モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑤
ズダン!
轟音と共に着地したブンドドマルを前にして、ボロドウ・ファミリーの大型シールド部隊は一瞬たじろいだ。
その次の瞬間、ブンドドマルは彼らの目の前から姿を消した。
「!! どこへ!?」
戸惑うボロドウ・ファミリーのパイロット。彼らの機体の後ろに黒い影が現れたかと思うと、四本の青い閃光が宙を走った。
逆袈裟! 横一文字! 袈裟斬り! 逆袈裟!
ぴたり、と辺り一帯が沈黙した。その一瞬の後――
ガシャガララガシャン!
四機のボロドウ・ファミリーの大型シールド持ちの機体が、その身体を真っ二つにされて地面に転がり、倒れた。
その破壊された機体の向こうから、青いビームソード「霊月」を握ったブンドドマルが姿を現す。四機はカリオの神速の剣技によって斬られたのだ。
「なん……何だアイツ、あのビームソード一本で……」
「ば、馬鹿! ボーっとするな撃て!」
周囲のボロドウ・ファミリーがカリオに銃口を向けた時だった。
バシュゥ! ガァン! バシュゥ!
彼らの頭上から何発ものビームが降り注ぎ、頭部や肩口を貫いていく! ニッケルとリンコの攻撃だ。
「クソ、被害が大きすぎる! 一旦退け!」
慌てて逃げていくボロドウ・ファミリーの機体達を見ながら、ニッケルのハネスケとリンコのチャカヒメも、平たい山頂に着地した。
「カリオ、無傷か?」
「うむ。今回大したことないな」
「ラッキー! さっさと果物燃やして帰……あ、でもどれを壊せばいいの?」
リンコがそう言ってボロドウ・ファミリーが逃げていった方を見やる。山頂は既にボロドウ・ファミリーが建てた建築物で半分ほど埋め尽くされている。果物の群生地と聞いていたが、見た目はどちらかというと大きな工場群のようだ。
「全部……でいいのかな」
「一応確認を先方に取るか。人だのモノだの万が一やっちゃいけないモノが混じってるかもしれん。来る前に聞いときゃよかった」
ニッケルがそういってレトリバーへ通信を取ろうとする。一方、カリオは少し離れた断崖絶壁の方を見やっていた。
(何か来る……一つや二つじゃない。かなりの数だ)
「ギャリワン着地」
レトリバーの三人の傭兵の後ろに、ボンの乗ったエクスギャリワンが静かに着地した。
「何が対空砲火だ! お前らだけで全部終わらせちまいやがって!」
「勇者的には平和に終わっていいでしょ」
「むう! だがこれほどだとおまえら雇わなくてもよかっ……待て、なんか匂いがする」
ボンはすんすんと鼻を鳴らしながら視線を移す。カリオが見ているのと同じ方向だ。
ニッケルとリンコもそちらへ目を向ける。その断崖絶壁より向こうは別の山々が連なって見えるだけで特に異常はないように思えた。
だが――
キュイイイイン……
――山々が抱える自然に似つかわしくない、モーターが回転するような甲高い駆動音が聞こえてくる。それは注意して耳を澄ませないと聞こえないほど小さかった。
だが――
キュイイイイン……
――その音は徐々に大きくなっていく。三人と一匹は何かの接近に身構える。
キュイイイイン!!
そしてその大群は姿を現した。
崖から飛び出してきたビッグスーツ、その数二十を超える。それらはマンタのような形をした飛行物体の背中に乗って立ち、空中を自在に飛び回る。
「なんだありゃ!?」
「乗り物!?」
ニッケルとリンコが驚きの声をあげ、カリオは目を丸くし、ボンは低く唸る。
上空を飛ぶマンタのような機械とビッグスーツの群れの中央、同じようにマンタのような機械の背に乗る金色の機体がいた――かつてエナルゲ・ファミリーというマフィアで開発・製造されたワンオフ機、ハオク。
「金色の……アイツらか! なんか数が増えてねえか!?」
カリオは上空の群れを鋭く睨む。
「到着だなあ! あん? なんだ、既に喧嘩始まってんのか?」
ハオクのパイロット――ユデン・イオールは辺りを一通り見渡すと、ビッグスーツの無数の残骸の中央に立つカリオ達の機体に視線を移した。
「黒い機体が三機……アイツらか? だが以前の量産機と違う。それに犬みてえなのもいる」
「どちらにしろ仲良くしに来たわけでもない。数に任せて排除してしまおう」
ユデンのハオクの隣を飛ぶ緑色の機体――レギュラのコックピットでチネツ・マグがそう言った。
「行くよフリク」
「おうよタヨコ」
ハオクとレギュラの後方から、マンタ状の飛行機に乗ったピンクの機体――ゼルディと大きな翼を持った青い機体――ユトが飛び出す。ゼルディのパイロット、タヨコ・ソーラは、舌なめずりしながらゼルディの尻尾状の武器の先を地上へ向ける。
「「「マズい!」」」
レトリバーの三人の傭兵が口走った次の瞬間、ゼルディの尻尾の先端から緑色のビームが放たれた。
(モータル・コンバット・オブ・オーチャード⑥ へ続く)




