48 王都フレメルナの玉座
炎諏佐の王オシオは玉座に深く座り、ひじ掛けに頬杖をついている。
朝のこの時間は、各兵士から報告を受ける刻。オシオは、この国のすべてを把握するために毎朝この場を設けている。
「それで、時織は見つかったんだな?」
兵士は表情を硬くしたまま答える。
「はっ! 名をミレナ・エイーブ・タリア。もともと星環砦で働いていた研究者のアイーダ・エイーブ・タリアの孫とのことです。旧都ノクシアで、王立図書館に出入りしているという情報を得て、その場で拘束、連行をしております。どうやらクロノヴェールを作る練習をしていたようで、時織で間違いないかと」
「よくやった。今こちらに連れてきているんだな?」
「はっ! 最初はだいぶ暴れていたようですが、昨日の夜には旧都ノクシアを出発しているので、本日中に王都フレメルナに到着予定です」
オシオは目を閉じ、妻であるアリアのことに語りかける。
――この力が完成すれば、この世界を統べる日は近いぞ……、アリア。
「到着次第、我の前に連れてこい」
「はっ!」
兵士は返事をし、オシオの前から下がった。
すると、細身の女性が玉座の前に足音を立てずに現れ、無駄な動作を一切することなく跪いた。まるで毒のような黒みが混じった紫色の髪だけが遅れてわずかに揺れる。腰の革鞄には、何かがぎっしり詰め込まれていることがその膨らみから見て取れる。
「オシオ王、よろしいでしょうか」
「シャーデン、許可する。話せ」
シャーデンと呼ばれた女性は「はっ!」と短く返事をした後、話をし出した。
「以前から研究しておりました爆発性の遺物であるダイナマイトですが、量産化が完了しました。先日の実験でもうまく起動しましたので、実践投入になんら問題ございません」
「よくやった。捕らえている天照の魔術師どもは?」
「ええ、そちらも滞りなく」
シャーデンの声はどこか冷たく、感情がない。
「王様! 俺様もいいか?」
突然、王の間を揺らすほどの大きな声が聞こえる。
ローブを羽織った大柄の男がシャーデンの隣に並ぶ。フードを深くかぶり、その顔は見えない。
「場を慎め、ネイフ! いつも言っているが、王に対してはもっと敬意を――」
シャーデンはその男、ネイフを睨みつけるが、ネイフは全く気にも留めていない様子だった。
「いい、シャーデン。ネイフ、話をしろ」
オシオは顔色一つ変えずに言った。
その様子を見て、ネイフはシャーデンを一瞥する。その口元は笑っていた。
「今、旧都ノクシアには、フラガルトの奴らがいるんだろ? ずっとウラルフの場所がわからなかったが、叩くなら今じゃないのか? 俺様に行かせてくれよ」
「ネイフ、それなら心配いらない。先日の爆発実験は、戦いの狼煙だ。奴らは必ずこちらに来る。だから、その時まで、準備を整えろ」
「……そうなのか。それならわかったぜ、王様」
「シャーデン、ネイフ。時の輪が動き出し、攻勢の日は近い。各自、準備を怠らないように」
「はっ」
2人は力強く返事をした後、玉の間をあとにする。
2人が退くのを見届け、オシオは再び目を閉じる。何かを考える時の癖だ。
――複才のシャーデンと暴虐のネイフ。お前たちは、私の駒だ。今回も駒らしく、与えられた役割を果たしてもらう。




