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新世界での学校経営  作者: MuiMui
第一章 異世界転移編
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002_転移の準備は必要ですか

よろしくお願いします。

 アルヴェは、自分史上かつて無いくらい動揺していた。


 何で自分の【世界】が選ばれたのか、心底分からなかった。


 目の前の主神様がおっしゃられたように、この空間では真実しか語ることは出来ない。


 始めから選ばれると思っていなかったので、自分の管理する【世界】の現状を包み隠さず説明したのだ。


 他の高位【管理者】は、彼女の話を最初から聞く気もなく、八十雄も聞いてくれないかと思うと相手の顔を見て話す勇気が無かった。


 話しているうちに、自分の【世界】に何にも無いことに気が付いて、段々、悲しくなってしまい、よく分からないことを主張してしまった。


 いつの間にか、八十雄がアルヴェが管理する【世界】ラ・ワールドに転生すると言い出していた。


 どうしたら良いのか、どうしなければいけないのか、オロオロとプチパニックに陥るアルヴェ。


「アルヴェさん、これでも飲んで落ち着きなさい」


 主神様が提出した湯飲みを受け取り、一息に飲み干した。何を飲んだのか味は分からなかったが、何とか、一息ついた形だ。


「まずは、貴方の管理する【世界】の説明をお願いします」

「ひゃっ、ひゃいっ!!!」


 噛み噛みになりながらも、説明を始めるアルヴェであった。




 ――1時間後。


「よし、じゃあ今から俺が聞いた話を要約して言うから、間違っていたら教えてくれよな」

「はいっ!」


 八十雄は、色々と書き込まれたメモを眺めながら口を開いた。ちなみに、メモは鈴木が用意してくれた。




・【世界】の名前は、ラ・ワールド。

・三大国と呼ばれる大国と幾つかの小国、それに、森の民が暮らす神護の森がある。

・文明レベルは、地球の中世程度。

・魔法が存在する。

・人族と呼ばれる中には人間の他に、妖精族(エルフやドワーフ等)、獣人族(猫人、狼人等)や、それ以外の少数種族がいるが、種族間の仲は、一部の例外を除いてよくない。

・各種族の平均寿命はまちまちで、人間の平均寿命は60歳程度。中には1000年以上生きる種族もいる。

・【世界】から贈られる特殊スキル【ギフト】を生まれながらに持つ者もいる。

・現在、戦争は起きていないが、いつ起きてもおかしくない状態。




「と、こんな感じかな」

「ひゃっ、ひゃいっ」


 アルヴェは直立不動の姿勢で回答した。


「まあ、選んだのは俺だけど、スリリングな【世界】みたいだなぁ……」

「すみません……」


「戦争ってあれか、マジでガンガン殺しあう感じか」

「その通りです……」


「止めようって思ってるんだろ。何とか止める方法があるんじゃないか」

「私のランクが低すぎて、ほとんど干渉が出来ないんです…… 【神託】のギフト持ちに一言、二言メッセージを送るのが精精で、それをやると【世界】に干渉したせいでまたランクが下がってしまって…… その悪循環で、もう、どうすることも出来ないんです」


「つんでるなぁ……」

「す、すみましぇんっ!」


「……鈴木さん、一つ教えて貰いたいんだけど」 

「はい、何でしょうか」


「他の【世界】はこういった場合、どうしてるんですか?」


 フム、とどこから取り出したのか、ティーカップを取り出し口をつけた。漂う香りから紅茶のようだ。


「前提条件ですが、ほとんどの場合、こうした事態に陥ることはまずありません」

「ほとんどないのか。それはまた、どうして」


「最初は人口の増加や種族の交流、異種族間の争い、特定の技術の開発等、もっとハードルの低い【世界条件】を設定します。

【世界条件】をクリアするごとに【管理者】としての功績は認められ、ランクは上がっていきます。

 そのため、ほぼすべての【管理者】は、自分の目指す【世界】になるように、徐々に【世界条件】のハードルを上げつつ、同時にランクも上げていきます。

 ですのでアルヴェさんの様に、様々な種族や考えの違う民族溢れる世界で、いきなり難度の高い【世界の平等】を最初の目標に掲げる【管理者】の方は、まずいないと言って宜しいでしょう」


