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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
179/226

モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑩

「があああ!!」


 激痛でタヨコが叫ぶ。


「馬鹿……! 実力の読めん相手に無策で飛び込むなど……!」


 ガガガガガ!


 チネツはくちびるゆがめながらガトリングガンでグレートエクスギャリワンをけん制する! ボンは二、三回跳ねて軽々とかわすと、上空に飛び上がった。グレートエクスギャリワンのが口を開けると、そこに青いエネルギーが球状に形作られ、バチバチとスパークする。




「ギャリワン・プラズマバスター!」




 ギュオオオオン!!




 口元に作られたエネルギーの塊は、極太のビームへと姿を変え、地上に超高速で突き刺さり、大地をえぐった! 周囲にいたカリオ達三人の傭兵とユデン一味は慌ててその場を飛び退く!


 ドォオオン……!


 轟音ごうおんが鳴り響き、砂埃すなぼこりが晴れると、巨大なクレーターが出現する。




「馬鹿みてえな火力だな、やるならあの犬が先か! タヨコ、動けるか?」

「うん、あのクソ犬ぶっ殺す……!」

「頭を冷やせ。また食らうぞ」


 地上で言葉を交わすユデン、タヨコ、チネツの三人。その様子を見下ろすフリクが突如叫んだ。


「後ろだユデン!」




 ガキィン!


 ユデンはその声と同時に左腕を後ろに回し、刀で何かを防いだ。青白く光るビームソード……カリオの斬撃だ。


「わーってるフリク。不意打ちヘッタクソだなぁサムライ兄ちゃんよぉ」


 カリオはすぐにバック転を三回繰り出してユデンと間合いを取り直す。


躊躇ちゅうちょなく防御にあの刀を使いやがった。どんだけ出来に自信がある業物わざものなんだよ)


 ユデンはブンドドマルの方へ向き直り、冷静にそれを見つめる。


「……いや、サムライ兄ちゃんはブラフか」




 ガァン!




 独特の発射音と共に高出力のビームが飛来する! ユデンは間一髪のところで体を低く落とし、かわす。ハオクの左肩の一部にビームがかすって、赤熱する。ユデンはフィードバックによる自身の左肩の痛みに、顔をゆがめた。


「スナイパー姉ちゃんの狙撃……この短い時間に距離を取るたぁ」


 ガァン!


 再び遠方からビームが飛んでくる。一発目と少しずれた方向からだ。遮蔽物しゃへいぶつをうまく利用しているのか、すぐに狙撃しているリンコの位置を特定することができない。


 ガァン! ガァン!


 連続して飛んでくるビーム。見えない敵からの狙撃によって、ユデンやタヨコ達は回避に専念せざるを得ない状況だ。


「長距離射撃による戦闘区域の制圧と……」


 ユデンは上空へ目をやる。作業ロボの撃墜に向かわせた自分の部下達が、ニッケルのウェハーやビームライフルに撃墜されていくのが見えた。


「あの作業ロボの救出が狙いか」

「ユデン! 狙撃手の位置を捉えた。 そっちのレーダーに位置を――」




 フリクが上空からリンコを発見し、味方に位置を共有しようとした時だった。


 バシュゥ! バシュゥ!


 ユトの左右から二基のウェハーがビームで攻撃してくる!


「チィ!」


 フリクは急加速してウェハーを振り切る。その眼前に――




「ギャリワン・ホーリーウィングエッジ!」


 ――ウィングユニットから緑色の光る翼を展開したグレートエクスギャリワンが迫る!


「なにくそ……!」




 ザシュゥ!


 エクスギャリワンとの衝突を避けようと体をひねったフリクだが、間に合わない!

 光の翼がユトの右側の翼を刃物のように斬り裂いた!


「ぐあああ!!」


 背中に走る激痛に、フリクが苦悶くもんする。バランスを崩して落下を始めるユト。彼の敵からすればこのチャンスを逃せるはずもなかった。




 ガァン! バシュゥ! バシュゥ! バシュゥ!


 リンコの狙撃とニッケルのウェハーの射撃が、ユトへ襲い掛かる! 手足をもがれ、胴体を何回も貫かれながら、ユトが破壊されていく。




「フリクゥウウウー!!」


 ユデンが空に向かって叫ぶ。フリクの返事は帰ってこない。ユトはボロボロに崩れ落ちながら空中を落下していく


「「フリク!」」


 タヨコとチネツも上空を落ちていく残骸ざんがいに向かって叫んだ。だが残骸は何も言葉を返さず、地面に落ちる前に爆発して消え去った。




 ガギィン!


 カリオとユデンが互いの得物をぶつけ、競り合う。その一瞬の膠着こうちゃく状態を狙って、リンコはスナイパーライフルの引き金を引く。


 ガァン!


 独特の発射音が響くと同時に、ユデンは地面を蹴り、ほんの少し宙に浮いて体を横に回転させ、狙撃ビームを回避する。


「ウソ、何なのよその超反応!」


 驚くリンコをよそに、ユデンは目の前のブンドドマルをにらみ続ける。ハオクの足先から赤いビームの刃が形成される。


(爪先にビームソード!?)


 咄嗟に後ろに飛び退くカリオ。ハオクが足を広げ回転し、赤い刃がブンドドマルの胸元を掠めていく。ボディに斬撃の跡が付き、フィードバックでカリオの胸から出血!


「カリオ!」

「大丈夫だ、傷は浅い。にしても――」


 ――実力の底が知れない。


 新型機のブンドドマルを駆って相対してもなお、撃ち落とせぬ金色の機体。ボンのパワーアップとフリク・フシャの撃墜でいくらか形勢は持ち直したはずなのに、一向に余裕が生まれない。


(仲間を墜とされてかえって集中力が増してやがるのか……!)


 カリオはビームソードをさやユニットに納刀して、低く構えた。


 ユデンが地面を強く蹴り、地鳴りが辺りに響き渡る。飛び込んでくる黄金の敵機に正対し、カリオはビームソードを振り抜いた。




(モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑪ へ続く)




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