表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
211/226

天上災禍⑳

 ピエンはアローフォームライフルで防御の姿勢を取る。敵の動きや攻撃が見えたわけではない。得体の知れない危機感が彼の本能を刺激し、身を守るよう肉体にうながす。


 ガギィン!


 その刹那せつな、ウィルティルの目の前にフライデが現れる。両手ににぎる銃に刀身が取り付けられた複合武器。その刃がアローフォームライフルと激しく衝突する。


(速い! これは……ダメだ!)


 右手でアローフォームライフルからダガーを取り出すピエン。だがその次に攻撃に転じることが出来ない。ルガルとはまた段違いのその速さを前にして、思考も体も置いてけぼりになってしまっていた。




 ガァン!


 響く轟音。超高速の実弾がフライデの頭部を射抜かんと迫る。イルタはチャカヒメのマークスマンライフルから放たれた弾丸を、身体をかたむけてけた。


(また避けられた……! せっかく修行したってのに!)


 歯軋はぎしりするリンコ。イルタは少し離れた位置でマークスマンライフルを構えるチャカヒメに視線を向ける。


(狙撃手……確か以前にやり合ったことがあったな。随分ずいぶん腕を上げたか、危うく当たるところだった。仲間が何人かいたような気がするが)




 再びフライデの姿が消える。目の端にほんのわずかな赤い影が見えたショウは叫ぼうとした。


「逃げ……」




 ゴォウ!!




 吹き荒れる突風。一瞬で何機ものS.B.A.T.や真千組のビッグスーツが斬り伏せられていく。ナスビはその最中さなか咄嗟とっさに身をひねる。


 ザシュゥ!


「ぐっ!」


 ナスビの右腕から血が噴き出る。その直後、ショウはヒート忍刀を構えた。


 ガキィン!


 激しい衝突音と共にフライデがオールリの目の前で姿を現す。振り抜いた複合武器の刃は、ショウの忍刀にヒビを入れ、じりじりと力をかけ続けている。


(こいつ……! 離れた位置から一瞬でここまで! それも一秒も経たんうちに五機以上のビッグスーツを斬りきざみおった!)


 斬り伏せられたビッグスーツはいずれも胸部を斬撃で激しくえぐられた状態で、断末魔の叫びも上げずに空を墜ちていく。


「う、うわあああ!!」


 ダダダダダ!


 難を逃れた味方は取り乱し、フライデに向けて手持ちの武器を乱射する!


「アカン! ショウが巻き込まれ――」




 バシィ! バシィ!


 ナスビが叫びかけた瞬間、バリアーを張った四基のウェハーが射線をさえぎり、ショウへの誤射を防いだ。ウェハーを操作するニッケルは残り四基でフライデへの攻撃を試みる。


 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 タイミングをずらして放たれるビーム。イルタはオールリを蹴飛けとばすと、最小限の移動で全てのビームを軽く避けて見せる。フライトユニットから蹴落けおとされたオールリの腕を、ナスビが落下先へ先回りして捕まえる。


「すまんナスビ、ニッケル!」

「離れるで、今のままやとええ的や!」


 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 ショウとナスビを狙う間を与えまいと、ニッケルは今度は八基のウェハー全てでフライデに向けて射撃を見舞う! だがイルタは猛スピードで飛びまわり、姿を消したり現わしたりしながらビームをかわす。


(リンコのマークスマンライフルも避けた奴だ。流石にドローンの射撃は当たってくれねえか……!)




 イルタは平然とした様子で周囲を見回す。


(ドローン兵器の男も以前に戦ったことがあるな。あっちの方は忍者の末裔まつえいか。実力はある。そして――)


 フォン!


 姿を消すフライデ。今度はオコジの目の前に一瞬で到達、その左手に握る刃をグウパンの胸部目掛けて振るう!


 だが刃は空を切った。オコジはイルタの行動を読み、大きくバックステップして攻撃を回避していた。


「次は俺んところ飛んでくると思ってたよ。俺たちを試すように動きやがって」

「……お前と弓の男は初めてだが、悪くないにおいがする。死合しあいを楽しめそうだ」


 ブォブォブォブォン!


 イルタの乱撃がオコジを襲う! あまりの速さに咄嗟に両腕を前で構えてガードを試みるオコジだが、鋭い斬撃はグウパンの前腕に容赦ようしゃなく傷をつけていく! コックピットのオコジの腕にいくつもの切り傷が生まれ、血が噴き出す!


「ぐああああ!」

「おじさん!」




 痛みにうめくオコジ。ピエンはアローフォームライフルを連射しながらフライデに向けて突進する! それに合わせてニッケルとリンコはそれぞれの武器で射撃し、援護えんごする。


 ズキュン! ガァン! バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!


 最小限のスライド移動で彼らの射撃を避けるイルタ。その頭上から接近したピエンが縦に一回転し、かかと落としを仕掛ける!


 ゴォウ!


 これも彼女は難なく躱す。だがその視界に密着状態でアローフォームライフルを構えるウィルティルが映る!


(ゼロ距離射撃……!)


 ズキュンズキュンズキュン!


 目にも留まらぬ速さのアローフォームライフルの連射! だがその光の矢がフライデを貫くことはなかった。そこにいるはずのフライデは姿を消し、何本ものビームは空を切る。


(……!? また消えた!)

「後ろだ!」


 ニッケルが叫ぶ。フライデはウィルティルの背後に回っていた。


 ザシュゥ!


 複合武器による斬撃がウィルティルの背中に入る! ウィルティルは大きく前に飛び退くと、サーズデの船体表面を転がった。ピエンは背中に走る激痛に顔をゆがめる。


「がっ……ぐっ……!」


 膝立ひざだちになるウィルティルの正面で、フライデは余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》といった様子で立っている。


「背中を斬ったのだから流石に殺したかと思ったが……よくねばる」

「遊んでないでそいつらを早く殺せイルタ。お前ごと艦砲射撃に巻き込んでもいいんだぞ」

「遊んでるワケじゃない。楽しいとは思っているが」




 ニッケルとリンコはそれぞれの武器の照準をフライデに合わせ、相手の隙をうかがう。その胸中にはあせりが出ていた。


(反乱軍と共和国軍の元エースがそろいも揃って重傷かよ……!)

(相変わらずイカレた強さじゃん! このままじゃデカブツとす前にやられちゃう!)







 ピピッ!


「……!」


 ニッケルとリンコのレーダーに影が映る。友軍の反応。ディスプレイに表示される「Retriever 3」の文字。


「……聞いてねえぞブリッジ! アイツが起きやがったならそう言いやがれ!」




 一方、マドクも高速で接近する一機の敵影を捉えていた。サーズデを何十もの敵機が包囲する中、新たに姿を現した一機を見逃してはいなかった。


「この状況でたかが一機増えたところで……いや、妙な感じがする……」






 ゴォオオオ!


 スケボー型フライトユニットに乗り、首の付け根から生えるシャンダナ・スタビライザーをなびかせながら、カリオの乗ったブンドドマルが猛スピードでサーズデに接近する!


「ホントデケェなインチキ要塞ようさい! 大丈夫なんだろうなみんな……!」




(天上災禍㉑ へ続く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