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反転世界~白いワンピースの少女に連れられたそこは、サカサマの世界。時渡りの運命に導かれて、同じ時間を繰り返し廻り続けることに~  作者: 蒼生芳春
第2部

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37 作戦会議

 カイは作戦会議が行われるノクシアの町の外れにある酒場にいた。


 リナに言われたとおり、酒場の店主に、合言葉である「日輪華(にちりんか)」と伝えると、裏に通され、そこには円卓が置かれていた。まだ誰も来ていない。


 カイは椅子に座る。

 壁には窓1つなく、木で彫られた彫刻が壁一面に敷き詰められている。彫刻には戦争を表しているのか、複数の剣士が剣を構えたり、戦っている様子が描かれている。その彫刻は力強さと圧迫感を与え、この部屋の空気に緊張を帯びさせる役割があるかのようだ。


――なんとも密談する場所という感じだ。こんな場所に誰が来るんだ?


「あー、いた!」


 突然入り口のドアが開いて、小柄な女の子が部屋に入ってくる。ピンク色の髪は綺麗に左右に2つでまとめられ、整った顔はどこかのアイドルを思わせる。ただ、そんな可愛らしい顔に反して、その身を剣士が身に着けるような銀色の甲冑で包まれ、腰には剣も携えている。


 カイが突然の来訪に言葉を失っていると、その女の子はカイの隣に座り、目を輝かせてカイの方を見てくる。


「あなたがカイね! 会いたかったわ」


「ああ、そうだけど……」

 カイは勢いに圧倒されて、口ごもる。


「突然、ごめんね。私はアイラ、アイラ・メール。それよりも、注文はもうした?」


 カイは、この子が何を言っているのか理解するのに時間がかかった。


「注文?」


「えっ、もしかして、まだしてないの? それじゃあ、早く注文しちゃいましょ。他の人が来たら、決定権が奪われるわ。私は誰にも食べ物の決定権は渡さない主義なの」


 アイラはそう言うと、店主を呼び、メニューを受け取ると、瞬時にすべてのページを見たうえで注文をし出した。


「えっと、コムの葉とクル魚のサラダ、ハツカ鳥の丸揚げ、バッグ野菜のスープ、それと、ホロウ牛のステーキ、それと……」


「おいおい、そんなに食べるのか?」

 

 カイが思わず止めに入る。


「もちろんよ。お金は全部リナが出してくれるから心配しないで。なんてたって王女様だからね。それにこのお店には他では見られない料理が沢山あるの。なんせ裏ルートから仕入れている食材だからね」

 

 アイラは再び店主の方を見た。


「あと、ギルガメッシュのコンフュに、デザートに、グーパスのアイス添え。今言ったのを6個ずつ持ってきてくれるかしら?」



――6個ずつ!? ここには何人が集まるんだ? 見たところ、椅子は確かに6脚あるが、椅子が全部埋まるのかわからないし、6人が揃ったとして、みんながこんなに食べるわけがない。


「今日はここに何人来るのか知っているのか?」


「私も知らないわ。私とリナは同じ天照の国の出身で、幼馴染みたいなものだけど、他に誰が来るかまでは聞いてないわ」


「ちょっと待ってくれ。そうすると、今6個ずつ頼んでたけど、当てずっぽうで数を頼んだのか?」


 アイラは一瞬きょとんとした後、笑顔になった。

「何言ってるの? 全部私が食べるのよ」


 カイがアイラの言ったことをすぐに理解できず、あっけに取られていると、また扉が開いた。

 今度は、老練の男が部屋に入ってくる。男は顎髭を生やし、深緑色のローブを身にまとっていた。いかにも魔法使いであると標榜しているような見た目をしている。


 その男はカイとアイラを一瞥すると、何も言わずアイラの隣に腰を下ろした。


 アイラはその男の方に体を向けて話しかける。


「あなた、お名前は?」


 男はアイラの方を一切見ることなく、返事もしない。アイラは「おーい」と言いながら顔の前で手を振って見せたが、やはり反応がない。


「きっと疲れているのね」

 

 アイラはカイの方を見て肩をすくめていた。


 そして、再びドアが開くと、今度は、リナ、ステルン(リナの肩に乗っている)、そして、タツが部屋に入ってきた。


「タツ! なんでお前がこんなところに?」


 カイが立ち上がり、声を上げた。


「カイ! 今度は俺様も一緒についていくぜ。前回の時限竜との戦いの時のような無様な真似はもう見せないぞ!」


 タツが雄たけびのような大きな声で宣言をする。アイラはその声の大きさに目を見開いていたが、やはり老練の男は微動だにしていない。

 

 カイはその様子を見て、うつむいた。

 

――なんともカオスな空間だ。


「タツはフラガルトの仕事で忙しいんじゃないのか? それに、今回の作戦は聞いているだろ? 王都に攻めるんだぞ。フラガルトの規律とか問題にならないのか?」


「きっと大丈夫だ! 問題ない!」


 タツは間髪入れずに答える。


――タツはきっと何も考えていない。


 カイはため息をついたが、何を言っても無駄なので、そのままにしておくことにした。


 リナは、この不思議な空気感には全く気が付かない様子で、両手で手を打ち鳴らした。


「それじゃあ、これでみんな揃ったから、作戦会議をはじめましょう」

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