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白いワンピースの少女に連れられたそこは、サカサマの世界。時渡りの運命に導かれて、同じ時間を繰り返し廻り続けることに......。  作者: 蒼生芳春
第2部

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51 魚が降る日

 オウゾと会った翌日、カイたちは王立区画にいた。

 ティズとタツは、予定通り、貧困区画に残り、住民の避難の段取りを進めている。だから、ここにいるのは、カイ、アイラ、リナ、ステルンの4人。


 王立区画は、昨日までいた貧困区画とは異なり、石や木でできた豪華な装飾があしらわれた建物が並んでいた。歩く人も小綺麗な服に身を包み、およそ同じ町の中とは思えなかった。

 特に、今日は、建国記念日ということで、皆浮足立っているようで、お祭り騒ぎのような状態だった。


「.....たしかに、オウゾの言う通り、雨が降りそうだな」


 ステルンはリナの肩に乗りながら上を見ている。

 カイも見上げると、確かに、空に広がる海はいつもより濁っているように見えた。


「それにしても、ホントオシオ王万歳って感じね。どこもかしこも、王様の顔ばかりね」


 アイラはまるで苦手な物を食べた時のような顔をしながら、厭味(いやみ)ったらしく言った。


 アイラの言う通り、町の壁の至るところにオシオの似顔絵が掛かれたポスターが貼られていた。オシオの顔は壮年期の男性の容貌で、顎にはひげを蓄えていた。目つきは鋭く、威風堂々という表現がまさに当てはまるような姿である。


――オシオは幼くして王になっている。幼くといっても、生まれた時が60歳で、王になってから10年ぐらいだったはずだから、今は50歳ぐらいか。


「それにしても、貧困区画も酷かったが、ここも、別の意味で変わらないぐらい酷い場所だな」


 カイがそう言うのに理由がある。


 カイたちは王立区画に入ると、ちょうど処刑台にやせ細った二人の男女が並んでいるのが目に入った。顔に生気はなく、視線も空を泳ぐ。手の甲に焼き印も見える。

 それをここにいる住民は酒を片手に、はやし立てるように野次を飛ばしていた。


「はやくやれ!」

「なるべく苦しんでくれ!」


 炎諏佐(えんずさ)の兵士は笑いながら剣を首をめがけて振り下ろしていた。


――こんなことを許す王はどんなやつなんだ.....。


「このくそみたいな国の王様は、ここにある城にいるらしいな」


 カイの左には、一際大きい城がある。王立区画の壁の向こう側。

 名称のとおり、城の外壁には、稲妻のような線が赤く描かれており、遠くから見ると、真っ赤な城のように見えるはずだ。


「この城には、どうやって入りましょうね? 先ほど入り口を見ましたけど、やっぱり兵士が沢山いましたね」


 リナは困ったかのように頸を傾げる。

 

 カイははっきりと答えた。


「オウゾが言ってただろう? 混乱に乗じて入るんだ」



 それからカイたちは、赤き城の入り口が見える場所で、機を待った。あの瞬間を.....。


 ぽつん。


 カイの頬に一粒の雨が降り落ちる。


――来た!


 一粒の雫は徐々にその数を増やし、雨音が町中に響き渡る。そして.....、


 その雨に交じって、時折大小様々な魚も降りはじめた。カイは雨を少し舐めると、塩辛。確かに海水だった。


「おい! 魚降りだ! ぶつかったら怪我するぞ! 建物に隠れろ!」


 赤き城の入り口にいた兵士が叫ぶと、皆建物内に避難をしていく。


「王立区画の皆に何かあってみろ。懲罰だけでは済まされないぞ!」


 隊長らしき一人の兵士が他の4人の兵士に力強く命じる。

 そして、入り口にいた5人の兵士は、持ち場を離れて、町に駆け足で散り散りになって行った。


「本当にオウゾの言った通りになったな。入るぞ」


 カイがそう言うと、皆、駆け足で赤き城の入り口を抜けた。

 

――ここが赤き城か。


 城の中は、外壁と同じように赤い稲光のような線があったが、近くでみて初めて気が付いた。これは、描かれているのではなく、配管のようになっており、その中を溶岩が通っている。溶岩がぬるっと動く様はまるで配管が呼吸をしているように見える。


「すごいな、これは。何のためにこれがあるんだ?」


「王都フレメルナでは、溶岩の熱交換を利用してエネルギーを作っているんです。この配管を伝って、熱交換システムまで運ばれています。だから、ほら。城の中も明るいでしょう」


 確かに、城の中は赤色灯の明るさに包まれてる。


「ここからは、最短距離で行こう。実験区画は地下で、オシオのいる玉座は最上階だ。実験区画には、リナとステルンで、玉座には俺とアイラで向かう」


「途中に会う兵士たちはどうする? やり過ごす?」


 アイラがカイに尋ねた。


「いや、ここからは誤魔化しは効かないだろう。通路も狭く、隠れてもどうせすぐに見つかってしまう」


「それじゃあ......」


「ああ、大暴れの時間だ」


 カイの顔は不穏な笑顔が浮かんでいた。 

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