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9話 ウラの顔

 生徒会室の窓から、登校してくる生徒たちを眺めている澪は、薄い唇を引き結んだ。手元のスマホに目を落とす。真っ白のページに「404 not found」の文字が表示されている。


「全部、きれいに消してくれたわね。もう少しで、おもしろくなったのに」

 

 トントン。


 ノックの音と共に、慌てた表情の新聞部部長が飛び込んできた。


「し、失礼します! 佐沖会長、お話が!」


振り向いた澪が微笑むと、新聞部部長は一瞬表情を緩め、すぐに顔を引き締めた。


「どうしました?」

「そ、それが、今日発行しようと思っていた新聞のデータが、消えてしまったんです! ウラアカが削除されたことと、教師が2人退職したスクープネタだったのに!」


半泣きになって訴える新聞部部長に、澪は頬に手を添えて眉を下げた。


「それは困りましたね」

「昨日帰るまでは絶対あったんです。それなのに、さっき見たら消えてたんですよ。誰かが消したとしか思えません!」

「消えたのではなく、消された……。学院の誰かの仕業だと?」


澪の笑みが深くなる。


「い、いや、外部犯の可能性もあるかもですが」

「学院のセキュリティに問題があるということですか?」

「え、えっと、それは……」


新聞部部長はたじろぎ、目を泳がせた。澪はぽつりとこぼした。


「……次の段階に、進みましょうか」



 葵と晴の後に続いて麗が教室に入ると、ほとんどのクラスメイトがスマホを見ながら顔を突き合わせて怪訝な顔をしていた。


「ウラアカ、マジで消えちゃってる」

「あーあ。町田先生と葉山先生の退職の理由、気になってたのに」

「それな。でもさ、絶対不倫のせいだって」


近くの席で話している声が耳に入ってくる。晴が耳打ちをしてきた。


「牧野先輩、ちゃんとやってくれたみたいだね」


麗が頷くと、席に座った葵が足を組んで頬杖をついた。


「町田と葉山のことは、おじさんが任せとけって言ったけど、こんなに早く退職させるとはな」

「盗撮のことも一切漏れないように処理したみたいだし。サイトも消えてた」


どうやら理事長は、町田と葉山を警察に突き出すこともせず、裏で密かに処理したらしい。盗撮の罪に問われないのは腹立たしい。不服そうな表情の麗に、晴がふっと笑みを浮かべた。


「安心して。おじさんのことだから、表で裁かれるよりもエグイ方法で始末したと思うよ」

「……あー、うん」


麗は曖昧に頷き、自分の席に座った。


 町田先生と葉山先生がどうなったのか、考えないでおこう。

新しい担任が来るのかな。理事長は考えてあるって言ってたけど……。


チャイムが鳴り、ざわめきが小さくなる。誰もが教室の扉に目を向けた。

だが、5分経っても、10分経っても、誰も入ってこない。

 話し始めたり、席を立ったり、一斉に騒がしくなる。

 その時。

 

 ガラガラッ。


 扉の開く音がして、しんと静まり返る。全員の視線が、前方の扉に集中した。

 無精ひげを生やした中年の男性が、欠伸をしながら入ってきた。

スーツはよれて皺だらけで、ネクタイは緩んでいる。やる気のなさそうな半目で教室を見渡すと、がさついた声でぼやいた。


「散らかってんな」

 

