チャプター20 交錯する思い
夜になり、トビアスはノーラン邸の自室のベッドに横になっていた。
様々なことが頭をよぎる。
メアリーとのすれ違い・・・
デレクへの劣等感・・・
悪魔のような凶悪犯罪者ピノキオに対して、手も足も出ない絶望感・・・
そんなことを考えていると、サムが部屋に来た。
「奴の犯罪は止まる気配がないな・・・」
「なぜ、奴に勝てないんだろう・・・」
「前にもお前に言っただろう?奴は自身の快楽で犯罪を犯してる・・・お前が正体を明かして、投降するしか勝つ方法は無いんだ。」
「ファルコンマンは悪魔には勝てないのか・・・」
「いや、奴は悪魔なんかじゃない。ただの人間だ。人間だからこそ、犯罪に快楽を感じてるんだ。もしかしたら、奴はああなる前は善良な市民だったかもしれない。いくら善人でも、感情に支配されることもある。怒り、憎しみ、復讐心、嫉妬心・・・それを乗り越えるには、鉄よりも硬く、強い意志が必要だ・・・気の毒な話だが、お前は両親を失って、犯人を殺そうとしたか?」
「・・・」
「できなかったはずだ。それは、お前を悪の道へ・・・いや、人としての道を踏み外させまいと、両親が願っていたからだ。お前はファルコンマンになって、傷だらけでも犯罪と戦ってきた。」
「でも、ファルコンマンは無法者だ・・・」
「無法者だからこそ、奴と同じ土俵で戦えるんだろう?」
「たしかにそうだけど・・・」
「明日、市長の演説がある。奴が潜入するかもしれない。」
「わかった・・・」
トビアスがそう言うと、サムは部屋を出て行った。




