老眼が捉えられるもの
3と8・6と8
歳とりゃ違いも分からん
みな同じに見える
数字じゃろ?
んなのは見りゃわかる
焦点が定まらないアイドルダンス
歳とりゃ違いも分からん
みな同じに見える
男と女じゃろ?
んなのは見りゃわかる
当たり前のことを言う
今よりも昔のほうが視力が良かった
数字も文字もスラスラ読めた
お得意の観察眼
クラスメートにあだ名をつけるのもお茶の子さいさい
読書だって恋だってしてきた
視力が良かったからじゃろな
斜視乱視そして老眼
抱えて生きてると文句を言いたくなることがある
言えば老害
孫に睨まれとうない
「これが流行っとんのか」
「ええのう」
「ええのう」
受け入れたふりをして疑問符を浮かべる
今時頑固親父は要らぬのだ
そう
ワシの生きた時代がダサかったのだ
そうじゃそうじゃ
ワシのセンスが古いのじゃ
寂しさと茶柱が浮かぶ茶を
コクリ飲んではカラスがアホーと鳴き立てる
煩い声の持ち主を捉える目をワシは持っていない
黒ずんだ塊が化け物のように浮かんで消えた
ただそれが事実
本当のこと
流行も数字も文字もカラスも
老眼には捉えられぬ
まぶたを閉じて深呼吸
孫よ君は知らんだろ
白黒テレビに色が付いた日の興奮を
海外文化が流入した新時代の予感を
語りたい
でも語ると老害言われるじゃろか
黙っておこう
そうだな黙っておこう
まぶたを開ける
茶柱は浮かんだまま
窓辺を見る
…………、
1羽のカラスがこちらを見て佇んでいた
確かにカラスだった
(目の前で、止まればみえる、何事も)
ワシが今どきを捉えられるとしたら
それは文化が止まった時なんじゃろな
あぁ、時代よ動くな
……あぁ、時代よ動いてゆくのだなぁ