気だるそうに前列の机を軽く押して揃えると、教壇に立った。


「前のやつに、机を合わせろ」


生徒達はぽかんとした表情で、固まっている。

男は寝ぐせのついたぼさぼさの頭をぼりぼり掻いて、教壇に肘をついた。


「やれ」


静かだが、低く威圧感のある声が、ビリビリと空気を震わせる。

 一斉に机を動かし、全員の姿勢が自然と伸びる。

 麗が葵と晴をちらっと見ると、顔を強張らせ、背筋を伸ばしている。


「今日から俺が担任な。名前は、目白だ。よろしくー」


出席簿を開くが、すぐに閉じる。


「全員来てるな。今日は……」


天井に目を向けて首をコキッと鳴らした。


「何するんだっけな。まあ、いいや」


首をかきながら欠伸をする。


「やる気なさすぎだろ」

「マジでうちらの担任なの?」

「やさぐれたおっさんじゃん」

「大丈夫かよ」


ひそひそと話す声がひとつ、ふたつ増えていく。


ガタッ。


 麗の前に座る生徒が椅子を動かし、麗の机に当たった。その拍子に机が揺れ、ペンが転がる。いつの間にか目の前に来ていた目白が、床に落ちる前に、音もなくペンをすくい上げた。


「ほらよ」

「あ、ありがとうございます」


ペンを受け取った時、重そうな一重まぶたの目とかち合う。

一瞬だけ、獲物を見るように細まる。

麗の背筋がぞくっとして、鳥肌が立った。


チャイムが鳴ると、目白は出席簿を片手に、ポケットに手をつっこんで教室を出て行った。


あの人、本当に先生? さっきの感覚、組長と同じ。裏社会の人間だったりして。


 麗がペンを凝視していると、葵がペンを取って指で回した。


「あいつ、カタギじゃないな」


葵の後ろから顔を出した晴が、ペンを奪って麗に渡した。


「だらしなく見せかけてるだけだね。一瞬で机を真っすぐにしてたし、麗ちゃんのペンを拾う時の動き、相当な手練れだよ」

「やっぱり、裏社会の人?」

「多分ね」


麗が固い表情で晴を見上げると、プリンススマイルを浮かべた。近くの席の女子たちから、黄色い声が上がる。葵は口をへの字に曲げた。


「愛想ふりまいてんじゃねえよ。キモイ」

「ファンサだよ。ウラアカはなくなったけど、ファンサイトは残ってるからね。いつ隠し撮りされるか分かんないじゃん。プリンスキャラは守らないと」


微笑んでいるが、目は笑っていない。


「何で、無理して笑うの?」

「え?」


晴はきょとんとした顔で、麗を見つめる。葵は鼻で笑って晴を小突いた。


「病気なんだよ。愛想笑いしてないと、死んじまうんだ」

「……うるさいな。しかめっ面しかできないくせに。その顔じゃ、本当に欲しい物は一生手に入らないよ」


鋭利な眼差しを葵に向けると、ちらちら視線を送っていた女子たちの方へ行ってしまう。葵は舌打ちをして腕組をした。


「いつまでもお袋の言うことに縛られやがって。マザコンめ」

「どういうこと?」

「『晴の笑顔は人を幸せにする。いつも笑顔でいて』。お袋が出てった時、そう書置きしてあった」


葵と晴の母親は、麗が鹿島家に来る少し前に、家を出て行ったきりだ。

 どうして出て行ったのか。鹿島家では母親について話すのがタブーのようで、麗は何も知らない。

 葵のしかめっ面に影が落ちる。


「親父に嫌気がさしたんだろ。浮気して出てった。お袋は俺たちを捨てたんだ。……忘れちまえばいいのに」


貼り付いた笑顔を女子たちに向けている晴に一瞥をくれると、葵は短く息を吐き出した。

 

「お母さんのこと、恨んでないの?」


葵はせせら笑い、麗を見下ろした。


「どうでもいい。親なんていてもいなくても一緒だ。おまえは恨んでるのか?」


目を伏せた麗は、机の下で拳を握りしめた。


「恨んでる。父のことは、絶対に許さない。必ず見つけ出してやる」


葵は口角を上げると、麗の頭をポンポンと叩き、薄茶色の瞳を覗き込んだ。

 教室がどよめく。

 麗は目を丸くして葵を見上げる。

 晴は目を瞠って、歪な笑みを浮かべた。


「下僕のくせに。良い目してんじゃん」

「な、何よ……」


馬鹿にした言い方なのに。

むかつく笑い方なのに。

心臓が鷲掴みされたみたいに痛いのに。

胸の奥が熱いのは何で?

