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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
195/228

天上災禍④




 ◇ ◇ ◇




「起きねえなイルタの奴」


 太陽の光が入らぬ以下略。胡坐あぐらをかいて骨付き肉をかじりながら、ルガルは草の上に寝転がるイルタを見やる。


「じゃんけんで負けて、十分近く駄々こねた挙句ふて寝とはな……」


 マドクはあわれなイルタに向けていた視線を外して、ため息をついた。


「それでニヌギルのおじちゃん、なんか変わった感じとかある?」


 ナハブはニヌギルに聞いてみる。じゃんけんに勝ち、注射器のような容器に入ったカース・リムーバーを手に入れたニヌギルは、すぐにそれを腕に刺して体内に取り込んだ。それから五分程経った今、手をにぎったり開いたりしながらその感触を確かめている。


「んーむ、あまりわからんのぉ」

「外に出てみたらわかるだろう。ウストクに乗ればなお早くわかる」


 マドクの言葉を聞いて、ニヌギルは「そうじゃのう」と考えるのをやめて、そばの木の根元にもたれ掛かるようにして座る。


「門限、不思議だよねえ。生身で外に出た時よりウストクに乗った時の方が短くなるの」

たましい……〝ソウル〟に関する技術の資料も探しておきたいところだ。わからないことが多すぎる。ウストクにもソウル関連の技術は使われてるし、いずれ必要になる」




 会話を交わすナハブとマドクの二人に、肉を飲み込んだルガルが声を掛ける。


「……で、〝社員〟も〝サーズデ〟もすぐ出せるんだって?」


 ルガルの言葉に、マドクは不敵な笑みを浮かべて返した。


「もう動き出している。必要な荷物を整理したら私はすぐに出発する」


 マドクは人差し指を立てて、同族たちに聞く。


「さて、私はサーズデで取り敢えず街の一つでも押さえてみるつもりだが、共に戦ってもいいという者はいるか? 私はルガルやイルタみたいにギリギリの戦いを楽しもうとするタイプではないからな。自軍は強く、相手は雑魚であることに越した事は無い」




 マドクの言葉を受け、一同はしばし考える。一番最初に口を開いたのはニヌギルだ。


「ワシもついて行こう。お主が領土を得た暁には、そこでええ女子おなごと酒を独り占めするわい」

「持ってる実力の割に随分小さな欲求だな。そこに金も追加しておけ」


 続いてルガルが口を開く。


「さっき相手は雑魚の方がいいなんて言っていたが……サーズデが動き出せば、寄って来るのはこの大陸の猛者もさどもだ。マドクやイルタを手こずらせるような奴らはいないだろうとは思うが、俺としてはこのチャンスに懸けたい。ついて行かせてくれ」

「歓迎だルガル。ナハブはどうする?」


 ナハブは二秒程考えて首を横に振った。


「いやぁ……俺は悪いけどパス。派手なドンパチはいらないや。俺は無辜むこの一般市民を沢山犯して殺してる方がいい」

「下品な奴め。まあ途中参加も歓迎するから考えておけ。 シャマス」


 シャマスは両手を合わせて謝罪のポーズを取る。


「僕も斬った張ったはナシの方向で」

「……おまえはイマイチなんで封印されたのかわからんな」




 むくり、と草の上に寝転がっていたイルタが上半身を起こす。それを見たマドクはため息をついて、声を掛けてみる。


「……来るか? ゴリラ女」

「……少し寝てから行く」




 ◇ ◇ ◇




「おーい! オコジのおじさん! また会ったね」


 テエリク大陸北方の小さな町、センダタウン。夜を越え、明るくなり始めたばかりのその地上艦港の出口で、銀髪のダークエルフ、ピエン・ピエールが、地上艦から降りてきたオコジに手を振る。


「おう、元気そうで何より。お前さんも呼ばれたのかい、おだやかじゃないねえ」

「ホントだよ。ってか何で呼ばれたか全然聞いてないよね? 僕も知らないんだけどさ。ここではちょっととか言われて」


 二人の隣にトレンチコートの男が寄ってきて、港前のロータリーへ案内する。促されるままに二人が歩いていくと、黒塗りのSUV車が三台、列を成して停車しているのが見えた。


「え? アレで合ってるの? ますます穏やかじゃないね。僕たち誰に連れ去られるワケ?」

「さすがに正体も明かさない連中の車に乗せられるのはリスクが大きすぎる。そろそろ自己紹介してくれんかね?」


 ピエンとオコジにそう言われ、トレンチコートの男は丁寧な言葉で返した。


「あの車に、ちょうど私たちの代表が乗っております。代表を車から降ろしますので、そちらでお待ち頂けますか。」

「了解」




 車から少し離れたところで、ピエンとオコジは待つ。一台のSUVの後部座席のドアが開き、スーツ姿の男性が降りてくる。整った顔立ちのブロンドヘアの男性。


「……待てよ、見たことあるぞアンタ」


 男性の顔に反応するオコジ。一方、隣にいるピエンは目の前の男の顔に全く覚えがなかった。


「知ってるの? おじさん」

「いや、待て、喉、喉まで出かかっている」




 オコジが腕を組んで考え始めたところで、トレンチコートの男が二人に教える。


「カミヤシティ市長、エチゴ連合総長のトロン・ボーンです。彼が貴方方の依頼人です」


 その言葉を聞いて、オコジはハッと目を丸くした。


「あー! そうだ! 元共和国陸軍少将!」

「ええ!? そうなんだ……いや若っ!」


 驚く二人を前に、ブロンドヘアの男――トロン・ボーンは手を差し出した。


「お会いできて光栄だ。オコジ・イタチ、ピエン・ピエール。仕事を一つ、お願いしたい。この大陸にとって、とても大事な仕事だ。」




(天上災禍⑤ へ続く)




 

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