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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
196/226

天上災禍⑤




 ◇ ◇ ◇




「二億テリの賞金首、死ねェエエエ!!」


 夜が明けたばかりの荒野。右腕に巨大なドリルを装備したビッグスーツが、そのドリルを突き出してニッケルのハネスケ目掛けて突撃する!


「なんの!」


 ニッケルは真正面から来たドリルに向けてシールドの先端を突き出す! 格闘戦対応型の高硬度こうこうどシールドは、回転するドリルを先端から粉砕ふんさいした!


「な、なんだその盾!?」

「タックの奴いい仕事するじゃねえか! 今度(おご)ってやるか!」


 バシュゥ!


 ニッケルのビームライフルがドリルを壊された敵機のコックピットを貫く! 敵機沈黙(ちんもく)




 だが間を置かずに、前方から三機のビッグスーツがハネスケに飛び掛かって来る!


「気抜かないでよね!」


 ハネスケの後方から、リンコの乗ったチャカヒメが飛び出す。


 バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!


 機体を横に回転させながら、両手両足のビームピストルを駆使して三機の敵機をはちの巣にする! 敵機沈黙!




「ハッハッ! 確かに気抜けねえな! 笑ってる場合じゃねえか」

「笑ってる場合じゃないわよ! カリオいないと結構面倒だね……!」


 レトリバーⅡは賞金稼ぎの襲撃を受けていた。今回の賞金稼ぎはブラックトリオの実力がある程度世間に知れ渡っている中、それでもなお勝機があると踏んで襲撃してきているだけあって、そこそこに腕が立つ。


ひるむな! トリオなのに何故か二機しかいねえがチャンスだ! 数で押せー!」


 賞金稼ぎたちの士気は高い。今なお四隻の地上艦と十機のビッグスーツでレトリバーⅡを取り囲んでいる。




「あんまり長引かせたくないな……フラッシュグレネードで隙でも作れねえか……って、ん?」


 ニッケルはレーダーに新たに出現した影に気づいた。大きさからして地上艦だと思われる影が四つ。


「おいおいちょっと待て……敵の増援だったら絶体絶命だぞ……!」


 近づいてくるのは紺色の地上艦の群れ。前に三隻が横一直線に並び、その後ろに一隻がついていく形になっている。前の三隻の甲板の上には緑色のビッグスーツが三機ずつ、腕を組んで直立している。


「ニッケルどうしよー!?」

「クソッ! レトリバー、煙幕弾を――」




 やぶれかぶれでニッケルが味方の逃走を指示しようとした時だった。接近する緑色のビッグスーツたちが、その胸の前で両手を動かして、組み、人差し指を立て――印を結ぶ。すると……


 バチチィ! バチチィ! バチチィ!


 三隻の地上艦の前方に一つずつ、計三つの青白い電撃のかたまりが出現した! 電撃の塊はすぐに前へ飛び出し、空中を賞金稼ぎの群れ目掛けて突き進んでいく!


「なん……ギャアアア!!」

「ブラックトリオに味方が!?」

「のああああ!!」


 電撃の塊は、賞金稼ぎの地上艦四隻の内、三隻に一発ずつ命中。船体と周囲のビッグスーツに焼けるような電気ダメージを与える! 突然の奇襲きしゅうに賞金稼ぎの群れは大混乱に陥った!




「何だ!? 敵じゃねえのか!?」


 ニッケルは新手の四隻の地上艦を見据える。こん色の地上艦ははたなどはかかげておらず、船体に紋章もんしょうの類も描いてある様子はない。


雷遁らいとん・大雷球の術、思いのほか効いとるな。行くかナスビ」


 最後尾の一隻の甲板の上、青いワンオフ機――「オールリ」のコックピットでショウ・G・ジャンジャンブルは、ヒート忍刀にんとうにぎって甲板を蹴り、飛び出す。


あねさん! お気をつけて!」

「その呼び方やめや!」


 その隣で橙色のワンオフ機――「ヤマガラ」のコックピットでナスビ・O・ベルジーヌが、地上艦の通信士に怒りながら同じように甲板を蹴って跳び出した。




 ◇ ◇ ◇




「参ったな、カリオは寝とるんか……」


 三時間後。ある街の地上艦港にレトリバーⅡは停泊していた。賞金稼ぎとの戦闘中に乱入してきた紺色の四隻の地上艦は、ハットリシティの所有する艦で、そこに乗っていたのはNISのメンバーだった。賞金稼ぎを一掃した後、一行は近くの街へ艦を向かわせた。今はカリオが療養りょうようしている医務室にショウとナスビが訪れている。


「寝てるというか……寝てるな。てかマジ助かったぜありがとよ」

「いやいや。どうせアンタらやったら助けなくても切り抜けてたと思うで。しかし久しぶりにツラ見せようとしたら、あんな奴らに狙われ――んぎににに!」


 ニッケルと談笑するショウの頬を、ナスビが両側から思いっきりつねった。


「何すんねん!」

「はよ任務の話せい!」

「わーったって、 何もつねらんでも! 今どき暴力ヒロインは流行らんで?」


 リンコは回転する椅子に座り、ロリポップキャンディーを舐めながらショウとナスビの様子を眺めていた。


「任務?」

「ああ。緊急も緊急や。下手を打てば冗談抜きに大陸中の人命が脅かされる」


 その言葉を聞いてニッケルは一瞬、思考を巡らせた。普段表立った活動は控える諜報機関が、地上艦四隻をわざわざ寄こしてたった三人の傭兵ようへいに接触を試みようとするのは、それなりの理由があるからだ。嘘をついたり、話を誇張こちょうしている様子にも見えない。ショウは話を続けた。


「全長全幅十キロメートルの空中要塞が、大陸北部から南下しとる。近隣の村を破壊して、あと少しでイリエシティに到着する見込みや」


(天上災禍⑥ へ続く)

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