チャプター1 ホテル襲撃
太陽の光が眩しい昼間。
いつもと変わらぬ風景のドレイクシティ高速道路。
排気ガスに汚染され、道路にはネズミウィルスが蔓延していそうだ。
いかにもこの病んだ腐敗都市にマッチした高速道路。
しかし、この街では車の交通量は多い。
ロサンゼルス並みである。
一般車から、市バスなど、様々な車が走っている。
今日も渋滞だ。
なかなか進まない列に皆イライラしている。
そんな列の中に、帽子と様々な表情のマスクを被った黒ずくめの男が3人乗ったSUVがあった。
「全く、イライラさせやがって・・・」 怒り顔のマスク男の1人が口にすると、
「まあ、落ち着けよ、まだ時間はある。」
冷静な笑い顔のマスク男が宥めた。こいつがリーダーなのか?
「なあ、どうしてそんな落ち着いてられんだよ?」
短気なマスク男が尋ねると、冷静なマスク男は答える。
「失敗するぞ。」
「現実的な奴だ・・・」
短気なマスク男は興味なさげに溜息をつくと、運転している無表情のマスク男が言った。
「前の車が進んだ。急ぐぞ!」運転手のマスク男はスピードを上げて、前の車を抜かしていく。
「まだ時間はあるんじゃねえのか?」短気なマスク男は運転手のマスク男に聞いた。
「遅刻すれば、金は半分らしい。ボスが言ってたんだ!」
「ボス?ガキみてえなこと言うんだな。で、そのボスってのは?」
「さあ、俺も素顔は見たことないんだ。」
「なんだ、見たことねえのか。」
彼らがそんなやり取りをしていると、車はある建物に到着した。高級ホテルだ。
「他の2人は?」
「中だ。」
3人は高級ホテルに入ると、挨拶してくるホテルマンをスルーして、素早くエレベーターに乗り込んだ。
「ホシは何人だ?」
「ボディガード2人、部下6人、ポッチーノ、そして関係ないが売春婦1人だ。」
「野郎どもとポッチーノのアホ面は最悪殺るとして、売春婦はヤッちまうか?」
「お前ら、静かにしろ。何が待ち受けてるかわからん。」
エレベーターは20階へと到着。3人はサブマシンガンを取り出し、奥の部屋へと進んでいく。
部屋の前まで来ると、短気なマスク男の合図で突入した。
「取引は止めだ!おとなしく全額を渡しやがれ!クソブタども!」
しかし、ポッチーノはやけに落ち着いた様子だ。
「おお、よく来たな。お前たちの勝ちだ。金は用意してある。持って行け!」
ポッチーノのボディガードは金の入ったバッグを3人のほうへ放り投げた。
短気なマスク男は銃を向けながら恐る恐るバッグに手をやろうとした次の瞬間、ベランダに隠れていた取り引き相手のギャング数人が飛び出して、銃撃。短気なマスク男は射殺された。罠だったのだ。すかさずソファーに隠れる2人。そこに残りの2人もやってきた。
笑い顔のマスク男は2人に状況を伝えた。
「1人死んだ!相手は数が多すぎる!」
舌を出した顔のマスク男と、泣き顔のマスク男は「別の部屋からベランダの奴らを片付ける!」
と言って部屋を飛び出していった。
「おい!このままじゃ全滅しちまうぞ!」
笑い顔のマスク男は止めようとしたが、意味は無かった。
すると、無表情のマスク男は手榴弾を取り出し、べランダ側へ放り投げた。
大爆発して、吹き飛ばされるベランダ。残ったのは無表情のマスク男と笑い顔のマスク男、売春婦だけだ。
「お、お前・・・まさか・・・」笑い顔のマスク男が言いかけると、無表情のマスク男は拳銃で射殺した。
バタリと倒れた笑い顔のマスク男のわき腹を蹴って死んだことを確認すると、もう1発意味も無いのに彼の胸に撃ち込んだ。無表情のマスク男は傍で泣きながら怯える売春婦に近づくと、彼女に問いかける。
「ハーイ、お嬢さん。怖かったか?泣くことはないぜ?」
それでも涙を流し、黙り続ける売春婦を見て、まるでおもちゃに飽きた子供のように離れていった。彼が立ち去ろうとすると、破壊したベランダから声が聞こえてきた。
「助けてくれ・・・」
声のしたほうへ向かう無表情のマスク男。
彼はしゃがんでこう言った。
「おお~、運のいい奴だ。まだタマを落としてないみたいだな。よし、助けてやろう・・・」
そう言いながらマスクをとったその素顔は長髪に、ピエロとも悪魔ともつかないメイクにゴムでできた異様に長い鼻を持った不気味な男だった。
「ホラ、こうしてやるよ!」
怪人は男の掴んでいる手を踏みつけたのだ。
落下していく男。道路に落ちた男の死体を見て叫ぶ民衆。
「おい!下から落っこちてきたぞ!」
「大変だ!警察を呼べ!」
怪人は薄ら笑いを浮かべ、「アディオス。」
と言って立ち去った。