チャプター7 密会
その頃、暴力映画が映し出されたテレビの置かれた高級マンションで、3つのグループが話し合っていた。
ヒスパニック系のギャングであるディアブロのリーダー、アルマンド・ロペス。中華系マフィアトライアドのリーダー、ラウ・フォーリー。ジャマイカ系ギャング、ヤーディーズのリーダーであるジェイコブ・ヒューズらが、それぞれ部下を引き連れていた。
「ポッチーノのスパイがタイへ逃亡したらしい。」
アルマンドが酒を飲みながら言った。
「何だと!あのチキン野郎、金払わずに逃げやがったか!」
ジェイコブが机を叩いて言った。
「ポッチーノファミリーが壊滅したから金が払えなくなったんだろう。所詮、組織の金だからな。あいつは殺し屋としてはカスだからポケットマネーじゃ払えねぇってことだろ。しっかし奴はFBIの流れ者のくせに世界中に顔が利くぞ。俺たちがタイに乗り込んだとしても、奴がどんなヤバイモノを雇ってるかわからねえ。」
ラウは部下とチェスをしながら言った。
駒を動かそうとすると、誰かがチェス盤にバッグを置いてきた。
「金ならここにあるぜ。」
バッグを置いた男はピノキオだ。ホテルを襲撃したときとは違い、黒ずくめではなく、ネクタイを締め、白いコートを羽織っている。しかし、手には黒の手袋。
「お前か?ポッチーノを潰したのは。」
ラウは立ち上がると、ピノキオを睨みつけた。
ピノキオは恐れることなく話し続ける。
「何だ?お前らに渡るはずの金を持ってきてやったんだ。ホラよ! ところで俺のショーでもどうだ? この長い鼻から・・・何かが・・・」
そんなピノキオをよそにラウは部下に合図をした。
部下はピノキオに掴みかかったが、長い鼻に仕掛けられたナイフで顔面をやられた。バタリと倒れる部下。
「ジャーン!鼻から飛び出してきた刃!これぞピノキオイリュージョン!」
ニヤニヤした顔でピノキオはソファに座った。
「おやおや、お前たちが見てるのは「スカーフェイス」かなぁ?
好きな映画だ。トニー・モンタナは俺に似てるからな~。お前らもアイツみたいな死に方をしたいだろ。」
ジェイコブはテレビの電源を切ると、イライラした表情で言った。
「で、お前は何の用だ?」
「お前たちの仲間に入れて欲しいんだ。いや、組織としてじゃないぞ。・・・ホラ、お前らが1ヶ月前から随分衰退してるから、一緒に仕事がしたいんだ。いったい何があったんだ?お前らはそんなちっちぇナニみたいな奴じゃなかったはずだ。それにこんなマネーマンが隠れるようなとこでドーベルマンにビビッたチワワみてぇに震えてるんだ?なぜ、おっかねえギャングどもがパニックルームに隠れてまでマスを掻いてるのか。答えは簡単。ファルコンマンだ。ファルコンマンが現れてからお前らは手も足も出なくなった。奴はお前らより常に一歩先にいる。」
「で、結局お前は何が言いたい!?」
アルマンドが怒鳴る。
ピノキオは静かに答えた。
「俺は奴より一歩先にいる。」
「そんなこと垂らす奴に限って失敗すんだよ。お前みてぇな変人にできるとは思えんね。お前らもそう思うだろ?」
ジェイコブが仲間に同意を求めると、皆笑っていた。
「まあ、1ついっておくと、ファルコンマンは奴を捕まえにいくだろうな。あいつがファルコンマンに捕まりゃ、奴の口からはお前らの秘密が流出しまくり!即効サツにバレて豚箱行きだ。まあ、お前らがそれを望むというのなら、俺は手を離すがな。」
「もしお前と契約すれば?」
「お前らが捕まってしまったとしても俺が出してやる。サービスでファルコンマンも殺ってやろう。」
「契約金は?」
「お前らの組織の金10の内8頂戴する。」
「ナメやがって・・・おい、お前ら聞いたか?こいつ馬鹿だ!」
ジェイコブがそう言うと、部下たちのブーイングが始まった。
ピノキオは立ち上がって、コートからダイナマイトを取り出した。
「おい!何だこれ!爆発すりゃお前らの魂まで豚箱行きだぜ!?」
「こいつイカれてる!」
全員が恐怖に包まれた。
「わかったわかった!金を渡してやるから契約する!組織が跡形も無くなるよりかマシだ。」
「よし、交渉成立だ。おっと名刺を忘れてた。これが俺の目印だ。また連絡してくれ。」
そう言って机に放り投げたのは長い鼻だった。
ピノキオは去っていった。