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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
184/226

トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー③




 ◇ ◇ ◇




「ところでレイラ。医療福祉省の……なんだっけ」

「ホエイ・ヨグトル?」

「そう、そいつ。とうとう一線超えたもんだから貴女あなたが倒したんですってね。モンスタンクも二機いたって聞いたわよ」


 スズカ連合保有の中型地上艦、「デカ・マルチーズ」のきらびやかな一室で、レイラ、ベル、ポネの三人は紅茶を飲んでいた。ベルに話しかけられたレイラは、一旦ティーカップをテーブルに置く。


「二機いたといっても同時ではなかったですし、それにそのうち一機を撃破した時には実力のある傭兵ようへいの方々にも手伝っていただきましたので……私個人の活躍はそれほどありませんわ」

「アンタの活躍の程は聞いてないわよ! ってお待ちになって、貴女傭兵を雇ったの? そういうの嫌いだと思っていたわ」

「人を職業で判断してはならないと、いい経験になりましたわ。貴女も一度雇ってみては?」

「そうね……いや待ちなさい! なんで私を呼ばないのよ!」

「貴女の修行邪魔するワケにはいかないでしょう」


 レイラは再びティーカップを持ち上げて口をつけた。


「ベルの方こそ、帰り道にノブシ盗賊団の首領しゅりょうを討ち取ったそうじゃない。お手柄でしてよ」

「アイツらの方から絡んできたのよ。おかげで三日間であのクソ盗賊団の待ち伏せを四回も食らって――」


 言いかけてベルは、ティーカップを持ったままのポネがじっと自分を見つめていることに気づいた。


「あ、いや続けてください」

「どしましたの? ポネ」

「いやあ、二人とも仲良くしてるのを見ると心が温まりまして」


 ポネの言葉を聞いて、レイラとベルは鳥肌が立ったかのようにぶるりと身を震わせた。


「おやめなさい! あなた変な趣味にでも目覚めたの!?」

「ベル様!? そ、そういう意味では」

「確かにベルとは多少親しい中ではありますがそこまでの反応を示されると……」

「レイラ様まで!? うぅ……」


 しょんぼりしながらポネはティーカップを両手で持って紅茶に口を付けた。




 ◆ ◆ ◆




 ケーワコグ共和国からわずか半年にして、スズカ連合は誕生した。


 内戦を生き残ったアオキシティを含む十の都市。その都市の統治者達は共和国の敗北を戦中より見越し、水面下で会談を重ね体制を整えていった。


 とりわけ早い段階から協力体制を築き上げていたのはアオキシティ、カネコシティ、ミウラシティの三都市であった。それぞれの都市で名を上げた「三令嬢」と呼ばれるビッグスーツパイロット――レイラ・モッツァ、ベル・カマン、ポネ・マスカルは、富豪の令嬢でありながら、幼少期から既に類稀たぐいまれなる戦闘術の達人であり、街のシンボルでもあった。しくも似た経歴を持つ彼女らは幾度となく戦場や行事で顔を合わせ、連合結成の際にも大きな役割を果たした。




 ◇ ◇ ◇




「あの施設がマテガイ・バイオテック社のモノで間違いないのね」


 広い草原に似つかわしくない、五百メートル四方程の工場のような施設。それを遠方の高台から眺めるビッグスーツが三機いた。


 レイラの乗る白のベースに赤のアクセントカラー、甲冑かっちゅうのような曲面の多いデザインの「アカトビ」。ベルの乗る白のベースに空色のアクセントカラー、同じように甲冑のようなデザインの「サシバ」。そしてポネの乗る大きなキャディバッグのような装備を手に持った、白ベースに黄色のアクセントカラーをし、フードのような布状装甲を纏った「ノスリ」である。


「思ったより小さいわね、気のせいかしら」

「ベル様、ブリーフィング時に地下にも広大な空間がある事を確認してますわ」

「し、知ってる! いえ、ド忘れでしたわポネ!」


 レイラの脳波に反応して、アカトビのアイカメラが施設に対してズームする。


「それも、ビッグスーツが動き回れるスペースを取っている程ですわ。地上に大した設備はなさそうですし、恐らくは地下に乗り込むことになる」

「そ、それもド忘れしてただけよ!」

「まだ何も言ってませんよ。ド忘れしてたのですね?」


 ズームしたアイカメラは外の警備ビッグスーツや防壁上の砲台を一つ一つとらえていく。レイラはその映像をベルのサシバとポネのノスリに共有、二人はサブディスプレイでそれを確認する。


「外の防衛は我々で十分制圧できるレベル、参りましょう」




 ◇ ◇ ◇




 その施設の地下。空の光が差さない広大な空洞くうどうに、いくつもの管や電線が這いまわり、ビルのように大きな建物がいくつも並ぶ。


 その一角で傭兵、イセ・E・シュリンはある設備を見上げていた。縦に高い円柱状の設備で、空洞の天井や壁と同様に、何本もの管や電線が周囲に張り巡らされている。


「コイツが例の生体兵器かい。中は見れねえの?」

「気安く首を突っ込むな。消されたいか」

「はいはい怖い怖い。冗談じょうだんですって」


 隣で軽口を叩くイセに、彼のクライアントであるマテガイ社の重鎮じゅうちんが不愉快そうな表情を見せる。


「そんな睨まなくても仕事はするさ。そしてアンタらの事情やらには首ツッコまないよ。ところでコイツ強いのか?」

「……」

「……わーったよ、今の質問も冗談ってコトで」


 イセはボリボリと頭をかく。そこへ彼の部下が走り寄って来た。


「団長! 外の警備隊が攻撃を受けています! 敵の数は三機!」

「三機? 随分少ねぇ……待った、例のお嬢様賞金首三人組か!? ビンゴ! パイロット共に出撃準備急がせろ! ちんたらすんなよ!」


 慌ただしく動き出したイセの傭兵団。ずっと不満気な表情でそれを見守るマテガイ社の重鎮。




 ――円柱状の設備の窓から、大きな目がそれを見下ろしていた。




(トリプル・オジョウサマ・ティーパーティー④ へ続く)


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