25 リナの決断
「カイさん......」
あのヴァースを圧倒していた。天照の国ですら倒せる人がいるかどうかと言われているヴァースをあそこまで圧倒する姿に、リナは驚きを隠せなかった。これまでの動きで、カイの強さは分かっていたが、まさかここまでとは思っていなかった。
――あの人は一体......。
カイは、始原族しか使えない始まりの才を使っている。始まりの才に目覚める人自体、限られている。100万人に1人の割だ。それに始まりの才に目覚めたとしても、使いこなすまで時間がかかる。それをあそこまで使いこなすとは......。
「カイさん!」
リナはカイに声をかける。
「ああ、終わったよ。これでようやく......。ようやくだ。長かったが、もう大丈夫だ」
カイはその場に座り込んだ。
――長かった? あのヴァースが相手にならなかった。あんなに一瞬で終わったのに......。
「カイさん、それよりも、始まりの才を使っていましたよね? あなたも使えるんですね」
「そうだね。ようやく使えるようになった感じだけど。てか、その言い方だと、リナも使えるのか?」
リナは静かに頷いた。「分析用ではありますが、試しにカイさんに使ってみていいですか? あなたの力を測ります」
リナはカイの隣に座り、目を閉じる。これを使う時、魔法を使うよりも集中する。全身のエネルギーを頭に持ってくるイメージ。体に流れる力を丁寧に持ち上げるように、つま先からてっぺんまで引き上げ解放
頭にため込んだエネルギーを右目に集め、一気に解放するように目を開く。
リナの瞳が青く光る。
「始まりの才・創析」
――これは......。
始まりの才・創析は、対象の能力を測ることができる。対象の能力が片目に青白い文字で浮かび上がる。
カイ(始原族・出身:不明)
【能力値】
1342クオーツ
【始原の才】
原命
他人の始原の才を、自分の才として使うことができる。
【契約の精霊】
闇
【メモリス】
リオンのメモリス(定着)
リナはカイの能力を見て驚いた。
クオーツはその者の戦闘力を測る単位である。一般的な兵士の数値は50、多くても80前後のことが多い。カイはそれを大幅に超えて、1000以上を示している。この数字は、各国の隊長クラス、いや、もしかするとそれ以上かもしれない。しかも、始原の才はその者の個性を体現することが多いが、カイの始原の才は、今まで見たことがないものだ。
「カイさん、あなたの始原の才はどんなものか理解していますか?」
「ああ、時間を少しだけ戻したり、止めることができるんだ。まだできるのは2秒がやっとってとこだけどね。なんか使い道があるようで、難しいんだよね。ヴァースみたいな素早い攻撃が来るときはすごく便利なんだけど、どうも使いどころがまだわかっていないんだよね」
カイはどこか遠くを見るように答えた。
――わかっていない。教えるべきだろうか。
リナは、カイが味方なのか敵なのか即座に判断ができなかった。今は間違いなく味方ではあるのだが、リナにとって味方か敵の基準は、天照の国のために戦ってくれるか否かだ。カイは成り行きに任せてここまで来ているが、将来、炎諏佐の国につくことだってあり得る。そうなると、間違いなく、天照の国の敵となる。
リナは、これまで、カイについて疑いの目で見てきた。カイは、なぜか何事もまるで知っていたかのような反応をする。それにカイはどこから来たのか絶対に答えない。何かを隠しているのは明白だ。創析で見たとき、出身が不明とも出ている。こんなことは初めてだ。カイはどこかこの世界での特異な存在である。
だからこそ、リナは出身が天照の国であることは正直に話をしたが、それ以外のことは真実を伝えていない。両親が医者というのは全くのデタラメだ。心苦しい気持ちがないかと言われれば、嘘になるが、これも大義を果たすため......。
――私は本当は......。
リナは教えない決断を下す。
「そうなんですね。とりあえず、分析の結果、カイさんは各国の隊長クラスか、それ以上の力を持っています。ヴァースをあそこまで圧倒できるのは納得です。それよりもそろそろヴァースにとどめをさしておいた方が......」
リナがヴァースの方を見ると、ヴァースはその場におらず、血が星環砦の入り口の方まで続いていた。
「逃げたか?」
カイのその声は静かだった。
「ここで彼とは決着をつけないといけません。追いましょう」
リナは足を地面に強く押し当てて、立ち上がった。




