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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
65/228

ファスト・フィスト・ビースト⑤

 「さて、まずは」


  ニヌギルの両隣りに浮かぶ拳が独特の駆動音を上げ、再び高速で前方に飛び出す! ショウとナスビ、レイラの三人は体勢をくずしながらも回避する。


(マズい! 間に合わない……!)


 レイラは拳の向かう先を見る。戦闘に気づいてすらいないであろう、鈍重どんじゅうな二足歩行機械のに乗ったスカベンジャー達。ショウ達が拳を避けた時点で――否、この場所へ足を踏み入れた時点で彼らの生死は決まっていた。


 ゴギャンッ!


 圧倒的な質量と速度の拳の衝突で、スカベンジャーの機体が吹き飛び、破壊される!


 ゴギャンッ! ゴギャンッ! ゴギャンッ! ゴギャンッ!


 拳は飛行して一機、時には二機(つぶ)すと旋回せんかいし、別の機体を潰す行動を繰り返す。


「このっ!」


 ショウはヒート忍刀にんとうでニヌギルに斬りかかる。ニヌギルは身体をひねってかわすとオールリの背中にひじ打ち(うち)を入れる。


「ぐあっ」

「動きが乱れとるのお、集中できんか。アレらのことを考えるのは無駄じゃ、見ろ」


 ゴギャンッ!


 ニヌギルと距離をとりながら、ショウはスカベンジャー達のいた方向を見る。


 ――既にそこにまともな形をした機械はなく、いびつにへこみ、折れ曲がり、千切れた金属のかたまりが転がっているだけだった。




 ギュワッ!


 スカベンジャー達を蹂躙じゅうりんした拳はショウ達にねらいを変えて、飛んでくる!


(ショウさんが斬りかかって反撃していた時も、あの拳は止まることなく動いていた……自律じりつした兵器なのか、あるいは他の行動を取りながらでも操作できるという事なのか)


 レイラは思考しながら空中を高速で移動する。サタデと手型兵器、両方を視界に入れるように立ち回らなければたちまちスクラップにされるだろう。ショウとナスビもそこに注意しながら位置をすばやく変える。


 ゴオッ!


 拳の速度はかなり速く、まるで銃弾じゅうだんがそのまま巨大化したようにも思えた。レイラは体を思いっきり反らして飛んできた拳を避け、そのまま一回転しながら地面に着地する。


 ゴオッ!


 もう片方の拳がナスビを狙う。ナスビは身体を捻って避けようとする。が、間に合わず、拳が左肩をかする。


「ぐあっ!」


 掠っただけ。それでも人間に大型トラックがぶつかるようなものだった。ナスビのヤマガラは回転しながら大きく吹き飛び、地面に落下した。


「ナスビ!」


 ショウは一瞬、ナスビのカバーに入ろうと考えた。しかし、目に入ってきたモノを見てすぐに後方へ全速で飛行する。


 拳だった左右の手が大きく指を広げた状態で、ショウをはさつぶそうとしてきていた。


 バァアン!


 強烈きょうれつ衝撃音しょうげきおんが辺りにひびき渡る。左右の巨大な手が、手のひらを合わせる形でくっついていた。


 左右の手が離れる。ショウはそこにはさまってはいない。なんとか後方に回避して地面に着地していた。




 バババババ!


 ニヌギルは上空からビームマシンガンでレイラを狙って撃つ。レイラはジグザグに動いて避けながら、攻撃の機会をうかがう。


(手の形をした兵器、存外速く、よく動く。機体側の動きにも注意しなくてはならないし、それに――)


 レイラの上から影が落ちる。左の手が大きく指を広げ、彼女の機体を叩き潰そうと急降下してくる!


 レイラは器用に指の間に機体を滑り込ませる。同時に一本の指を剣で斬りつけていく。甲高かんだかい金属音が響く中、レイラの機体は指の間から完全に抜け出た。斬りつけた指には傷跡きずあとが残っているものの、機能を停止、ないし低下させるほどのダメージは与えられていない。


(――見た目通りの頑強がんきょうさと重さ。やはり、私の『ショパン』と剣の実力でこの手の形をした兵器を破壊するのは難しそうですわね。狙うなら操作側、機体の方――!)




 地上に落下したナスビは急いで機体を起こす。


いたぁー! いや! ビッグスーツ初実戦にしてはハードすぎるやろ! ってか調査やっつってたのに流れるようにドンパチやってるし!」


 ナスビは左腕を動かそうとするが、すぐに痛みで顔をしかめた。


(やっぱ痛っ! ……でも印を結ぶのは出来るな、どうしよ……)


 右の手がショウをらえようとしつこく追尾ついびする。ショウが両手で印を結ぶと、追って来る兵器とほぼ同じ大きさの、巨大な火球が出現する。火遁かとん・火の玉の術【緋雲ひうん】!


 ボボォン!


 赤い炎が右の手を包み込む――だが右の手はすぐにそこから無傷で飛び出してきた。


(アカン、炎は通らへんな。水か雷も試すか悩むが、アレだけの兵器に電気系統のトラブルは望み薄やろな……なら!)


 ショウとナスビはほぼ同時に両手で印を結ぶ。


(狙うなら操作側!)

(機体の方や!)




 ボボボゥン!


 ニヌギルは目を丸く大きくして少し驚く。周囲一帯に十何体ものオールリとヤマガラが出現する! 分身の術だ!


「これは面妖めんような! 〝ワシらの時代〟にもこのようなモノはなかったぞい!」


 ギュワッ! ギュワッ!


 左右の手は分身数体を狙って飛び回る。分身がそれを回避すると、両の手はニヌギルの隣へ戻り、滞空する。


(ウチらの機体が搭載とうさいしてるHMBで繰り出せる最大数の分身や!)

(これ以上好き勝手はさせん、押し込むで)




(ファスト・フィスト・ビースト⑥へ続く)



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