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竜の守り人  作者: 夏空夏色
第一章 波乱の幕開け
6/6

訪れた異変

書いてみたら全然R-15ではありませんでした。笑

5 訪れた異変



 アリシアは窓を開けた。澄んだ空気がひんやりと頬に伝わる。


(―よし、行こう。)


 荷物をまとめて階段を降りる。

 足音に気づいたのか母親がロビーから顔を出した。


「おはよう。よく寝られたかしら?」

「はい。おかげさまで。」


 昨日の夕食はルイス家族にご馳走してもらい、とても美味しい家庭料理をお腹いっぱいいただいた。途中からは、他の宿泊客たちも交じって非常に楽しい時間を過ごした。


「出かけるの?」

「今日は用事があるんです。」

 母さんを見つけるための手がかりになるかもしれない、大事な用事―


「おい、おまえがもう新聞とったのか?」

 その声と共に、父親がドアから姿を現した。


「いいえ。まだ一歩も外に出ていないけれど。」


「あれ?おかしいな。新聞がポストに入っていないんだが。」

「それは変ね。配達員がこの時間に届けていないなんて。」

 両親は首をかしげた。

 新聞は大体七時頃までには各家に届いているはずだった。


「今日は天気もいいから遅れる理由はないと思うんだがなぁ。」

「まあ、そういう日もあるっていうことでしょ。ルイスを起こしてきてちょうだい。」

 父親は、はいはいと二つ返事をしてロビーの奥へ向かった。


 入れ違いでアリシアもドアに手を掛ける。

「いってらっしゃい。」


 アリシアは眠そうにあくびをする母親に会釈すると、外に出た。

 通りには散歩をしている人や店を開けようとしている人でにぎやかだった。


(朝からこんなにたくさんの人がいるなんて。アザレアに居たときは誰にも会わなかったのに・・・・・。さすが首都だ。)


 かつては、いつも朝に母さんと魔法の練習をしたものだった。ひっそりと誰もいないその時間はアリシアにとって、一番好きな時間へと変わっていった。



「―あら?おたくも?」

 花屋の店主が犬を連れた通行人と話している。

「新聞が来ないなんて珍しいわぁ。」


「・・・・・噂で聞いたのだけれど、新聞配達員が殺されていたって。」


「ええっ?まぁ、本当に?」

「詳しいことは知らないけどね。怖いわぁ。」

 アリシアは立ち聞きしたことを後悔した。


(ルピナスってそんなに物騒な場所なんだ・・・・・。)

 何となく心細くなって歩く速度を速める。昨日と同じ通りを辿って、目的の中央司令所に着いた。


 どうやって中に入ろうかと右往左往していると、門番兵がその行動を怪しく思ったらしく、アリシアを睨んだ。


「おい、貴様!ここに何用か!」

「・・・・・す、すみませんっ!」



「―なぜ謝る?もっと堂々としていたまえ。」


「―は、はっ!今お戻りで!」

 門番兵が敬礼した先には、書類を脇に抱えたリアム大佐がいた。ちょうど今、出先から戻って来たらしい。


「この子は私の客人だ。通せ。」

「も、申し訳ありません!どうぞ!」


 門番兵はいそいそと道を開けた。

 アリシアはリアムの後ろについて中に入る。


「リアム大佐、おはようございます!」

「ああ、おはよう。」


「朝からお疲れ様です!」

「ありがとう。」


 長い廊下を歩き始めるや否や、軍人たちがリアムに声をかける。

 リアムは終始キリッとした顔で応対すると、アリシアを前と同じ部屋に連れた。


「アリシアちゃん、と・・・・・大佐。」

 金髪の少尉、レナードが先に部屋にいた。


「何だ、そのテンションの差は。」

 呆れながらリアムがドアを閉める。


「おはよう、アリシアちゃん。朝から悪いッスね。」

「・・・・・ガン無視か。」

「大丈夫です。私、朝好きなので早起きが得意なんです。」


 アリシアの発言を聞き、レナードが冷たい視線を送る。

その相手はもちろん、リアムだ。

「大佐もアリシアちゃんを見習って下さいッス。」

「・・・・・私は朝が苦手なんだ。睡眠が一番の至福の時間だ。」


 リアムが気怠そうにソファーに座った。いや、ほとんど寝そべったと言っていいだろう。


「―なのに!今日は早朝に事件が起きて、緊急出勤!睡眠時間が皆無に等しい!もっと私を労われ・・・・・!」

 大分疲れた様子でぐったりとしている。先ほどまでのキリッとして廊下を歩く様子は全く感じられない。


「・・・・・こんなヘタレ大佐をみんなに見せてやりたいですよ。」

「ああ、もう動きたくない。レナード少尉、コーヒーを頼む。」


「他の同僚にリアム大佐の部下なんて羨ましい、って言われる俺たちの気持ちを考えて下さいッス。・・・・・とびきり薄いコーヒーをお待ち願いますよ。」

 レナードの嫌味が終わると、リアムは渋々起き上がる。


(部下にヘタレって言われるのはどうなのかな・・・・・。少し思っていた感じとは違うみたいだけれど。)