 紅茶を一口、口を湿らす。


「一度設定した【世界条件】は覆すことが出来ません。そして、この状態から脱却する方法は、2つしかないでしょう」

「2つ、あるんですかい?」


「はい、あります。1つは、管理する【世界】を破壊することです。生命、大地、歴史、文化、そういったものをすべてを破壊し、新しく一から作り直すのです」


 その話を黙って聞いていたラ・ワールドの【管理者】は、ビクリと体を震わせた。


「対象の【世界】の【管理者】しか行うことは出来ませんが、たいした労力もかからず【世界】は作り直すことが出来ます。

【世界設定】も新しく決めなおすことが出来ますし、一番簡単な方法でしょう」

「なるほど……」


 八十雄にとっても、頭では理解できたが、納得しかねる内容だった。

 つい先日まで、毎日汗水たらして働いていたのが、【管理者】と呼ばれる者達の手のひらの上で、【管理者】達の得点稼ぎのためにやっていたことではないのかと、疑問が湧き上がってきたのだ。


 ちょっとでも気に入らなければ、リセットしやり直される。当の本人が知らない所で行われている【世界】の真実に、めまいがする思いだ。


(できればこんな事、知りたくなかったなぁ)


 無意識で大きなため息が出る。


「そして、もう1つの方法ですが、【管理者】の意図を汲んだ使徒を送り込む方法です」

「使徒、ですかい?」

「はい」


 ゆっくりと頷き、鈴木は八十雄を見つめる。


「最初の方法に比べて即効性も、確実性もありません。ですが、【世界】に与える影響は最小限に抑えることができます。

 方法は簡単です。【管理者】の意図を汲んだ者を【世界】に送り込み【世界】の中から変えて貰うのです。

【世界】が【世界目標】に近づくほど【管理者】のランクは上昇し、影響力も増加するでしょう。

 出崎さんは元々が【稀人】ですから、自分の【世界】に招待するだけでランクは上がって行きます。

 更に、その出崎さんが使徒になれば、相乗効果でより効果は高まるでしょう」

 

「よし、分かった。じゃ、俺、その使徒とやらになるわ」


 それを聞いて、今まで黙っていたアルヴェが、はわはわと慌てだした。


「し、使徒になるなんて簡単に決めちゃダメですよっ。

 色々とトラブルに巻き込まれるかもしれないし、平和に暮らしたいんでしたらお勧めできません。

 使徒という立場を狙われて、利用されるかもしれません。

 何より、私みたいに力が無い【管理者】の使徒になっても、何のメリットもありませんし……」


 最後は消え入るような声であったが、アルヴェは必死だった。


「八十雄さんはもっと自由に生きても良いと思います。

 大きな王国の世継ぎでも、神護の森の貴種に生まれて長い寿命を選ぶこともできるんです。

 使徒となる必要なんて……」


「まあ、そう言うなよ。じょうちゃん。俺は死んじまったこの人生も満足してるし、楽しかったと思ってる。

 気の良い仲間もいたし、後悔なんてこれっぽっちもねえぜ。自由、平等、結構じゃねぇか。誰もが認められる【世界】にしたいんだろう? だったら俺が手伝ってやるよ」


「でも、でも……」

「まあまあ、アルヴェさん、宜しいではないですか。本人が良いと言っているのです。好きに選ばせてあげましょう」

「じゃ、そう言う事で」


【管理者】を除いて話が進んでいく……。


「他にも幾つか決めなくてはいけないことがあります。

 使徒と言う事ですから【神託】のギフトは必須ですが、それ以外で望む能力はあるでしょうか。

 誰よりも強い力でも、強大な軍勢を1人で滅ぼせる魔力でも、希望があれば仰って下さい。

 【使徒】の場合、生まれだけは平民階級から動かすことはできませんが、それ以外でしたら可能な限りのご要望に応じましょう」


「マジか、いたせりつくせりだなぁ」


 すげーな、やばいなと連呼している八十雄。


「決めた。やっぱおれ、何も要らないわ。【神託】って奴は必須みたいだけど、それ以外は必要ないよ。

 そんかし、1つ、お願いがあんだけど」

「はい、何でしょうか」

「……」


 驚きで、声も出ないアルヴェと平常運転の鈴木。


「出来ればなんだけど、今のままって奴はだめかな。

 38歳のたいしたとりえの無えおっさんだけどよ、結構、気に入ってんだよね。今の体。駄目かい?」

「え、でも……」


「はい、承知しました」

「えぇ~~っ!!!」


 こうして【管理者】を除き、話はとんとん拍子に進んでいったのだった。




2015 1/3 行間を統一するため、修正を実施


2015 1/23 下記の通り修正を実施

  自分至上かつて無いくらい → 自分史上かつて無いくらい

  つんでるなぁ……・・ → つんでるなぁ……

  アルヴェさんの様に、様々な → アルヴェさんのように、様々な

  ご要望にお答えしましょう → ご要望に応じましょう

  話しはとんとん拍子に進んで → 話はとんとん拍子に進んで

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