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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
208/226

天上災禍⑰

 ドォン!


 ルガルは地面を強く蹴り、一瞬でウィルティルに肉薄にくはくやりを突き出す。ピエンは真上に飛んでこれを回避、同時に体をくるりと回転させながら、裏拳気味にアローフォームライフルのリムを振り下ろす。


 ルガルは横に跳びこれを紙一重で避ける。次の二歩目で地面を蹴ると、今度はグウパン目掛けて突撃する。オコジは動かずに、ルガルの突きを待ち受ける。その様子を見た一瞬、ルガルの脳裏に浮かんだのは自身がオコジの拳を顔面に受けるイメージ。


(カウンター狙いか!)


 ルガルは姿勢を急激に落とし、槍を引いて横からごうと試みる。狙うはグウパンの両の足だ。


(チッ! この槍使い、読んでくれちゃって)




 ガァン!


 その時、独特の轟音ごうおんが辺りに響いた。反応したルガルは大きく後方へ跳び上がる。直後、トゥーズデのいた位置を緑色のビームが通過していく。


狙撃手スナイパーか」


 ルガルはビームの飛んできた方向を見やる。一キロ強ほど先に見える影。リンコの乗るチャカヒメだ。


「最近私の狙撃食らわない人多くない? プライドが傷つくわー」

「あれは……モヒカンのお姉さん! デカブツの下にいたはずじゃあ……まあいっか! 二人じゃキツイし」




 ズキュン! ズキュン! ズキュン! ズキュン! ズキュン! ズキュン!

 ガァン! ガァン! ガァン!


 ピエンはアローフォームライフルを連射する! 同時に、リンコもスナイパーライフルで再度狙撃する! ルガルの乗るトゥーズデは姿が消えるほどのスピードでステップして難なく避けてみせる。


「そこ!」

「!」


 射撃の嵐を避け切ったルガルのすぐ目の前に、オコジのグウパンが姿を現す! オコジは両の拳で目にも留まらぬスピードの乱撃を繰り出す!


 打打打打打ダダダダダ


 スイボク流喧嘩(けんか)術・ミダレフデ!




 何十発もの拳を放ったオコジは一歩後ろへと下がる。


(チィ……浅い! どの拳もクリーンヒットしていない! 器用に避けやがって!)




「ナンパ男! もう一回!」

「もうちょいマシな呼び名ないの!?」


 リンコとピエンは再び得物えもの銃口じゅうこうをトゥーズデに向ける!




 ◇ ◇ ◇




「ターゲット八、消失しました!」

「ターゲット八……ニヌギルを墜とせたか! 我々の方に流れが来てるな」

「ターゲット九とリュウビ六号、トの一番、二番が交戦中です」


 地上艦「セントバーナード」のブリッジ。トロンは通信士の報告を受けながら、そこから遠くに見える戦火とモニターに映し出されるレーダー画面を、真剣な面持おももちで見守る。


「後続の部隊はまだリュウビ隊より二キロ以上後方です」

「構わない、無理はさせるな。デカブツの弱点がはっきりするまで派手に動くことは――」

「トロン総長! ハットリシティ、NISのタケノ頭領とうりょうより緊急の通信です!」




 トロンが話すのをさえぎって、部下があわてた様子で報告を入れる。その慌て方を少し不思議に感じながら、トロンは通信士に指示しなおすと通信端末に耳を当てた。向こうから聞こえるタケノの声は、珍しく落ち着きを少し失っているように思えた。


「急な連絡で申し訳ありません。同行できていない身でありながら……」

「構わない。貴方がハットリシティを離れられないのには様々理由があるはず。それよりどうされた?」




 次にトロンの耳に聞こえてきた話は、思いもよらぬ危機の報せだった。


「イストー共和国がミサイルを発射した!?」




 ◇ ◇ ◇




「ターゲットへ着弾まであと三分!」


 オトナリ大陸、イストー共和国のとある施設。左(ほお)に大きな切り傷をつけたイストー軍の将官が、巨大モニターに移された広域レーダー画面を見守る。


 軍の最新鋭ミサイルは半径十キロを焦土に変えるほどの威力を持つ。隣の大きすぎる大陸で湧いて出た大きすぎる脅威。それを排除するための大きすぎる力。本来ならば撃つべきではないモノ。それには運悪く手の届くところに入ってしまった命を分別する力など備わっていない。


「……許してくれとは言わん」

「? 今何か仰いましたか?」

「いや、何も」




 ◇ ◇ ◇




「クソッ、察知が遅れた! レーダーに捉えてはいるか?」

「確認しています! 着弾まであと二分三十秒!」

「……悩んでいる暇はないか! 出撃している全ビッグスーツに即時撤退を指示!」


 トロンはあせりを抑えきれない中、通信士に指示を出す。出撃しているビッグスーツたちが使用しているフライトユニットの性能を考えれば、今すぐ離脱を始めれば爆発範囲から逃れられるかもしれない。


 だが、敵機の攻撃などで離脱が遅れれば――


「すまない、みんな」


 出してはいけない言葉がトロンの口からこぼれる。彼は歯軋はぎしりしながらレーダー上の一点をにらんだ。




 ◇ ◇ ◇




「ぶぇえええっくしょい!」


 ガバッ!


 突然レトリバーの医務室に響く豪快ごうかいなくしゃみの音。それはカリオの耳をつんざき、跳ね起こすのに十分だった。そしてそれを目の当たりにした船医のヤムは、飲みかけたコーヒーを噴き出した。


「お、あークソッ、シャツが……カリオ! やっと起きたか!」

「ここは……医務室? 俺、寝てたのか。いつからだ、うーん」


 状況を飲み込めないカリオは辺りを見回す。隣のベッドではくしゃみの主であるマヨが、大きな寝息を立てて寝ていた。


「着替えてくるからちょっと待っていてくれ。クソッ、マヨの奴おっさんみたいなくしゃみしやがって……」

「ヤムさん、こいつは何で寝てるんだ?」

「……さっき例の力を使った時にバテたみたいでな」

「うん……はぁ!? 例の力ってエメトを操る奴か!?」


 汚れたTシャツを脱いで上半身裸になったヤムは、はとが豆鉄砲を食ったような顔になっているカリオに言う。


「マヨの奴は大丈夫だ。ただ体力使いすぎただけ、心配するな。だが実際話さなきゃならんことが沢山ある。すぐに診察もする。えらいことになってんだ、急ぐぞ」

「なっ? えっ?」




(天上災禍⑱ へ続く)




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