 そして、呆気にとられるアリシアを向かいのソファーに座らせた。


「―醜いところを見せて申し訳ない。なんせ朝が苦手なもので。」

「い、いえ・・・・・。早くからお忙しいみたいですね。わざわざお時間を割いてもらって、こちらこそすみません。」

「事件は急に起きるもの。お気になさらず。」


 アリシアはふと町で聞いた噂を思い出した。

「―新聞配達員が殺されたという事件ですか?」


「・・・・・その話は誰から聞いた?」

 リアムの声が低くなった。

 通常運転に戻ったらしい。漆黒の瞳の奥に強い光が宿っている。


「街で、人々が噂をしていました。」

「―そうか。叔母様方の噂好きも問題だな。」

「真実なんですか?」


 アリシアが尋ねると、リアムは少し考え込む。

「・・・・・まあ、明日には知れ渡るだろうから教えても構わないか。」

 あまり広めるなよ、と口に手を当てた。


「今日の早朝に配達員が何者かによって殺されているのを発見した。頭と首が離れた状態でな。」


「頭と、首が、離れた状態・・・・・。」


「つまり、こうだ。」

 リアムが手で首を切る真似をした。

「そ、そんな無惨な死に方を・・・・・。」


「恐ろしい殺人鬼がいるんだ。早く母親を見つけて故郷に帰るのだな。」


 そこへ、コーヒーを持ったレナードが現れた。香りがあまりしないコーヒーが目の前に置かれる。



「―では、母親探しの話をしようか。」


「・・・・・お願いします。」

 アリシアは深く頷いた。


「まず、母親の消息が絶ったのはいつかね?」

「―七年前です。」


「・・・・・七年前、か。ロータスの戦いが一番厳しかったときか。」


 ―ロータスの戦い。


 ピアニー国と隣接する、ロータス国と勃発した国際戦争。ロータスが豊富に持つ魔法の資源を巡って五年にもわたる激しい武力衝突が行われた。


 最終的に、本来人々を豊かにする魔法を凶器として利用したピアニー国が勝利した。


 今はピアニー国の管轄下にあるロータスだが、他国も資源を狙っているという状況である。


「それまで母さんと二人静かに、アザレアに住んでいました。」


「父親は?」

「早くに他界しました。―そういえば、父さんは軍で働いていたそうです。」


 体が弱かったけれど、この国のために働いていた。と、言っていた。


「それは七年前よりも昔ということか?ならば、私がまだ訓練生であったときに勤めていらっしゃったのだな。」

(―この人、七年で訓練生から大佐まで昇りつめたのか。それって、すごいスピード昇格じゃ・・・・・。)


「それで、最後に別れたのはどういう状況で?」

 アリシアは質問の続きに答える。


「・・・・・最後は、雨の強い早朝でした。母さんは理由を告げずに、軍の車に乗り込んで―それきりです。」


「―軍の車?軍人に連れて行かれたのか?」

 リアムは眉間に皺を寄せた。


「はい。何の抵抗もしていませんでした。迎えに来るって分かっていたのかもしれません。」


「本当に軍の人間が母親を?見間違いではないのか?」

 ずっと昔の記憶だが、今でも鮮明に思い出せる。緑の服を着た男たちは、間違いなく軍人だった。


「―あ!列車ジャックの元軍人が、母さんを連れて行った張本人です!」

「なんだって?なら、あいつらに聞けば早いかもしれない。」

「でも、私が聞いても何も知らない、と。」


「もう一度ゆっくりと話した方がいいだろう。後で面会をしよう。」


 他に何かあるか、との問いに首を振った。本当に自分が分かるのはこれだけだ。


「最後に母親の名前を教えてくれないか?」


「―・・・・・シンシア=ディズリー。」


 リアムは持っていた書類にメモを取った。

「辛いことを思い出させて悪かった。面会の準備をしてくるから、その間に図書館に行ってくるといい。地下にあるぞ。」


 中央司令所には公共の図書館があると聞いたことがある。

「あ、ありがとうございます。」


「おっと、こいつを忘れてはいけなかった。このカードを持っていきたまえ。」

 リアムが手渡したのは、サインの入った緑の小さなカードだった。


「これを受付で渡せば、軍の人間しか見られない特殊な書物まで見ることができる。何か参考にあるものがあったら読むといい。」


 コーヒーを一気に飲み干すと、リアムはレナードを連れて部屋を後にした。


(―親切な軍人さん、だ。)

 アリシアはその姿を見送った。


 もちろん、リアムがある疑問を抱いていることなど知らずに。




次からはまだ名前しかでていない美人お茶係兼、中尉さんが出てきます!

お楽しみに!

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