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ブンドド!  作者: ぶらぼー
第一部
178/226

モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑨

「痛ッてえ……! ん? ……なん……だと……」


 起き上がったカリオはすぐに空飛ぶ物体に気づいた。呆気あっけにとられた様子で空をユラユラと飛行するソラマメを見上げる。そして血走った目で鼻汁が飛ぶ勢いで叫んだ。


「な……にしてやがるんだあのバカ!!」




 ◇ ◇ ◇




「何してくれてんだこの猫!!」


 レトリバーⅡの格納庫に、タックの叫びが響き渡った。彼の前でヴルームが申し訳なさそうにひげをかいている。


「す、スマン。あまりにも自信満々だったからてっきり出撃させても問題ないかと」

「だからって人の艦から十歳にも満たねえだろうガキを勝手に出撃させる奴があるか! この猫! うぁあ……カリオ達に〇される……!」


 その様子を女性メカニックのミントン・バットは、デスクに頬杖ほおづえをついて眺めていた。


(他人の艦のハッチ開けられるとか器用な猫ね……解剖かいぼう……はダメか……)




 ◇ ◇ ◇




「マヨちゃん……僕ちょっと頭がボーっとしてきた……」


 ソラマメのコックピットで、なんらかのケーブルをいっぱい繋げられた状態のブンタが、力の無い声を出す。格納庫で試した時は数秒しか飛べなかったフライング・ソラマメであったが、ブンタをバッテリー代わりにすることで電力不足の弱点を克服こくふくしたのだ! なんか他のバッテリーはなかったのかよ!


「もうちょい頑張ってくださいブンタ! バカノポメラニアンのロボまであと少し……」




 何やらカリオ達の様子がおかしい事に気づいたユデンは、彼らが見上げる空に視線を移す。


「なんでぇ……何が来るんでい」


 いぶかしむユデンのコックピットに上空のフリクから通信が入る。


「変なのが飛んでやがる。多分、量産型の作業ロボだ」

「作業ロボぉ? あ、見えた。何だアレ、なんだってこんな戦場に」

「撃ち落とすか? 部下達も迷ってるぜ?」

「待て、下にぶら下げてやがるのは何だ? お宝か?」


 無防備に戦場を飛行する作業ロボがあまりにも状況に不釣り合い過ぎて、ユデン一味はかえって対処に悩む。




「そこでパックを放せ、マヨ・ポテト!」

「およ!? わ、わかったです!」


 ソラマメのコックピットのスピーカーからヴルームの叫び声が響く。通信を聞いたマヨは抱えていた黄金のグレートパックを腕から放した。




「ギャリワン・アルティメット・フュージョン!」


 その時、ボンが天にそう叫んで、吠えた。


 エクスギャリワンが空へ飛び上がる。ソラマメから離れたグレートパックがそこへ吸い寄せられるように近づいていく。




「……! いかん!」


 ガガガガガガ!


 察したチネツは空のエクスギャリワン目掛けてガトリングガンを放つ!


 ビィン……! バシッ!


 だがニッケルのウェハーが射線上に割って入り、バリアーで弾丸を防いだ!




「チィ! なんかよくわかんないけど!」


 リンコに猛攻を仕掛けていたタヨコも状況に気づいた。ゼルディの尻尾の先を空のエクスギャリワンに向ける!


 バシュッ! バシュッ!


「!」


 だがリンコのビームピストルから放たれた射撃が、タヨコに回避行動を強いる!




「邪魔な……!」

「このアマ……!」


 苛立いらだちをあらわにするチネツとタヨコ。ニッケルとリンコは同時に同じセリフを吐いた。


「合体中は!!」

「攻撃禁止!!」




 ガコン!


 グレートパックはいくつかのパーツに分かれる。


 ガシャン! ガシャン! ガシャン!


 それぞれがエクスギャリワンの手足、背中、頭部にパズルのピースのようにハマっていく。カリオは戦闘中にも関わらずその合体シークエンスを呆然ぼうぜんと見守っていた。


(この前と違ってちゃんとアニメみたいにヌルヌル合体してる……!)


 エクスギャリワンのカメラアイがエメラルドのように光を発する。ボンは高らかに叫んだ。


「グレェエエト! エクスギャリワン!」




 説明しよう! グレートエクスギャリワンは現時点におけるエクスギャリワンの最強形態である! 黄金の鎧のようなグレートパックには大量の勇者粒子が貯蔵されており、異次元級の必殺技を複数繰り出すことが可能である!




 ズゥン!


 カリオ達三人の傭兵ようへいとユデン一味の間にグレートエクスギャリワンは着地する。背中にはフライトパックとは異なる形状のウィング機構、前後の足には籠手のように、頭部には兜のように黄金のパーツが装着されている。その黄金色の各パーツの周囲には、キラキラと緑色のオーラが舞っている。


命乞いのちごいは受注停止だ外道げどうども」


 ボンは体勢を低くして構える。


「チィ、合体するたぁな。撃ち落としときゃよかったぜ」

「運んでた作業ロボはどうすんだ?」

「作業ロボは部下連中に任せよう。俺達四人は目の前の敵に集中するぞ」

「あーしだいぶイライラしてきた……」


 ユデン達四人はグレートエクスギャリワンに注意を向ける。




「面倒だからサッサとちょん切ってあげる!」

「待て、タヨコ!」


 チネツの制止を振り切り、タヨコが大鎌を振りかぶってグレートエクスギャリワンに突撃する。タヨコが大鎌を斜めに振り下ろすと、その刃はグレートエクスギャリワンを斬り裂いた――かに見えた。


「!?」


 タヨコは手応えがないことに気づく。次の瞬間、目の前にいたはずのグレートエクスギャリワンは光の粒となって霧散むさんした。


「なっ、残像!?」

「ギャリワン・ミラージュ!」


 ゼルディの後ろに光る影が現れる。本物のグレートエクスギャリワンだ!


「ギャリワン・グレートスラッシュ!」


 ボンは右前足を振るう。グレートエクスギャリワンの鋭い爪がゼルディの尻尾を斬り落とした!




(モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑩ へ続く)

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