39 タツとの共同作業
「なあ、カイ。なんでこんなにロープが必要なのか知ってるか?」
タツが大量のロープを手に不服そうな顔をしている。
「さあ、俺も聞いてないからな。今回の作戦で使うんだろうけど......」
リナの指示で、作戦会議の翌日、カイとタツは、朝から町中のロープを集めて、それを一つずつ結んでいき、1つの長いロープを2つ作っている。
「もしかして、これに、なんだっけ? 遺物のあれだ。あれをくくりつけるのか?」
「ダイナマイトのことか? そうかもしれないけど、くくりつける意味があまりわからないな」
――もしかして、このロープがダイナマイトの導火線代わりなのか? ただ、リナたちに、そこまでの知識があるとは思えないけど。
「まあ、よくわからないけど、こっちは終わったぜ! カイの方も終わりそうだな?」
タツは結び終えたロープを手に取り、掲げていた。
「ああ、こっちも、これで全部結び終えた」
1つのロープの長さは優に30メートルは越えていた。
ロープ自体は種類がバラバラではあったが、リナから決して解けないようにと言われていたので、きっちり結び、ちょっとやそっとでは取れないようになっていた。
「で、これをどうするんだ?」
タツはそう言って、地面に座り込んだ。もうかれこれ半日は作業をしていたので、タツも疲れたのだろう。
「あっ、できたんですね」
リナが何やら重そうな袋を持って、こちらに歩いてきた。
「リナ、結び終えたけど、これをどうするんだ?」
「1つは王都まで持っていきます。もう1つはこれを使ってください」
リナはそう言い終えると、袋を地面に置いて、中身を取り出した。
リナが手に持っているのは、大きな釘であった。
「今度は、その釘で何をするって言うんだ?」
カイの疑問をよそに、リナは笑っていた。
カイとタツは、今度は町にある大きな広場に来ていた。リナが言うには、今作ったロープで大きな円を作り、それが外れないように釘でしっかり打ち付けてほしいとのことであった。
もう既にリナは行くところがあるからとどこかに行ってしまった。
カンカンと釘を石で打ちつける音が広場に響き渡る。
「なあ、カイって昔からそんなに強かったのか?」
タツが釘を打ちつけながらカイに話かけてくる。釘を打つ音が弱い。だいぶタツは飽きてきている。あまり単純作業は好きではないようだ。
タツの質問に対して、カイはどうやって話をすべきか一瞬躊躇したが、タツにはなぜか自然と話ができそうな気がして、一呼吸を置いてから、話し出した。
「昔は全くだったよ。むしろ、俺、友達もいなかったし、運動も勉強もダメダメ。自分で言うのもあれだけど、母親が亡くなって、次に親父がいなくなって、当時は完全に塞ぎ込んでいたんだ。自分には何もないってね」
「そうだったのか。どんな両親だったんだ?」
カイは釘を打つ手を止めた。
「母親は俺が小さい頃に亡くなっているから、そんなには明確な記憶はないけど、すごく優しかったのを覚えている。なんでも俺を肯定してくれる雰囲気に包まれている人だった。親父は、母親がいる時はよかったけど、母親がいなくなってからは、親父も完全にダウンしちゃって……。親父は母親が大好きだったんだと思うけど、俺たちのことは完全に二の次になった。そんな親父に失望してたよ」
タツも釘を打つ手を止める。一陣の風が強く吹く。
「そうなんだな。じゃあ、俺様と同じだな」
カイが「同じ?」と聞き返すと、タツは話を続けた。
「俺様も友達なんていなかったぜ。俺様は、始原族の母親と焔鱗族の父親の間から産まれてるんだ。だから、産まれてからずっと呪われた子として、周りから避けられてきてたんだ」
「そうだったのか。でも、これでわかったよ。だから、タツやタイガさんは、他の焔鱗族とは少し見た目が違うんだな」
タツは小さく頷いた。
「それに、うちの親父はろくでもない人で、酒におぼれて、おふくろや、俺様、タイガ姉ちゃんをよく殴ってきてたんだ。そんな日々が続く中、酒に酔った親父が剣でおふくろを切りつけようとしたことがあったんだ。それをタイガ姉ちゃんが止めてくれて、それ以来、親父は帰ってこなかった。きっと、タイガ姉ちゃんに負けたのが恥ずかしかったんだ」
「タツも親父を恨んでたりするのか?」
「全然。うちのおふくろがよく言っていたんだ。あの人は弱い人だって。だから、弱いやつには俺様はなんとも思わない」
タツの言葉を聞いて、カイの胸が細い紐で縛られたようにきゅっと苦しくなる。
――弱い? 大人が?
「タツは強いんだな。俺なんかよりだいぶ強い」
「何を言ってやがる。カイの方がよっぽど強いだろ? 俺が聞きたかったのはどうやってそんなに強くなっただ」
カイは「はいはい」と言いながら釘を再び打ち付け始めた。先ほどよりも少し小気味よく、そして、力強く。
「おい、カイ! 聞いているのか? どうやって強くなったか教えろよ。俺様は、もっと強くなりたいんだ」
太陽が炎諏佐の国と天照の国の間にある山脈に沈みかけて、頭上にある海をオレンジ色に染めている。風が当たると、幾分涼しく感じる。
この世界に季節があるのだとすれば、夏が終わりかけているのかもしれない。
いつしかロープの円も、完成した。直径で言うと10メートルぐらいだろうか。
――さて、できたものの、これをどうするんだ?