——こんなの、知らない。


腹パンして、すねを蹴って、筆箱とか、教科書とか投げつけて……。


目を閉じてバイオレンス妄想をしようとするけど、うまくいかない。


どうして⁉ 


頭を抱えた麗は、前髪を撫でて目元を隠した。


葵と晴と学食で昼食をとっていると、じろじろ見られたり、勝手に写真を撮られたり、麗は全く食事に集中できない。葵と晴は気にも止めず、黙々と食べ進めている。


「食わないならもらうぞ」


葵が麗のトンカツを口に放り込んだ。


「あっ、取っておいたのに!」


伸ばした手は空を切った。


 ——箸を葵の鼻の穴に突っ込んで、ぐりぐり引っ掻き回してやる!

女子たちはドン引き。人気はガタ落ち。誰からも見向きもされない。

そしたら、ゆっくりご飯が食べられる……あれ?


 それって、葵にとっていいことじゃない? 


「ちっがーう!」


気が付けば立ち上がって叫んでいた。

 全員の視線が突き刺さる。


「あっ、すみません……」


慌てて頭を下げて座ると、晴が肩を震わせて笑い、葵は鼻で笑った。


「ほんと、麗ちゃんって、見てて飽きないよね」

「アホだな」


麗は2人を睨みながら、残っていたトンカツを噛みちぎった。

 ——これじゃ、困るのに。


晴は笑みを引っ込めると、ふと思い出したようにポケットに手を入れた。


「そうそう。違うといえば、これ。町田先生のじゃないって言ってたでしょ」


晴は笑いを堪えながら、アダプタ型の小型カメラを取り出した。


「録画見たら、仕掛けた犯人が映ってるかと思ったんだけど。遠隔操作できるみたいで、データは全部消されてたんだ」

「用意周到だな。他にも盗撮犯がいるってことか?」


葵は味噌汁をすすって箸を置いた。


「もしかしたら、町田先生を後押しした黒幕が、町田先生が盗撮をしている証拠映像を残すために、仕掛けたのかも」


お茶を飲み干した晴は、空になったコップをお盆に置いた。


「何それ。意味分かんない。盗撮させといて、証拠を残して、どうしたいの?」


残ったキャベツをかき集めながら、麗は眉間にしわを寄せた。


「さあ。味方だと見せかけて背中を押して、結局は裏切ろうとしてたってことだよね。町田先生に恨みでもあったか、あるいは。……裏切られた時の顔を見て、楽しみたかったか」


