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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
68/228

名犬勇者エクスギャリワン①

 そのしろはまるで地獄じごくから来た巨大きょだい悪魔あくまに見えた。


 コストも耐久性たいきゅうせいも全く考えていなさそうな無意味な形状とつのまどなのか何なのかよくわからない不気味な光を放つ半透明はんとうめいのパネルが沢山たくさん。嵐の中、ガンメタリックの外壁が雷に照らされる。


 雷鳴は城の中にもひびく。無機質な床と壁に囲まれた広大な空間、その中央を渡るようにかれた長大な赤絨毯(じゅうたん)。その先にあるのは角と髑髏どくろという悪趣味あくしゅみ装飾そうしょくが施された玉座。座るのは頭にアルミホイル製の帽子ぼうしを被り、白衣をまとう男だ。


「また奴の仕業しわざか、ゲイリー」


 玉座に座る男に名前を呼ばれたモヒカンヘアーに肩パッドの男――ゲイリーは、赤絨毯あかじゅうたんの上で片膝かたひざをつき、こうべれている。


「暗黒ロボ三体は『エクスギャリワン』に全て破壊はかいされました。申し訳ございませんハライータ様。私、腹をっておびを」

「よい」


 玉座のアルミホイル男――ハライータ・フック二世は右手を前に上げ、ゲイリーを制止した。


「今貴様を失えば、それこそゴロゴロ団の壊滅かいめつ必至ひっし誠意せいいはエクスギャリワンの首をもって示せ。ベンピ!」


 ハライータがその名を呼ぶと、一陣いちじんの風とともに、赤絨毯の上にもう一人、ドレッドヘアーに肩パッドの男――ベンピが片膝をついて現れた。


「ベンピ、参りました」

「ゲイリーとともにエクスギャリワンを討伐とうばつせよ。一度段取りをるがよい。必要なものがあれば用意する。ゲイリーもよいな?」

「かしこまりました」


 ゲイリーとベンピは闇にけるようにその場を後にした。


 ハライータは頬杖ほおづえをついて、雷鳴が響く暗い玉座の間でひとりごつ。


駄犬だけんが……今に見ておれ」




 ◇ ◇ ◇




「どう思う?」

「いやー」

「だって、ねぇ」


 地上艦「レトリバー」。いつも通り食堂にたむろしているカリオ・ボーズ、ニッケル・ムデンカイ、リンコ・リンゴの三人の傭兵ようへいは、タブレット端末に表示されている傭兵募集(ぼしゅう)の求人票を見ている。




〝世界征服を企む悪のゴロゴロ団との戦闘の補助ほじょ業務ぎょうむ経験豊富けいけんほうふな勇者が同行します。報酬ほうしゅう八千万テリ、加えて気分でボーナスあり――カブーム博士〟




「いや……本当にあやしい求人ってのはもっと上手に怪しさをかくしてるはずだ。例えば簡単な運び屋業務かつちょっと高めの報酬で、一見オイシイ仕事だけど、実は中身が都市トップレベルの重鎮じゅうちん機密情報きみつじょうほうとかですごい危ないとか……つまり《《怪しさしかない》》この求人は……アリなんじゃないか!?」

「なるほど!」

「何もナルホドくねえよ!?」


 ニッケルの考察こうさつ納得なっとくしかけるリンコにカリオがすかさずツッコミを入れる。




 仕事のいそがしさというのは、時折ときおり予想だにしないタイミングで乱高下らんこうげすることがある。原因不明の客の減少。知らぬ間に経営不振(けいえいふしん)おちいっていた取引先。


 東へ進むレトリバーの傭兵達は、赤い機体――フライデと激しく戦い、シノハラシティで休暇《休暇》を取ってから五日、まだ次の仕事を取れていなかった。フライデとの戦いの後、三週間近く無収入の状態になっている。


「この辺一帯の求人全部()まってるとはなあ。なんか同業者が集まるような話でもあったか?」


 ニッケルがあごに手を当てる。貯金こそまだあるが、流れとしてはよくない。食費・維持いじ費で削れていけば、かんやビッグスーツの運用に大きな支障をきたすことになりかねない。




「……一応、面談はあるのか」

「顔合わせだけでもしてみる?」


 カリオとリンコも眉間みけんにしわを寄せて画面をにらみながら考えている。そこへ艦長のカソック・ピストンがやってきた。


「調べてきた。近辺きんぺんのマフィアと街の間で緊張きんちょうがかなり高まっているみてえだな。両者大量に傭兵を雇ってにらみ合いが続いている。規模きぼの小さい他のワルどもは迂闊うかつに手を出せねえほどらしい。大方の予想では大規模だいきぼな交戦にはならず、そのうち沈静化ちんせいかするとは言われちゃいるみてえだが……」

「そっちで手一杯になってるから他の依頼いらいを出している余裕はないって感じか」


 ニッケルはカリオとリンコと目を合わせる。


「……一回、会ってみるか。カブーム博士」

「他にないんだったらなぁ」

「ダメだったらどこかのレストランで皿洗いでもしよっか」


 三人はそう決めると、ため息をついてテーブルにした。




 ◇ ◇ ◇




「ボン! 面談に来てくれることになったぞ!」


 白髪は黒焦げ、顔はすすだらけになっている白衣の男――カブーム博士が部屋の奥から誰かを呼ぶ。


 ヘッヘッヘッヘッヘッヘッ……


 その声に応えるように、フワフワの白い毛に包まれた小型犬が姿を現した。




(名犬勇者エクスギャリワン②へ続く)

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