表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

4話 依存って恐ろしい

 お洒落をするという決意を固めてもう1月半、順調に女子力がアップしているんじゃないだろうか。とはいっても、化粧以外に何もしていないから、上ったのは微々たるものだけど。


 以前から遊んでいたネットゲームで知り合った推定男の子と、最近仲良くなった。

 お互い顔も知らないせいか、変に意地を張らずに女の子みたいな態度で接することができることが地味に嬉しかったりする。とはいっても、話すことといえばネットゲームのことばかりでリアルのことなんて全然話さないけど。

 私が顔を出すと、彼はいつもインしているのできっと学生もしくはニートなんだろう、なんて偏見を持っている。私がこのゲームを初めてすぐに知り合った人で、同じ部隊に入れてもらったり、いろいろお世話になった人だ。今のネットゲームでは音声チャットなんてものもあるから、文字でチャットしてる部隊なんて私のところぐらいなんだろうな。


 ところが、ある日突然部隊長の<おやじ>氏によって、我が部隊にも音声チャットが導入されることとなった。どうも私がネット上で男が女のふりをするネットオカマなのではないだろうかと囁かれており、部隊員がそれに興味を持って音声チャットに食いついたようなのだ。そんなことを私が知るはずもなく、軽い気持ちで参加した私が「こんにちわー」と言った時のみんなの衝撃具合と言ったらなかった。あとで事情を説明されて、なるほどと思ってしまったくらいだ。私的にはとても女の子らしくしていたつもりだったのだが、それが仇になったようだった。うう、ひどい。

 こうして音声チャットを導入すると、話は自然とゲームからリアルに行くようで、私が普段よく話していた<みかん>氏は、本名藤野雄大とうのゆうだい28歳、職業無職であることが分かった。そうだよね、いつもいるもんね。そうなんじゃないかとは思ってたよ。

「働いたら負けだと思っている。」

 たびたび放たれる<みかん>氏の語録にはすさまじいものがあり、働いてないことに対して焦りも罪悪感も感じていなさそうなこの人を、何となくどうしようもなく仕事に疲れた時の逃げ場にしてしまう日々が続いた。なんていうか、気が楽なのだ。ゲームに入ればいつでもいるし、静かに話も聞いてくれる。心の中ではきっと見下して安心しているんだ、私って最低な人間だな、なんて思いつつも、彼の深い懐に厄介になっている。

 一度、真嶋さんにネットゲームをしている友達として話をしたら、ばらしてもいないのに『クソニート野郎』というものだからびっくりした。そして、真嶋さんもネットゲームするくせに何故にそこまで毒を吐くのか、はなはだ疑問である。何か感じるものがあるのだろうか。いつものシニカルな表情ではなく、憎々しげに言う姿は、何が真嶋さんをそうさせるのかと問わずにはいられない。「そんなことよりモン○ンやれよ。」とすぐに話をそらされたけど、モンハ○てすごい廃人御用達ゲームじゃないか。「新しいの出たらいいですけど、今から真嶋さんに追いつくの大変だから無理です」真嶋さんも結構なゲーマーだよね。

 みんなでオフ会というものをしようと誘われたが、そんな社交性ははなから持ち合わせていないため、丁重にお断りすることになった。私以外で楽しんできておくれ。

 そのやりとりの後、ちょくちょくみかん氏こと藤野雄大とメールをするようになったが、大した話もなく、ただ『おはようございます、いい天気ですね』とメールが来て『何言ってるんですか、都内在住でしょう。今日は大雨ですよ。カーテン開けなさい』『俺は外でなくてもいいから、ざまあってことでいい天気なんだよ』『なにそれ鬼畜』というような内容のないやり取りをするだけである。

 他には、『猫がいた、にゃーんていったにゃーんて!かわいいよう』『俺ねこアレルギー』『マジで』『猫耳は好きですけどね』『それ絶対違うやつだ、私が言ってるのと違うやつだ』『にゃーんて言えよ』『変態だー!』『男はみな変態なのです』なんてものや、『母が間違って赤丸ジャンプ買ってきた』『うあー、典型的ニート』『ちょ、そっちかよw』『お母さんもよく買ってきてくれたね』『母俺のこと好きだもの』『げ、しかもマザコン』『マザコンじゃない男の子なんかいません』とかである。気楽なものだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