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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
187/228

トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー⑥




 ◆ ◆ ◆




「お父様、モッツァ家のおじょう様はどこにいますの」


 十歳になったばかりのベル・カマンは自身の父、ノイマン・カマンの服のそでを引っ張って迫った。


 アオキシティに自分と同じ歳で剣術の達人の女の子がいると聞いてからというもの、好奇心と対抗心でベルはうずうずしっぱなしだった。話に出したばかりに、四六時中ベルに質問攻めにあう羽目になったノイマンは、彼女を連れてアオキシティで開かれたパーティーにやってきたのだった。


 ベルは五歳の頃からコテン流戦布(せんぷ)術の修行を始め、大人の門下生達を次々と打ち負かすなど、華々《はなばな》しい成長ぶりを見せていた。隣街にも子供の武術の達人がいると聞けば手合わせせずにはいられないというもの。




「ケーワコグ共和国に対する海外からの圧力は、依然いぜん強いままです。イースウェイはテエリク大陸、ひいてはの惑星マールの平和を維持いじすべく、引き続き共和国軍への支援を――」


 パーティー会場の前方、壇上だんじょうに上がったイースウェイCEO――カパナ・モッツァがスピーチを始めている。テーブルに座ったベルはそれを無視して周りをキョロキョロと見回す。


「ベル、もう少し大人しく――」


 ノイマンがベルに耳打ちしようとした時だった。ベルの目にある少女の姿が留まった。前髪を作っていない癖のあるブロンドのロングヘア。赤いドレスに身を包んだ自分とそう変わらない背丈せたけの少女。


 子供でありながらりんとした、鋭い気がその少女を包んでいる。ベルは一目でその少女が自分の探しているモッツァ家の令嬢――レイラ・モッツァだと確信した。




 スピーチ中であることにも構わず、ベルは椅子から飛び降りて彼女の方へ走り出した。慌てて止めようとするも振り切られるノイマン。ベルはレイラのすぐそばまで近寄ると、彼女の面食らって目を見開いた顔に指差して叫んだ。


「私と勝負してレイラ・モッツァ!」




 ◇ ◇ ◇




 レイラが振り下ろす剣がタルタルに迫る。だがそれを見たイセは慌てるどころか、むしろ笑みを浮かべた。


 バコン!


「!?」


 突如アカトビの目の前で、タルタルの胸部装甲の一部が変形、展開してその内部をのぞかせた。その中身にレイラは目を丸くした。


(大口径の内蔵型機銃!!)


 ダダダダダダ!!


 ゼロ距離に近い間合いで、タルタルの胸からすさまじい勢いで実弾が連射される!




「レイラ様!」


 思わず近くで戦うポネが叫んだ。レイラの剣、「ショパン」が宙を舞って地面に落ち、突き刺さる。




「チッ、かわされたか。異名は伊達だてじゃないな」


 イセは苛立いらだちに顔をゆがめた。その後ろには先ほどまで至近距離・真正面にいたはずのアカトビ。レイラは内臓機銃による不意打ちを間一髪で回避していたのだ。


 だが楽観できる状況ではない。アカトビの装甲には無数の傷が付けられ、フィードバックでレイラ自身の身体は何カ所も負傷し、血を流している。そして武器――「ショパン」は今、アカトビの手から離れ、イセの近くの地面に突き刺さっている。


「だがこれで、こっちの圧倒的リードだ」


 イセは左腕のビームショットガンを腰にマウントし、空いた手でショパンを拾い上げた。レイラは表情を変えずに、真っ直ぐイセをにらむ。そして左腰にマウントされているマスケット銃のようなデザインの火器に手を伸ばした。




「銃器も持ってるんじゃねえか。だが本命は剣だろ? 不得意な武器でどこまで持つか……試してみようかい!」


 バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 イセはドローン兵器とビームライフルでレイラに向けて一斉射撃を繰り出す! 先ほどと同様、レイラは左右にステップで攻撃を回避しつつ、イセとの距離を詰めにかかる!


「武器を奪い返す気か?」


 ダダダダダダ!


 イセは再び胸部の内臓型機銃を連射する。レイラは地面を強く蹴って左にステップ、なんとか躱すと、左手に持ったマスケット型ビームライフルをタルタル目掛けて

撃つ。


 バシュゥ!


 イセは弾道を見切ってタルタルの身体を逸らし、これを回避。そこへ間髪入れずにレイラは膝蹴ひざげりをタルタルの頭部目掛けて繰り出した!


「ふん!」


 だがここで意外な反撃があった。イセは飛んできた膝に向けて頭突きを繰り出す! タルタルの頭部がアカトビの左膝と衝突すると、レイラは痛みに顔を歪めた。


「クッ……!」


 レイラとイセはお互いに飛び退いて間合いを取り、着地する。レイラは身をかがめ、頭突きを食らった左膝に手を当てる。相変わらず鋭い眼でイセを睨んでいたが、美しい顔に冷や汗が流れていた。


「いい動きするなあ。だが剣の腕ほど銃と徒手空拳は上手じゃねえ」


 イセは再びドローン兵器の操作に意識を移す。反応したドローンが銃口をレイラに向け直した――その時だった。




「膝ついてんじゃありませんわよレイラ!」




 叫び声と共にレイラの左から、ベルのサシバが飛び出してきた!ベルはビームリボンを素早く振るう。しなるリボンがイセに迫る。


(速いなこのアマ……!)


 回避しようと横に動くイセ。だがリボンは執拗しつようにそれを追い、かまいたちのようにイセの左腕を掠めていく!


「チィ!」


 リボンは刃物のようにタルタルの左腕の表面を斬りつけた。イセは痛みに顔を歪め、思わず握っていたショパンを放してしまう!




 ダン!


 膝の負傷も忘れて、レイラはショパンに向かって飛び出した。そして転がりながらそれを拾い、起き上がって剣をなんとか構える。




「ベル!」


 レイラはベルの方を見る。彼女の後方に見えたのは……ベルに向けてビームライフルの銃口を向ける、八機の量産機!


バシュゥバシュゥバシュゥバシュゥ!


 八つの銃口から一斉にビームが放たれる。着弾音と共に土煙が舞い上がり、サシバの姿はそれにおおわれ、見えなくなった。




(トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー⑦ へ続く)

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