チャプター16 招かれざる客
夜。パーティ会場であるホテルにはたくさんの人が来ていた。
トビアスとサムはタキシード、サーシャはカクテルドレスで来ていた。「サーシャ、そのドレス似合ってるね。」トビアスが言った。「またまた・・・お世辞はやめてよね。私みたいなギークにドレスが似合うわけないじゃない?」と赤面しながらもサーシャは答える。彼らはそんな話をしながらエレベーターに乗った。
「こんな盛大なパーティがぶち壊されるのか・・・わが社はゲストたちに慰謝料を払うこと必須だな・・・」
サムが残念そうに言う。
「まあ、奴がここに現れたら僕が止めるから。」
「トビアス、お前大丈夫なのか?」
サムは心配そうに聞いた。
「ああ、全力を尽くすよ。」
トビアスは胸を張って答える。
「さあ、もう会場に着くわよ。」
サーシャが言うと、エレベーターのドアが開いた。
そこは、たくさんの人々で賑わっていた。
トビアスはそこでメアリーとデレクを見つける。
「ハーイ!メアリー。おや?デレクも一緒かな?」
「トビアス!来ていたのね!」
「ああ、楽しんでいるかい?」
「ええ、まあね。そこのお2人さんは?」
メアリーは答えると、サムとサーシャに聞いた。
「お2人さんは?」
「うむ・・・良いパーティだ。開いた甲斐があったね!」
サムは答える。
サーシャはメアリーとデレクを見て言った。
「それにしてもお似合いのカップルね!美男美女で、おまけに秀才同士。完璧じゃない!」
デレクは少し照れた顔で、「ありがとう!でもなんていうか・・・恥ずかしいね。」
トビアスは複雑な表情をしていたが、笑顔で言った。
「彼女は僕の幼馴染なんだ。大事にしてあげてくれよ。市長としてもこのドレイクシティを変えていってくれ。1人の市民として応援しているよ。」
握手を求めるトビアス。
デレクは笑顔で頷いて、握手を交わした。
「ちょっと風を浴びてくるよ。」
トビアスは握手した後、テーブルに置いてあるワインを持って、バルコニーに向かった。
ワインを片手に、夜景を眺めるトビアス。
そこにメアリーが来た。
「ねえ、トビアス。みんなの所に行かないの?」
「ああ、今はね。」
「トビアス・・・あなた変わったわ・・・」
「どうしてそんなことを?」
「いつも何かに引っ張られてる・・・そんな顔してるもの・・・」
「別に何もないよ・・・?」
「何か悩みがあるなら話してよ。もし、私が力になれなくてもすっきりするかもしれないし・・・」
「・・・。デレクは優しいね・・・。」
「えっ?」
「僕みたいな人間に認められても笑顔を見せられる。たいていは無視されるだけだ・・・」
「トビアス・・・あなたはやるべきことをやっているんだから・・・」
メアリーが言いかけると、デレクに呼ばれた。
「メアリー!ケーキを食べよう!あっ、トビアス。君はどう?」
「僕は遠慮するよ。ありがとう。」
「トビアス・・・ごめんなさい。」
「いや、気にしないで・・・」
トビアスが励ますと、メアリーは室内へ戻って行った。
彼女を見送ると、トビアスの携帯電話が鳴った。
「もしもし?」
「もしもし!?キートンか?」
「ああ。」
「パーティ会場を警戒しろ!我々も私服警官を張っているが・・・奴はどのルートで侵入するかわからん!ところ市長はそこにいるか?」
「デレクならいるけど・・・なぜ?」
「奴は街の有力者を標的にしている!次に狙われるとしたら彼の可能性が高い!」
「わかった!彼を避難させるよ!」
トビアスは急いで室内に向かい、デレクを呼んだ。
「デレク!一緒に来てくれ!話があるんだ。ごめん、メアリー・・・」
「どうしたんだ!?トビアス。」