晴が三日月型の目で微笑む。麗の箸が寸の間止まった。


「おまえみたいな変態サイコドS野郎が、他にいてたまるかよ」


葵が顔を歪め、麗は頷く。晴は頬を膨らませ、アダプタをポケットにしまうと、お盆を持って立ち上がった。


「心外だな。ぼくは変態サイコじゃないよ」

「ドSは認めんのか」


葵も立ち上がる。麗は内心、葵に共感しながらキャベツをかきこみ、2人の後を追った。



 食堂を出ると、晴はアダプタ型カメラを手のひらの上で転がしながら、首を捻った。


「ウラアカと盗撮事件の黒幕、無関係だとは思えないんだよね」


 ウラアカウント作成の取引を、牧野先輩にもちかけた黒幕。

 町田先生に盗撮させて、その証拠映像を撮ってた黒幕。


「……同一人物かも」


ぽつりと呟く麗を、葵が横目で見た。


「何でだよ?」

「ウラアカウントで学院の評判を落とす噂を広めて、その上で、盗撮事件を起こさせたんじゃないかな。事件が明るみになってたら、学院も理事長も危うかったよ」


晴は足を止め、アダプタ型カメラに目を落とした。


「もしかして、盗撮の証拠映像をウラアカウントに投稿して、事件を明るみさせようとしてた?」

「はあ? 愉快犯じゃねえか。タチ悪いな」

「それと、証拠映像を使えば、葉山先生を脅して、牧野先輩の出席日数を改ざんできる」

「あいつ、葉山のクラスだったのか」

「黒幕は、牧野先輩に取引を持ちかけたMisaoってやつだね。相当計画を練ってたみたいだし、ただの愉快犯じゃないよ。けどなあ……」


歯切れの悪い晴に、葵が眉をひそめた。


「Misaoって、誰だよ」

「そこなんだよ。内部の人間だとは思うけど、学院の評判を落として得する人なんている?」

「もしかしたら、実行犯と計画犯が別で、本当の黒幕は外部の人間だったりして」


麗が人差し指を立てると、葵は眉間に深くしわを刻み、晴はこめかみを抑えた。


「黒幕の黒幕ってことかよ。めんどくせえ」

「そうなったらぼくたちの管轄外だよ。Misao見つけたら、あとは次郎おじさんに任せればいいでしょ」

「Misaoってハンドルネームだろうし、他に手がかりがないと、見つけるの難しくない?」


麗が首をかしげると、晴はアダプタ型カメラを顔の前に突き出した。


「これでなんとかするしかないね。フクロウさんにハッカーを紹介してもらって、遠隔操作をしたデバイスとユーザーを見つけてもらえばあっという間だよ」

「そんな簡単にいくか?」


葵が首を左右にかたむけて、ボキボキ鳴らした時、廊下にいる生徒たちがさざめきだした。


「佐沖会長だ!」

「スタイルいい~!」

「美人で優秀とか、完璧すぎる!」


麗たちの向かいから、澪が歩いてくる。まるでランウェイを歩くモデルのようだ。


「やっぱ、おまえと同じ匂いがする」


葵が耳打ちをすると、晴は小さく笑った。


「ぼくの方が、うまく隠してるよ」


澪と目が合い、晴は微笑む。澪の肩がわずかに動き、すっと視線をそらす。

その先にあるのは、アダプタ型カメラ。

 晴の目元がきらりと光る。


「ごきげんよう」


澪が会釈をして通り過ぎようとする。

アダプタ型カメラが、床に落ちる。

コツン、と軽い音を立てて転がり、澪の上履きに当たった。


「あっ、すみません」


晴は眉を下げて肩をすぼめた。

澪はしゃがみ込み、迷いなくそれを拾い上げ、手渡した。


「……どうぞ」

「ありがとうございます」


晴は視線を澪から外さず、受け取る。


「これ、拾ったんですけど。会長さんのじゃないですよね?」


声は無邪気だが、目は笑っていない。

 澪は一拍だけ、間を置いた。


「いいえ。落とし物なら、先生に届けるべきね」


すっと手のひらを差し出す。


「ちょうど職員室に行くところだから、私が持っていくわ」


澪は目元を和らげ、えくぼを浮かべる。

2人の視線が交差する。

どちらもお手本のような笑顔だが、麗は身がすくむ。

晴は一瞬だけ目を細め、口角を上げた。


「そんな。悪いですよ」


首を振って、アダプタ型カメラをポケットにしまう。


「ぼくが自分で持っていきます。会長さん、噂どおり優しいですね」


