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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
203/231

天上災禍⑫

風遁ふうとん鎌鼬かまいたちの術!」


 ブォオオ!


 ショウの叫びと共に、辺り一帯に暴風が吹き荒れる! オールリと一緒に上昇してきたビッグスーツたちも一斉に印を結び、鎌鼬の術を発動させる。


 ブォオオ! ブォオオ!


「くっ!」


 社員たちの乗るイークデが暴風に切り裂かれ、装甲に傷を作っていく!




「なんじゃい、ニ十機……いやそれより多く下から来とるの。マドクは気づかなかったのか」

「この時代のステルス技術も中々(あなど)れんな」


 ニヌギルとマドクは下方から攻めてくる敵を確認する。ニ十機以上のビッグスーツが、マンタ型飛行ユニットに乗って上昇してくる。前方から攻めてくる者たちと比べると統率とうそつされた動きだ。


(ハットリシティのNIS……! 他はショウの言っていた連中か!)


 ニッケルは間合いを取りつつ、ビームライフルとウェハーで連続射撃を放つ。狙われた二機のイークデは左腕を前に出しビームシールドを展開、これを凌ぐ。


真千組しんせんぐみ各員、抜刀! 突撃!」

「S.B.A.Tスバット各位、フォーメーションガンマにて後方より敵機を墜とす。遅れるなよ」




 上昇してきた機体の群れは都市直属の精鋭部隊だった。他のビッグスーツ乗りがサーズデの前方から攻め入る中、地上からサーズデの下方に潜り込み、一斉に奇襲をかけてきたのだ。


 その内のだいだい色の一機、「ヤマガラ」に乗るナスビはニヌギルのサタデをにらむ。


「あの時のデメキン!」

「ほう! 戦場で二度同じ人間と相まみえるのは久々じゃ!」


 NIS所属のビッグスーツ、緑色の量産機が九機、ショウのオールリ、ナスビのヤマガラ、合計十一機がサタデに狙いを定める。


「ナスビ! 相手が相手や! 卑怯とののしられようが数で攻めるで!」

「そのつもりや! ウチは騎士道やの武士道やのに興味ない!」




 ニヌギルの注意がショウたちに向いたのを、ニッケルとリンコは見逃さない。


(俺らがこのイークデ(いかり肩)連中を仕留めねえとか……!)

(さっきよりは慣れたかな……たっぷりお返ししないとね!)




 ◇ ◇ ◇




 ボン! ボボボボン! ボボン! 


 ニッケルとリンコたちが攻めている面とは反対側――サーズデの船体の上側を、ピエンとオコジは苛烈かれつな砲撃をかわしながら飛んでいく。


「にしても本当にデカいね。まるで街か島がそのまま浮いてるみたいだ」

「困った、どこを狙うべきか……ここまで来ておいてなんだが、ピエン君はどこを目指して飛ぶべきだと思うよ?」

「……レーダー上で怪しいと思っている箇所はあるんだけど」


 自然界には存在しない異質な金属の平野の上を飛ぶ二人は、軽々と砲撃を避けながら喋る。


「レーダーか、熱源多すぎてどれがどれだかよくわからねえんだが」

「その熱源がやけに少ない所がない?」

「ほう?」


 くるりと身をひるがえしながら、オコジはレーダーを確認してみる。ピエンの言った通り、ビームや実弾を発射している砲台と見られる影に囲まれる形で、影、即ち熱源のない隙間が一カ所だけ存在している。


「……このクソデカい物体の中央よりやや後方か。コイツを『船』として見るならブリッジに当たる部分ってコトか?」

「そう予想通りってワケにはならないだろうけど確認はして――待った、誰かいる」




 ピエンは前方を見やる。サーズデの船体の上に立つ、一機のウストク。白いボディに青のアクセントカラーを入れた、巨大なやりを持つ機体。二人はその機体に見覚えがあった。


「げぇー!?」

「うーわ!?」


 接近してくるウィルティルとグウパンを確認して、ウストク――トゥーズデに乗るルガルは笑みを浮かべる。


「まさかあの時と同じ面子めんつとはな。悪くない! 前回の続きと行こうじゃないか!」




 ドォン!


 サーズデの上面を思いっきり蹴り、ルガルは前に猛烈なスピードで突進する! ピエンとオコジは慌ててマンタ型飛行ユニットを乗り捨て、敵機を待ち受ける!


 まず一突き。


 ルガルの放つ槍の一閃がウィルティルの胸部を狙って襲い掛かる! ピエンは弓の形をしたアローフォームライフルのリムの部分で、この突きを受ける。その衝撃をそのまま生かして、トゥーズデと間合いを取る。


 その刹那、次の一突き。


 今度はグウパンを狙ってルガルは突きを放つ。オコジは小さく、かつ素早くサイドステップしてこれを左に躱す。


 オコジは左の拳をトゥーズデの頭部目掛けて横に振るう。飛んできた拳をルガルは右腕でガード。


 ズキュン! ズキュン! ズキュン!


 オコジのすぐ後ろからピエンがアローフォームライフルを連射する。ルガルはステップを踏んで蛇行だこうしながら後ろへ下がり、全弾回避する。




「テレビ的にはよくないでしょ、前と同じ対戦カードなんて」


 心底嫌そうにピエンは文句を言う。


「ホント、テレビドラマの撮影ならよかったんだが。お前さん、名前はなんて言ったっけ?」

「ルガルだ」

「ルガルか。お前さんほどの達人がこの場にいるってコトは、こっちの方向に進んできて正解か」

「方向?」


 オコジに言われて、ルガルは後ろを振り返った。


「そういや向こうにあるのはサーズデのコックピットか」

「え? マジで正解だった?」

「おっといかん」


 口をすべらせたことに気づいたルガルは肩をすくめた。


「たまたま動きの速い影を追いかけてここにきただけで、門番するつもりはなかったんだがな」

「じゃあどいてくれないかい?」


 オコジの提案にルガルは槍を構えて答える。


「そう言うな。もっと運命の再会というヤツを大切にしよう。ゆくぞ」




(天上災禍⑬ へ続く)


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