「いいから早くこっちへ!」
トビアスはデレクをトイレに連れてきた。
「一体何の話だ!?」
「奴が来るんだ!」
「奴って!?」
「ピノキオだよ!」
「ピノキオ!?どうして!?」
「警部から電話があったんだ!さあ、早く個室へ隠れて!」
トビアスはデレクを押し込めるように個室へ入れた。
「助けが来るまで動くなよ!」トビアスは急いでトイレを出て、宴会場の外にある控え室へ向かった。
と、そんなとき。エレベータから珍客がやって来た。
ピノキオとその部下4人は私服警官を銃で脅しながら、チームを代表してピノキオが、
「レディース アンド ジェントルメン! メインショーの始まりだ!」
と叫んだ。
「デレク・ジョンソンがどこにいるか知ってる奴はいるか!?」
「・・・・・・。」
当然、誰も知らない。
ピノキオはテーブルにあったワインを飲み、ゲストたちにサブマシンガンを向け、怯えさせる。
「誰も知らないのか!?ならば・・・デレクの家族でもいい。はたまた恋人や友人でも・・・」
ピノキオが言うと、メアリーが恐怖で震えた手を挙げた。
それに目をつけたピノキオはゆっくりと彼女に近づきながら、
「おや・・・お嬢さん~ いい女だな・・・・ジョンソンが羨ましいぜ~」
と言って顔を向けてきた。
「震えてるな!?ビビッたチワワみてぇだ。でも野郎どもとは違って可愛いな・・・俺を見ろ・・・」
ピノキオはメアリーの肩を無理やり掴み、自身のほうへ引き寄せた。
「ああ~、近くで見たらもっと綺麗だ・・・俺の高校時代の女を思い出すよ。」
「離してよ!このバケモノ!」
必死に抵抗するメアリー。しかし、ピノキオは態度を変えず、
「おいおい、抵抗しても無駄だぞ?力の差を考えろ。まあ、いい。話を聞かせてやろう。俺の高校時代、お前さんにそっくりなクラスメートがいた。俺は魅力的な彼女のことが好きだった。ある日、俺は彼女に想いを伝えようと、手紙を送った。俺は彼女の返事を待って待って待ちまくった。しかし、返事が来ない。俺は彼女に会いに、家へ行った。真実が知りたかったから。彼女は言った。「あなたみたいな嘘つきのバケモノなんて、誰が好きになるの? ママにでも愛されてなさい。」俺は持っていたペンで首を切った。」カッターシャツの傷を見せ付けた。「彼女はその場で嘔吐。俺は傷が残ったが、今を楽しく生きてるぜ!」とピノキオが言うと、メアリーは彼の足を踏みつけた。
「痛てぇ!なかなかやるな。俺は強い女が大好きだ。」
「この俺はどうだ!?」
ファルコンマンが現れ、ピノキオを吹っ飛ばした。
「かかれ!」
ピノキオは部下に指示する。
部下はファルコンマンに拳銃を落とされ、やむをえず格闘戦に。
しかし、ファルコンマンは苦戦せず、部下を次々と気絶させる。
1人残った部下を盾にする卑劣なピノキオだが、ファルコンマンに投げ飛ばされ、機械仕掛けの鼻からナイフを突き出し、それでファルコンマンを傷つけた。
ファルコンマンがよろめいた隙に、メアリーを人質にとるピノキオ。
「王道な展開だな~ファルコンマン!」
「彼女を離せ!」
「お決まりのセリフで来るか~ わかった。望み通り離してやる。ホラよ!」
ピノキオはメアリーをバルコニーの外へ突き落とした。
大笑いするピノキオ。
ファルコンマンはバルコニーを飛び降り、救助用マジックハンドでメアリーキャッチ、
ホールドしながら地面へ。メアリーを怪我させないように、自身が地面に着く。
「ありがとう・・・デレクは無事!?」
「ああ、彼は問題ない・・・」
「よかった・・・もしあなたがいなかったら・・・」
息切れしながら震えた声で言ったメアリーにファルコンマンは頷いた。




