チャプター11 傷の理由(わけ)
その頃、高級マンションで。
ラウは部下とともにチェスをしていた。
そんなとき、インターホンが鳴る。
部下が確認すると、「ピザの宅配です。」
配達員が立っていた。
「おお、今出る。」
部下がドアを開けると、
「動くな。」
ピノキオが恐怖で震えた配達員の傍で、拳銃を突きつけてきた。部下と思われる男2人もいる。
「ラウはご在宅か?」
ピノキオの問いに、部下は言葉を失い、頷いた。
「よし、いい子だ。」
ピノキオは部下の頭を撫でると、彼に銃を突きつけ、室内に侵入。
ピノキオを見たラウとその部下は銃を構える。
しかし、ピノキオは臆することなく、要求を突きつける。
「おいおい、お前のほうが圧倒的不利なんだぜ?人質をとってるからな。銃を床に置け。」
ラウとその部下は従わず、構えたままだ。
「もう一度だけ言う。床・に・置け。」
ピノキオがジェスチャーで説明すると、ラウとその部下は銃を床に置いた。
「それでいい。」
と言って、配達員の持ったピザの箱を取り上げ、一切れを口に運んだ。
「美味いな、コレ。アンチョビがのってねえが。」
クチャクチャと不快な音を立てながら、ピザを食べるピノキオ。
「何が望みだ!?」
ラウが問いかける。
「望み?お前らの部下を頂戴しにきた。」
「ナメやがって・・・この化け物・・・」
「何だって?そうか。お前みたいな奴は俺が教育しなきゃ気づかないみたいだな。」
ピノキオはピザを置くと、ラウに近づき、彼の顔を掴んだ。
突然の出来事に震えるラウ。
「お前、ビビッたチワワみてぇだな。」
ピノキオが選択を迫ってきた。
「どうしたんだ?ビビッて言葉を失ったってか。安心しろ。優柔不断なお前の為に、俺の話を聞かせてやる。俺はガキの頃、お袋が家を出て行った。なぜかって? 親父と兄貴の喧嘩が原因さ。親父の自己中っぷりにキレた兄貴は、親父をナイフで刺殺。兄貴は俺に冷たい視線を向けてきた。で、こう言った。「お前もラクにしてやるよ・・・」もう兄貴はイカレてた。ビビッた俺は、家から離れた公園のトイレに逃げ込んだ。しかし、不幸なことに、個室の鍵は壊れてた。予想通り、兄貴は俺を追ってきた。「かくれんぼは終わりだ・・・」ってな。兄貴が俺を見つけると、銃とナイフを持ってた。兄貴は俺を捕まえてこう言った。「ビビッたチワワみてぇだな。銃かナイフ、どっちがいい・・・?」俺は小さな声で「ナイフ・・・」って言った。そしたら、兄貴はナイフで俺の首に傷をつけた!」ピノキオはカッターシャツで隠れた首の傷を見せる。
「血が出て、傷口を押さえる俺を見て兄貴は言った。「命拾いしたな・・・」ってな。」
「で・・・お前はどうかな・・・?」
と言って、ピノキオはラウの喉を切り裂いた。
血を流してバタリと倒れるラウ。
ピノキオは手を掃うと、残りの部下に言った。
「・・・さて。お次はお前たちの番だ。選ばれた者だけが俺についてくることができる。ただし、裏切り者はいらんぞ。始めろ。」
ピノキオはそう言い残して、部屋を出た。




