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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
210/227

天上災禍⑲




 ◇ ◇ ◇




 ゴォーン!


 カリオの意識が回復したのに合わせ、急ぎブンドドマルの出撃準備を進めるレトリバー格納庫。そこへ雷が落ちたかのような轟音ごうおんと地震のような揺れがおそい掛かる。


「なんだ!?」

「さっき言ってたミサイルか!?」


 ハンガーに立つブンドドマルのコックピットで、カリオは緊張した面持ちになる。コックピットのすぐそこでタックがつばを飲み込んだ。タックは無線機に声をかける。


「おい! 外どうなったんだ!? みんなは……ニッケルもリンコも大丈夫!? マジかよ、いや無事に越したことはねえんだが。カリオはホントに出撃させていいんだな!?」


 カリオはくちびるを真一文字にした状態でタックが無線でブリッジクルーと話すのを見守る。通信を終えたタックはカリオの方を向くとうなずいた。


「おい、マジで出撃して大丈夫なのかよタック」

「よくわかんねえがミサイルは要塞に着弾する前に爆発したらしい。外の討伐隊は数機やられちまったらしいが……っと待った、セントバーナードから連絡だ」

「クソッ、空中要塞だの弾道ミサイルだの話で聞いているだけだと信じられねえし、心の準備が全然出来てねえんだけど……」


 言いつつカリオはブンドドマルのシステムモニターを確認し、異常がないことを指さしで確認する。


「カリオ、フライトユニットをセントバーナードから借りられる。すぐ出せるのは旧式らしいが速度はマンタ型より出るってよ」

「そう言われても外の状況が全然わからねえから何とも言えねえ……お、そのタブレットで映像見れるのかタック、見せてくれ……うおでっか! ヤベエだろこれ!」

「そうだよヤベエんだよ! 人手はいくらあってもいい! よし、行ってこいカリオ! 死ぬなよ! ……死ぬなよ!?」

「……無茶言いやがって!」


 レトリバーⅡの後方のハッチが開いていく。ブンドドマルは夕陽が差し込むそこへ、ハンガーを離れ歩き始めた。




 ◇ ◇ ◇




「そこに二機と……あそこに一機」


 高台からイルタはトゥーズデと交戦するウィルティル、グウパン、そしてチャカヒメを確認する。その視線が、今度は左へと向く。


「ニ十機ほど近づいてくる」




 イルタの言う通り、サーズデの広い船体の上側をビッグスーツの集団が飛んでくる。ニッケルのハネスケと、NISを含む都市の精鋭部隊だ。


「リンコ! 無事か! どうなりやがったんだミサイルは……ってうぉ!? アイツまさか」


 ニッケルの視線の先を、ショウとナスビも見据える。赤い長身の機体。


「クソ、とうとううてもたか……!」

「あれがカクタシティを潰した奴……」


 ハネスケの姿を確認したリンコは、スナイパーライフルを背中にマウントし、マークスマンライフルを取り出す。


「ニッケル! そいつが多分ミサイルを撃ち落とした! 気を付けて!」

「なっ……!? いきなり出鱈目でたらめ言ってくれるじゃねえか!」




 赤い機体に近づくにつれて、刺すような気がビッグスーツ乗りたちに襲い掛かる。ピエンとオコジ、ニッケルとリンコ、都市の精鋭部隊。皆これまで以上の危険を本能的に察し、フライデから一定の距離を置いて囲むようにして動きを止める。




ゆずれルガル」


 イルタは言った。


「おいおい、俺のお楽しみでもあるんだが――」

「馬鹿を言うな。せっかく二人になったのだから揃ってそいつらを片付け――」


 ルガルはすぐに言い返す。マドクも口を挟んだ。だが――




「譲れ」




 ――有無を言わさずイルタは同じ言葉を繰り返した。その目から放たれる気はフライデの身体を通し、周囲の人間たちに凄まじいプレッシャーを与える。


(冗談キツイね……ルガルとやらからもう一段危なくなっちゃうなんてさ……!)


 ピエンは鳥肌を立てて震え、歯をカチカチと鳴らす。その場にいた他の面子も自身の意識が飛ばないようにするので精一杯だった。




 ルガルは冷や汗をかきながら高台の上のフライデを見上げる。


「……」

「……」

「……わかった、退こう。門限まではもう少しあるんだが」


 ルガルは折れてため息をついた。マドクがそれを聞いて身を乗り出す。


「何を言っているルガル! イルタも我儘わがままを言うな!」

「済まないマドク。もし今イルタとやり合う羽目になったら俺もお前も無事では済まない」

「……フン!」


 ルガルは自分を見下ろすイルタに告げる。


「……この屈辱くつじょくはいずれ晴らす」


 ルガルが乗ったトゥーズデは上空へと飛び上がり、そのまま戦場を去っていった。




「なんだアイツ、どこへ……離脱、したのか……?」


 オコジは飛び去っていくトゥーズデを見て不思議に思ったが、すぐに乱入してきたフライデに視線を戻す。イルタはそこに会する一同を見下ろしながら、マドクに聞く。


「ルガルとやり合ってほとんど傷を受けていないのか。ニヌギルはどうした?」

「ニヌギルはとされた」

「ほう?」


 イルタは久々に自分の口角が吊り上がるのを感じた。


「ニヌギルより強くてルガルをも手こずらせるか。ここへ来てよかった――さあ、り合おう」




 次の瞬間、全員の視界からフライデが消えた。




(天上災禍⑳ へ続く)

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