19
絵里は東京に戻る新幹線の中で
『真人とずっと、一緒にいたい!』
と強く思い、
『話したい事があるんだ!……』
琢己に持っていた携帯電話からメールを送った。
東京に戻った絵里はすぐに琢己とあった。
琢己は絵里が全てを知った事など、知らずに
いつものように
「どうしたの?急に話したい事があるなんて……」
絵里に話しかけてきた。
絵里は思い詰めた表情で俯いたまま、
「私…… 好きな人が出来たの……
だから、もう…… 貴方とは逢えないわ……」
琢己に言った。
それを訊いた琢己は途端に表情を変え、
「だ、誰なんだよ…… そいつは……」
と言い、絵里に詰め寄った。
「ご、ごめん……」
絵里は琢己から顔を背けた。
琢己は切なそうな絵里の表情から絵里が好きなのが
真人と悟った。
「好きなのは真人だろう…… 絶対に許さないから……
絵里は僕のものだから……」
琢己は強く、絵里に詰め寄った。
「やめて!……」
絵里が嫌そうに琢己のもとから逃げ出そうとすると
琢己の後ろから
「お兄ちゃん。もうやめなよ!……」
美保の声が聴こえてきた。
琢己の後をこっそりと付いて来た美保は琢己を
絵里から優しく引き離すと
「私達のもう負けのだから彼らを自由にして
あげましょう?……」
琢己に言った。
琢己は涙を溢れさせながら
「で、でも…… 本当に彼女のことが好きなんだ……」
美保に言った。
美保も悲しげな表情を浮かべながら
「うん…… わかるけど、彼女は他の人が好きなの……
私らは諦めましょう?」
琢己に言うと溢れ出す涙を堪え、絵里の事を見詰めた。
絵里はやっと真人と堂々と付き合えると思い、
真人の妹の茜のお土産を持って、茜が入院している
病院へと急いだ。
絵里が急いで茜の病室に向かうと茜の病室の前で
真人が心配そうな顔で立ち尽くしていた。
絵里は訳がわからず、
「どうしたの?…… 何があったの?」
茜の病室の前に立ち尽くしている真人に訊いた。
「あ、茜の病状が突然、悪化したのだ」
真人は今にも泣き出しそうな表情で絵里に言った。
絵里は茜のお土産を落とし、
「う、うそでしょう?…… あんな元気だった
茜ちゃんが…… どうして?……」
真人に言った。
「わ、わかんないよ……」
真人は頭を抱えた。
茜が病状が突然、悪化したのことであまり寝てない
様子の真人を気遣い、絵里は
「ここは私がいるから。少し、休んだら?……」
真人に言った。
「うん…… そうするよ!……」
真人は絵里にそう言うと力なく、病院の待合室へと
向かおうとした。