後光が差しそうなプリンススマイル。周囲から悲鳴に近い歓声があがる。

澪のえくぼがピクッと反応する。


「あなたも、噂通りね」


澪は長い黒髪をなびかせ、廊下の角を曲がった。


「笑顔合戦、こわい……」


腕をさすりながら麗が呟く。


「わざとらしい演技しやがって」


葵が鼻で笑う。

晴は澪の消えた方を見ながら、ぽつりとこぼした。


「なんか、怪しいんだよなあ」



 澪は唇を噛みしめて、階段を駆け上がった。

屋上の扉に背中を預けて、ゆっくりその場にしゃがみ込み、熱を持った頬を両手で押さえた。


「……しゃべってしまったわ」


声がかすれる。心臓がうるさい。全身が脈打ち、指先が震える。


スマホを開き、ファンサイトの画面をスクロールする。

学食でランチを食べる晴。

澪を前に満面の笑みを浮かべる晴。

画像を食い入るように見つめる。

スマホを額に当て、長く息を吐き出した。


「ハルさま……」


ぎゅっと目を閉じて、膝に顔を埋める。

高鳴る鼓動を抑え込み、にやける頬を引き締める。


あのアダプタ型カメラ。落としたのは、偶然じゃない。


頬の熱がすっと引いていく。


「気づかれたかしら」


スマホに映る晴に問いかけた。


「理事長と手を組んでいるの?」


三日月型に目を細め、晴の顔をそっと撫でる。


「やっぱり、私とあなたは、ロミオとジュリエットなのね」


瞳の奥に、冷たい光が宿った。


 ホームルームでの連絡事項を終えた目白は、ぼさぼさの頭をかきながら、バインダーを閉じた。


「以上だ。散会。とっとと帰れー」


目白は日直の挨拶を待たずに教壇を下りると、葵、晴、麗を指差した。


「おまえたち3人は、俺と来い」


覇気はないのに、有無を言わせない眼光で射抜かれた。

 訝し気な表情の葵と晴と連れ立って、目白の後についていった。


「入るぞ」


目白はノックもなしに理事長室に入り、ソファに腰を下ろした。理事長は立ち上がり、目白の向かいに座ると気さくな笑みを浮かべた。


「目白さん、お疲れ様です」

「はあー。だるい」


背もたれに背中を預けて、天井を仰いだ。


「おじさんと目白先生って、知り合い?」


晴が尋ねると、理事長は曖昧に頷いた。


「あー、まあな。お義兄さんに紹介してもらったんだよ。腕の良い人を」

「教師らしさ皆無だぞ。どう見てもウラの人間だろ」


斜に構える葵を、目白は鼻で笑った。


「教師の腕なわけねーだろ」

「目白さんは、掃除屋さんだよ」


葵と晴は納得したように頷くが、麗は首をかしげた。


「掃除屋さん?」

「色々な意味の事後処理をされていてね」



理事長は目尻の皺を深くする。どんな意味なのか、麗に聞く勇気はない。


「以前から、公になるとまずい学院のあれこれを処理してもらっていたんだ。町田先生と葉山先生のこともね」


貼り付いた笑みが、麗の背筋を凍らせる。


「ついでに、君たちの担任の穴埋めをお願いしたんだよ」

「人遣いが荒い」


目白は眉間を押さえて、低く唸った。


「いやあ、すみませんね。ウラ風紀委員の顧問もお願いしてしまって」


葵、晴、麗は同時に顔をしかめ、困惑の眼差しを目白に向けた。


「は?」

「ん?」

「え?」


3人の視線を受け流し、目白はだらしなく大口を開けて欠伸をした。


「めんどくせえ」



 パソコンのキーボードを打ち鳴らす音。

 書類にペンを走らせる音。

 早口でまくし立てる声。

 忙しなく騒々しい生徒会室の片隅。

プリンターから次々と用紙が出てくる。


「会長、できました!」


澪は用紙を受け取り、微笑んだ。


「ありがとう。ご苦労様」


立ち上がって、手を2回打ち鳴らす。


「皆さん」


しんと静まる室内に、プリンターの稼働音が響く。


「明日からのクリーン運動、宜しくお願いしますね」

「はいっ!」


生徒会役員の声が揃う。

 澪は用紙に目を落とし、「クリーン運動」の文字をなぞった。


 次の一手、あなたたちはどう打ち返すかしら。

 

 薄い唇から、小さな笑みがこぼれた。



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