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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
185/228

トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー④




 ◆ ◆ ◆




 ――一年と少し前。スズカ連合近くの草原。




 ズシャア!


 レイラのるアカトビの前で、ベルのサシバがひざをつく。この模擬戦の決着は着いた。レイラの勝利だ。


「ぐ、ぐぬぬ……い、今のはちょっと足を滑らせただけで」


 悔しがるベルに構わず、レイラは実体剣を収める。


「日も暮れます。そろそろやめましょう」

「ぐぬぬ……」

「……本当に明日、出発しますの?」




 レイラはベルに聞いた。「明日から一年、修行の旅に出る。その前に今一度勝負なさい。ビッグスーツに乗れ」と、事前の連絡もなくベルは朝、モッツァ邸に押しかけて来た。そこから日が傾くまで模擬戦を何回も続けた。


「……師匠が顔見せろってうるさくてね。ねられると面倒だし」

「コテン派の当代は放任主義だとうかがっていましたが、可愛がられていますね」


 ベルは立ち上がって夕陽を見やる。


「百二十二戦中、私が五十勝で貴女あなたが七十二勝。貴女が勝ち越し」

「いつもながらよく数えてますわね。間違えませんの?」


 ベルはビッと人差し指をレイラのアカトビに向けて差し、言った。


「帰ってきたらまたやるわよ。三日で私が逆転してみせるわ」

「そんなに暇じゃありませんわよ」


 レイラはため息をついた。


「……まあ、事前に連絡頂ければ時間は作りますわ」




 ◇ ◇ ◇




 ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!


 レイラが放つ超高速の五連の刺突しとつが、マテガイ社の施設を守る量産型ビッグスーツ五機の胸部を、ほぼ同時に貫く!


 ロマン流剣技、ファイブ・ブラックキー!




 ザシュッザシュッザシュッザシュッザシュッ!


 その五機が爆発する横で、ベルの振るうビームリボンの先端が、別の警備ビッグスーツ五機をミサイルのように追尾して貫く!


 コテン流戦布(せんぷ)術、ファイブ・トルコウィンド!




 ボボボボン!


 続けざまに五機、合計十機のビッグスーツが一秒足らずで爆散する! その時――



「もらったァ!」

「!!」


 ベルの背後から一機の量産型が、ヒートソードを振りかぶって襲い掛かる!




「危ない!」


 ゴッ!


「ぬはぁ!?」


 ポネがその奇襲を阻止する。ビッグスーツの背丈せたけほどもあるキャディバッグ型の装備をぶん回して、相手の頭部に直撃させる! 頭部に痛手を負った量産型の敵機は、フラフラと数歩歩いてから倒れた。




「大丈夫ですかベル様!」

「ええ、助かったわポネ。ありがとう……にしても」


 ベルはポネに礼を言うと、レイラのアカトビを細い眼でじっと見つめる。


(ぬう……あの技のキレ! 並んで戦ってみた感じだと、修行であの女との差が縮まったかどうかわかりませんわね……やはり直接対決して確かめたいのですわ!)




「……かなり大きいですがエレベーターのようですわね」


 レイラは大きく口を開けた何かの入口へと歩み寄る。大型の地上艦がすっぽりと入りそうなその大きな部屋の底面と、外の地面との境目には隙間がある。レイラの言う通り、恐らくこの底面は地下へと下降できるエレベーターになっているようだ。


「この大きさのエレベーターならかなりの物資を一度に運べそうですね……」


 ポネがレイラの後ろに続いて歩く。二人がエレベーターに乗り、ベルもその後に続こうとするが、エレベーターに足を乗せる手前で、彼女は一度周囲を確認した。


「例の三億の傭兵ようへい、まだ落としてないわよね?」


 レイラとポネは揃って首を振った。


「あの中にいたのなら拍子抜ひょうしぬけですわ」

「わ、私もそこまで強そうな人は見かけてないです」

「……まあ多分この先にいるわね……別にビビってませんわよ!」

「聞いてませんわ」


 ベルがエレベーターに乗ると、レイラは付近に設置された操作盤のボタンを押す。アカトビのマニピュレータに押され、重い音を立ててボタンがへこむと、エレベーターがガタガタとこれもまた重い音をひびかせながらゆっくり下がり始めた。




 ◇ ◇ ◇




「なんでい、じゃああの生体兵器がどんなもんなのか、クライアントは教えてくれなかったワケですか」


 施設の地下ではイセが率いる傭兵部隊がレイラ達を待ち構えていた。イセの乗るワンオフ機「タルタル」を筆頭にその数、十三機。 


「そういうこった。愛想悪いお客さんだがちゃんと働けよ? 報酬はいいんだからよ」

「ハッハッハ、いくらイセさんがいるからって三令嬢相手じゃ、手抜いたら俺ら死んじゃいますよ」


 イセとその部下が談笑していると、小さな音がした。それは段々と大きく、重いものになっていく。ゴウン、ゴウン、と重い金属が機械仕掛けで近づいてくる音。イセ達の前方に見える、エレベーターの昇降口からその音はしていた。


「来るぞ。広めの地下とは言え、地上程自由に飛び回れるワケじゃない。あちこちに引っかかるなよ」




 ゴウン……ゴウン……ガタン!




 昇降口で音を立てて大型エレベーターが停止した。その上にはレイラ、ベル、ポネの三人が乗る機体が三機。


「おでましかい。美女ばかりだと聞いてるから生け捕りにした方が色々使い道があるんだろうが、そうはさせてくれねえよな?」


 下品な軽口で迎えるイセ。レイラはエレベーターから降りながら実体剣「ショパン」を抜く。


「そう……貴方がイセ・E・シュリンですのね。 私怨はありませんが、立ちはだかるのであれば斬るまで。お覚悟を」




(トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー⑤)


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