宰相の苦労 別サイド
初めての別サイド視点です
最後に出てきたおじさまの視点
マリアベル殿下がもどってきた
奇妙な格好をした黒目・黒髪の娘に背負われて
この国で黒目・黒髪などという非常識の容姿をしたものなど存在しない
魔族の中には、探せばいるのかもしれないが確認されたことはないはずだ
魔王でさえ薄い銀色の・灰目だと聞いている
黒髪それは魔力の保有量を示している
黒に近ければ近いほど、より多くの魔力を保有している
黒目それは魔力の質を示している
黒に近ければ近いほど、より質の高い魔力を保有している
ゆえに、黒髪・黒目などという非常識な容姿は魔王、いや神の領域とも言えるかもしれない
娘の格好もおかしなものだ、この国の女性ではまずありえない丈のスカートに
白いシャツにはリボンがまかれている
靴は履いてないようだが靴下は履いていた
驚いたのはその服の仕立てのよさだった
そんな高価そうな服を着ている娘、異国の貴族であろう
娘の容姿も、年は13.4といったところ、背も150をいったところ
漆黒になびく髪は手入れのされた美しいもの
黒曜石を思わせる大きな瞳
鼻筋も通っており、小さな愛らしい顔をしていた
黒が不吉だといったのは誰だろうか、実際に見ればこんなにも美しい
私は心を奪われていた
そんな娘がなぜ殿下を背負っているのか
見たところこちらに危害を加えようとはしていない
とにかく、ご無事が確認された殿下を城へお連れするのが先決だ
「ふん。どうせ金目当てか、やつらの仲間だろう。牢にでもいれておけ」
なんてことを言い出すんだ
この娘の容姿からして絶大な魔力を持ちそれに順ずる質まで持っているのは誰の目にも明白
その娘がちんけな誘拐など行うはずもない
金品がほしければどこぞの商家、貴族もちろんこの城でも襲えば手に入る
殿下のお命を狙ったやからであればもっと簡単だ
この城ごと消滅させれば済むことだ
恐ろしいことにそれが簡単にできるほどの魔力を有する娘なのだ
そんな娘に牢へ入れなどと・・・
娘が牙を剥けば我々などでは対抗できようもないのだ
危険だと抗議したが、王子は話は終わったとばかりにその場を後にした
牢に連れて行かれた娘は、与えられた粗末な食事を前に両手を合わせ
「いただきます」
といって食べ始めた
もっといい食事をだせなかったのか!!
これ以上刺激してどうするというのだ
聞きなれない言葉だが、なんとなく意味はわかった
心根の優しい娘なのだろう。それだけが救いなのだ
我々の命は風前の灯。この国の宰相にまで上り詰めたが、
ここで終わってしまうかもしれない
だが、この国を守るものとしては屈するわけには行かない
私は意を決して、娘の下へむかった
牢の中で娘は目をつぶって、耳に何かをはめているのが見えた
娘の国の魔道具かなにかだろうか
それにしても、牢へ入れるときにポケットの中身を確認すべきだろう
牢番はいったい何をしているのだ
「本当にお前が殿下を拉致した首謀者か?だとしたら、誰の差し金だ。答えよ
返答しだいでは温情が下るやもしれん」
「いあ、拉致してないので返答ができません。っというか!!あの子が襲われそうになったから
助けただけなのに、この仕打ちなんなんですか!?」
いったいどういうことだ?
確かに殿下はこの娘が誘拐犯だと証言はしていない
だが、娘の言うように恩人だとすればなぜ助けない
矛盾だらけだ
牢に手をかけ
娘の瞳をじっと見たが、嘘をいっているようにはみえない
とすれば・・・
こちらの手違い
背筋に冷たい汗がにじむ
「それは、真実なのか、その・・・殿下をお救いしたというのは」
「だからさっきからそういってるじゃないですか!?
それなのに誰もきいてくれないし、あの子もフォローしないし!役立たずって言われたけど
こっちからしたら、あの子のほうがよっぽど役立たずなんですけど!!」
娘は口を尖らせてプリプリと怒っていた
なんということだ
身分のないものを人とも思わない、仕えられるのが当たり前の環境で過ごしてきた
王族としても傲慢であるとは知っていたし、理解はしていたつもりなのだが
そこまで性根が腐っているとは
「申し訳なかった。こちらとしても自体を把握できておらず、貴殿にはご迷惑をおかけしてしまったようで」
こんな謝罪ひとつで心が晴れるとはおもわないが
「おい!牢番!!!ここをすぐに開けるのだ」
今すぐに王へ報告せねばなるまい
のちに禍根を残すようなことになれば、わが国は滅びの一途を辿る事にもなりかねん
お気に入り登録ありがとうございます
趣味で書いているだけなんですが、読んでくれている人がいるなんて感動しました
これからも頑張ります