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『悪いことしちゃったかな?……」
絵里は罪悪感に苛まれながら、家に帰った。
いつものように絵里は一人で食事を取り、部屋で
勉強を済ませると何気にパソコンの電源を入れた。
すると、絵里のメールボックスに一通のメールが届いていた。
「あれ?さゆみかな?……」
絵里がそのメールを開くとそれはさっき、渋谷駅で
逢った真人からだった。
「はじめまして! 真人と言います!
先ほどはごめんなさい……」
絵里に対しての誤りのメールだった。
「真人?だれ?……」
絵里は直ぐには真人のことがわからなかったが
暫くして、渋谷駅で逢った背広を着たサラリーマン風の
男のことを思い出した。
「ああぁ…… あの駅の男の人……
こちらこそ、悪いことしてごめんなさい!」
絵里もパソコンの前で真人が送ってきたメールの
文面に誤った。
「あれ? わたし、何をやっているんだろう?」
絵里はハッと我に返った。
「私こそ、ごめんなさい……」
絵里は真人にメールを返信した。
絵里は何度か、真人とメールのやり取りをするうちに
真人の屈託のない優しさに触れ、自分の寂しさを
埋めるかのように
「また逢いませんか?……」
真人にメールを送った。
絵里が真人にそのメールを送って以来、
絵里のメールボックスに真人のメールが届かなくなった。
『あれ? どうしたんだろう?……』
『わたし、嫌われたのかな?……』
絵里が真人からメールが来ないことに不安に
思っていると数日後に突然、絵里のメールボックスに
真人からメールが届いていた。
絵里が喜んで真人からのメールを開くと
「ごめんね! メールを送れなくて…… 忙しくて……
メールの件だけど…… 金曜日の夜なら良いですよ!」
と書かれてあった。
絵里は目の前に壁にかけているカレンダーを
見詰めながら
『金曜日の夜か?…… どうしよう?……』
と考えたがまた真人と逢いたかった絵里は
「OKです! 何処で待っていれば、良いですか?」
真人に返信のメールを送った。
「始めて逢った渋谷駅で待っていて!……」
真人から直ぐに絵里のメールボックスにメールが届いた。
金曜日に絵里は学校の制服姿のまま、真人と待ち合わせをした
渋谷駅に向かった。
絵里が制服姿のまま、渋谷駅の前で真人のことを待っていると
「ねぇ、俺達と一緒に遊ばない?……」
「お嬢ちゃん、いくら?……」
などとしつこく、声を掛けられた。
「いや…… 人と待ち合わせているので……」
絵里は嫌な顔をしながら、声をかけて来る者達の誘いを
全て断った。
だが、中々、真人が来ない事に絵里は少し不安になっていた。
すると、息を切らしながら、真人が
「ごめん、ごめん…… 遅れちゃって……」
絵里の前に現れた。
「いえ。私も今、来たところですから……」
絵里は安堵の表情を浮かべながら、真人にそう嘘を言った。
「そう…… あれ? その格好で来ちゃったの?……」
息を整えながら、制服姿の絵里を見て、真人は驚いた。
「ご、ごめんなさい…… あまり、こんな時に着る服を
持っていなくて……」
学校の制服姿の絵里は恥ずかしそうに真人に謝った。
真人は少し困った顔で
「うんん…… 別に良いんだけど…… じゃあ。」
というと絵里の手を掴み、走り出した。
真人は絵里の手を掴んだ瞬間、冷たい絵里の手に絵里が
ずっと待っていたことに気付いた。




