることはなかった。




 バルチが始めてもらった賞状は額縁に納められて、居間に飾られることになったよ。丁度、バルチが自分の席に座った時、正面に見えるようになってるの。


 今日のご飯はカレーうどんだよ。最近は毎日夕ご飯を食べに来るアルちゃんが一番好きなお料理なの。林間学校にじーじとバルチが行っててアルちゃんとは久しぶりだから、アルちゃんの大好きなお料理にしたの。


 実はね、バルチ、お料理が苦手なの。野菜の皮むきとか、ズバッて身の方まで切れちゃうの。じーじは『苦手なことがある位の方が可愛い』って言ってくれたけどいつかはお料理できるようになりたいから、密(ひそ)かにアルちゃんと練習中なの。


 アルちゃんもお料理苦手なんだって。でも、1人で練習するより2人で練習する方が楽しいから良かったよ。


 じーじのカレーうどんを、じーじとバルチとアルちゃんと一緒に食べて、デザートにみかんも食べるのが日課なんだよ。アルちゃんのみかんはね、凄いんだよ。いつでも花が咲いているし、いつでも実が生(な)るんだよ。


 あるちゃんに『どうして、いつでもみかんができるの?』って聞いたら、『八十雄さんが頑張っているからですよ』って言ってたけど、じーじが頑張るとみかんができるのってちょっと変だよね?


 みかんを食べ終わったら、今日一日にあったことや明日の予定を話すんだよ。森の中のこととか、ギルド会館のこととか、賞状貰ったこととか。じーじとバルチが話している間、アルちゃんは『ウンウン』って話を聞いてくれるんだよ。


 ふぁ~、バルチ、眠くなってきちゃった。じーじは大人でバルチはまだちっちゃいから、直ぐ眠くなっちゃうの。そしたら顔を洗ってパジャマに着替えて、お布団を引いたらじーじにあいさつして……。


「じーじ、バルチ、眠くなっちゃったから先に寝るね。おやすみなさいー」

「おう。お休み、バルチ。じーじも、もうちょっとしたら寝るからな」


 明日の着替えを用意したらお布団の中で寝ちゃうの。今日も一日、楽しかったな~。




「ん~っ」

「バルチ、おはよう」


 翌朝、何かの気配がして目が覚めると、丁度じーじが起きるところだった。


「じーじ、おはよう~」

「よーし、今日も一日頑張るか」


 パッと起きだし、お布団を畳んで押入れにしまうの。お布団を敷いたり畳んだりするのはバルチのお仕事なんだよ。


 その後はパジャマを脱いで、用意していた服に着替えて……。


「……っ! じーじっ!」

「おっ、見つかっちゃったか」


 バルチが用意していた服の上に、木で作られたキツネの親子の人形が置いてあった。おっきいキツネが1匹とちっちゃいキツネが3匹で、オレンジ色に塗られている。


 じーじはいたずらが見つかった子供のような顔で笑っていた。


 今日も一日、凄く良い日になりそう。


 バルチはキツネの人形を抱えながら、嬉しそうに八十雄に飛びついた。





 読んで頂き、ありがとうございました。

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